「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

日本と米国のアイアンの差は、ボキャブラリーの差?

GD アイアンに話を変えますが、今年は中空のストロングロフトの小ぶりなヘッドが当初話題になりましたが、その後はどうだったんでしょう?

長谷部 結果的には「ピン」の中空もストロングロフトになったり、「テーラーメイド」も『P790』を出してきましたが、高い評価を得られたかどうか、微妙でしたね。

逆にシンプルな鍛造キャビティが売れている現象が非常に面白かったですね。秋にモデルチェンジした「スリクソン」、その前に発売された「ブリヂストン」も売れています。

GD アイアンにはより戻しが起こっている?

長谷部 そうですね。ウッドよりもアイアンのほうが買い替えサイクルが長いにも関わらず、中空の小ぶりなヘッドがあまり流行らなかったところがあり、ちょっとコンサバというか、微妙なロフトのストロング化はあっても大きく変わってないところを見ると、シンプルな鍛造アイアンが好まれているんだなという気がしますよね。

GD プロモデルは、7番のロフトが34度、ピッチングが46度で、飛び系は、7番が28度、ピッチングが42度ぐらいになっています。そこからのより戻しであり、下からの押し上げが起こって、7番アイアンが30度で、ピッチングが44から46度あたりに戻ってきているような気がします。

長谷部 飛び系のアイアンはやさしいモデルとして「ゼクシオ」を中心に「Qi10」だったり、割と大きめのヘッドが売れていると思います。でも競技志向だったり、上手になりたい人たちは鍛造アイアン一択で、中空にも行かず、ロフトも1度ぐらい立っている程度のものに収まっているようですね。

GD そこはやっぱり、立ち過ぎたストロングロフトでは、スコアにならないということなんでしょうか?

長谷部 体に染み付いた距離感を大きく変えたくなかった。でもちょっとだけ弾道を高くしたいとか、フィーリングを良くしたいっていう人たちが買い替えをしているんじゃないかなと思うんですよね。あとはカッコいいアイアンかどうか。そこも重要な要素だと思います。

GD 市場の流れを見ると、ドライバーは外ブラ、アイアンは日本、ウェッジは?

長谷部 ウェッジとパターも外ブラ。アイアンは日本のメーカーが健闘しているんじゃないですかね。「スリクソン」も今後売れそうだし。

GD 「スリクソン」は前モデルの『Mk Ⅱ』の評価が高く、今回のモデルも評判は良好です。クラブからオーラを感じます。

長谷部 日本のゴルファーはドライバーの時もカーボンコンポジットをなかなか受け入れられなかったことがあります。日本のメーカーの軟鉄鍛造アイアンは、細かい作り込みをちゃんとしているので、今でも評価されているような気がしますよね。

「ブリヂストン」も「スリクソン」もしっかりそこをやりながら、伝統を守っているんじゃないでしょうか。

GD 日本のメーカーもアメリカのメーカーも製造するベンダーは同じだったりしませんか?

長谷部 近しいところでやっているはずなので、日本のベンダーを使ったり、台湾、中国で鍛造をやっているベンダーを使っていても、最終的なところでのこだわりという点で違ってくるのでしょう。

ちょっとした熱処理だとか、材料を変えたりとか、構造を変えることの意味でも変わってきます。中空にするだけじゃなくて、「ブリヂストン」のようにヘッド内に柱を作ったりすることで、打感打音が変わります。その辺の細かな配慮の違いなんじゃないですかね。

GD そこは感じますよね。

長谷部 日米の違いは、ボキャブラリーの違いを感じます。英語では「ハード」、「ソフト」、「クリック」という割とシンプルで限られた単語でクラブの評価をするアメリカ人と、「もちっとした食いつく打感」「フェースに乗る感じ」みたいな独特な表現を日本のゴルファーはします。ボキャブラリーの差が圧倒的に違うので、そこを踏まえた日本人のもの作りが差に出てきているような気がしますけどね。

GD そこがドライバーにいかないのは、飛距離主義だから?

長谷部 ドライバーは心地よい打感とか打音と言われても、もう見向きもされなくなっています。飛距離が重要視されているので、最新のテクノロジーでどう飛ばすかのロジックのほうに皆さん関心があるんじゃないですかね。

日本のメーカーの持ち味はアイアンに生かされていて、アメリカのメーカーの良さはドライバーに生かされている。ただ「タイトリスト」だけは、飛ばしとフィーリングを今回の『GT』で実現しているので、頭ひとつ抜けているような気がします。

GD 『ボーケイウェッジ』が日本を含めて世界中で受け入れられるっていうのは、そういうきめ細やかな点が製品に出ている?

長谷部 そうですね、バリエーションの多さも含め、バウンスの当たり方など細かい説明もあるので、そういった豊富なラインナップが日本のゴルファーにも刺さっているんじゃないですかね。

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