「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

「何がマックスなの?」マックス乱立でゴルファー混乱?

GD 秋モデルも出そろったところで2024年のクラブ総括をしたいのですが、ドライバーに関してはどうだったでしょうか? 例年のように「キャロウェイ」、「テーラーメイド」から始まり、『ピン G430 MAX テンケイ(10K)』が登場し、夏に『タイトリスト GTシリーズ』が発売となり話題になりました。

長谷部 たまたま『テーラーメイド Qi10』と『ピン G430 MAX テンケイ』の発表日が重なり、“10K”というキーワードが注目されました。「キャロウェイ」は静観しつつ、「Aiシリーズ」の改良版のような形で「Aiスモーク」を出してきたというのが2024年の始まりです。

どちらかといえば、「ピン」と「テーラーメイド」の“10K”の話題が先行し、ヘッドの大きさと慣性モーメントの大きさが、一瞬ですがアマチュアに対して大きなメリットがあるような流行がありました。ただ、実際試打クラブを打ったアマチュアの反応が、けしてそれがすべてではないということになり、その後「Aiスモーク」が盛り返し、その3つの中では初速が出るとか、飛ぶということが話題となり盛り上がっていきました。

話題先行はもちろん重要なことで、意識をさせることにはなるんですけど、試打結果できちんと精査されていったのかなという気はします。

GD 毎年のようにこれだけ新しいドライバーが登場すれば、アマチュアの目も肥えてきますよね。

長谷部 そうですよね。消費者が賢くなってきているということもありますし、先に買って先に売っちゃうみたいな、そういう動きも少し抑えられているように思います。買ってダメだったら売っちゃえばいいやみたいな乱暴な買い方が少し減ったような気がしますね。

GD マックスブームが数年前から始まって、ほぼほぼ日本のメーカーも「マックス」という名称を使ってきました。でも、「マックス」という名称にはいろんな意味が含まれていて勘違いされている消費者も多いような気がします。

長谷部 食品などの商品の表示とゴルフクラブは違うので一概に規制できないところだと思うんですけど、「マックス=10Kじゃないの?」みたいな、誤認をさせるようなぐらい「10K」が話題になってしまったので、その後にラインナップしてきた「他社のマックスもそれと同等なんじゃないか?」という誤解を生んでしまった気がします。

後から出てきた日本メーカーの新しいドライバーも「MAX」という名前がついているけど、慣性モーメントが1万g・㎠を超えるものではないものも「マックス」という名前がついていました。それは各メーカーの名前の付け方なんで、それぞれ理由はあると思うんですけど、一般消費者からすると「マックス」にもいろんなものがあるなっていう風になってしまったんじゃないかなと思います。

GD 「何がマックスなのか?」についての説明がちょっと足りないような気がします。そもそも今回のマックスブームで最初に「マックス」を謳ったのは、『ピン G400 マックス』で、慣性モーメントの大きさを連想させるものでした。でも、その後でてきた“キャロウェイのマックス”は速さを連想させるものでした。

長谷部 そうですね。「マックスファスト」とか。

GD マックスの使い方の違いが、当初からあってそれが結局整理されないまま、各社がマックスという言葉を使いはじめた。ゴルファーからしてみたら混乱の1年だったように思います。

長谷部 ついには、「スリクソン」までマックスを出してきたので、そういった意味では、マックスの位置付けが1つのシーズンの中で、ヘッドが大きければマックスみたいな感じになんとなく定着しちゃったのかなって気もします。

「テーラーメイド」と「ピン」が慣性モーメントの数字を明確にして、そこを1つの基準みたいな感じで売り出したことが、今回のマックスブームの誤解を生じさせていると思います。それぞれのメーカーの特性と性能をきちんと見極めないといけない感じですね。

GD どのメーカーもマックスの名前を付けたものが、そのシリーズの中で、一番やさしいモデルという位置づけになっているもの、混乱の原因になっていると思います。

長谷部 「キャロウェイ」の場合は、「マックス LS」だったり、「マックス D」といったようにもう1つ記号を加えているので、そこを見極めなきゃいけないというのはあります。

GD 他メーカーは、3兄弟、4兄弟あったとしても、マックスが1番やさしいから、それを買っとけば安心みたいな印象付けが、あったような気がします。

長谷部 もちろん、それはあると思います。ただ、そのやさしいという言葉の概念が、ヘッドが大きい、慣性モーメントが大きい、この2つの理由だけしかないので、重心距離とか、重心深度を考えた時に合わない人も当然でてきます。 だから、「マックス=やさしい」は万人に当てはまらないということです。

GD 一時、やさしいドライバーだと、ドローバイアスであったり、 ライトウェイトというものがありましたが、意外と市場の反応は薄かった? だからマックスという名称に走ったように感じます。

長谷部 ドローバイアスが一時、スライス対策としてもてはやされた時期がありましたけど、パフォーマンスとしてここも万人受けしないものなんだと思います。

「やさしい」ということが先行してしまうと、受け入れられないケースも出てきます。マックスならば「寛容性」という言葉で、かたよった表現ではなかったことが受け入れられた要因だと思います。

ドローバイアスとか、ドローという表示を「テーラーメイド」は今回やめています。そういった意味では、「マックス」がドローバイアスとかやさしいモデルの代名詞になった年のような気がしますよね。

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