「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

カーボンコンポジットの扉を開けたのは『EPICスター』

GD 過去の使用ドライバーを振り返り、実測データからスウィングとクラブの相性を探る「ドライバー変遷シリーズ」。今回はクラブの専門家である長谷部さんご本人のドライバー変遷から傾向と対策を考えていきたいと思います。クラブ専門家がどんな理由でクラブを選んできたのか興味深いものがあります。

長谷部さんに挙げてもらった過去のエースドライバーは、この6本です。
●ツアーステージ Xドライブ405(2004年)/9.5度/ツアーAD PT-6S
●レガシー ブラック(2011年)/9.5度/ツアーAD DI-5S
●グローレF(2014年)/9.0度/純正S
●EPICスター サブゼロ(2017年)/9.0度/スピーダーV569S
●SIM2(2021年)/10.0度LOWER/ツアーAD DI-5S
●ローグST マックス LS(2022年)/9.0度/スピーダーNX ブルー5S

今回データ提供をしていただいたジャイロスポーツの松尾好員さんから以下の分析コメントをいただきました。
「リアルロフト9.5度くらいが合うのかも」
「深過ぎる重心深度は合わないのかも」
「比較的低スピン系のヘッドがお好きなのか」
「元々ヒール寄り重心(ドローバイアス)が合うのか。しかし、SIM2で急にトウ寄り重心(フェードバイアス)に変更」

長谷部 メーカーにいた時代からのクラブ変遷なので、仕事と関係の深いモデルを使うケースもありますが、たくさんのクラブを打ち比べする機会を与えられた立場だったので、正直、数字的なことはあまり気にせず、打って結果の良かったものを中心に選んでいました。自分の経歴が特殊なのでメーカーも多様になっていますね。『レガシーブラック』、『グローレF』に関しては、外資においては日本モデルを好んで使っていました。

その後、カーボンコンポジットに移行していくんですけど、カーポンコンポジットになかなか手を出さなかったのは、チタンの心地よい打音、打感とかっていうのが好きだったので、結構そこにこだわっていました。ただ、ドローを打ちたいんですけど、ドローを打てるスウィングじゃないということをわかりつつ、スピンを減らすためにどうしたらいいかを考えたクラブ選びの変遷なのかなって思います。

GD どちらかというと長谷部さんのスウィングは上から打ち込んでいくタイプ。球筋的に言えばフェードだと思うんですけど、ドローに強い憧れを持ったのはなぜですか?

長谷部 これは学生時代に遡るんですけど、ジャンボさんのスウィング改造のストーリーをよく読んでいましたし、中嶋常幸プロの復活とスウィング変更にはドローって言っていたことも影響していると思います。メーカーに入ってからも伊澤利光プロがPGAツアーで勝つ飛距離を出すにはドローだということで、フェードからドローに変えたことがあります。なので、比較的重心距離が短いクラブでドローボールを打ちたいという願望がありましたね。

GD 6モデルのネック軸回り慣性モーメントを比べると、概ね平均値で、極端に回旋しやすいヘッドを選んでいるわけではないように見えます。

※カッコ内の数値はその年の平均値
●ツアーステージXドライブ405/6444g・㎠(6165g・㎠)
●レガシーブラック/6547g・㎠(6666g・㎠)
●グローレF/6471g・㎠(6701g・㎠)
●EPICスターサブゼロ/7633g・㎠(7073g・㎠)
●SIM2/7510g・㎠(7615g・㎠)
●ローグSTマックスLS/8062g・㎠(7818g・㎠)

長谷部 そうですね。これは打ち方の問題もあるんだと思うんですけど、チーピンが怖い。ドローを打ちたいからちょっとフェースの先で打ちたいんですが、コースに出た時にチーピンが出過ぎてしまうことがあり、安定性を求めていたという気がします。なので、極端に重心距離が短いものを選びきれなかったということはありますね。

※重心距離
●ツアーステージ Xドライブ405/35.2ミリ
●レガシー ブラック/36.3ミリ
●グローレF/40.7ミリ
●EPICスター サブゼロ/38.4ミリ
●SIM2/41.1ミリ
●ローグST マックス LS/39.8ミリ

※重心深度
●ツアーステージ Xドライブ405/36.7ミリ
●レガシー ブラック/35.8ミリ
●グローレF/36.0ミリ
●EPICスター サブゼロ/41.1ミリ
●SIM2/36.9ミリ
●ローグST マックス LS/38.3ミリ

GD 自分では重心距離の短いものを使いたいけど、引っ掛けないクラブを結果的に選んでいたってことですね。

長谷部 自分の理想とのギャップは当然あって、頭ではわかっていることが体で具現化できていないというのが悩みのひとつだったと思います。

GD これって一般ユーザーにも言えることで、使いたいクラブと使えるクラブは違うってことですよね。

長谷部 たくさん練習をして、自分が理想とするクラブを打ちこなすこともできなくはないと思うんですよ。ただ、それにはふんだんな練習が必要です。私はサラリーマンゴルファーだったのでそこまでの練習時間もラウンド回数のない中で、体力とか体の硬さがどんどん変化していったので、そうせざるを得なかったと思います。

お客様と試打ラウンドするときに、「長谷部はいつもいい球打つね」って言われたんですけど、それはクラブの特性に合わせて打っていたからで、プライベートで自分のゴルフをしようと思った時には自分の癖が出ますので、そういった時にはこういったものを選んでいたということですね。

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