トランプが45代大統領だった当時、日本の首相を務めていた安倍晋三氏とのゴルフ外交は、よく知られていた。19年の茂原CCでのラウンドで通算5回。「1日過ごせば、お互いを理解できる」というゴルフ最大の利点を活用したのだろう。
ドワイト・アイゼンハワーなど、歴代の米大統領はゴルフ好きが多い。最近ではオバマが有名で、大統領執務室にパット練習器が置いてあったほど。トランプはそれに劣らぬほど熱心だ。加えてゴルフ場も所有し、不動産業にもまい進している。
14年には全英オープンのローテーションコースだったターンベリーを買収。差別発言により、現在は全英オープンのローテーションから外れているが、今回の大統領返り咲きで復帰も囁ささやかれている。

47代アメリカ合衆国大統領になるドナルド・トランプ氏(写真は2016年WGCキャデラック選手権 最終日 /撮影・Tadashi Anezaki)
さて石破首相はどうか。鉄道、アイドル、軍事プラモデルといった趣味はよく聞かれるところだが、ゴルフはどこにも出てこない。ところがこの欄でも紹介したが、首相は慶應義塾高等学校時代、ゴルフ部に在籍していたことが判明。
同校ゴルフ部で同期だった田中廣氏(79年卒)は、「たしかに石破はいました。部員は10名で、毎日のように部活へ出ていました。春夏合宿での写真を見ると、石破も毎回参加していますね」と話す。
その痕跡は首相の故郷にある鳥取CC吉岡コースに残っていた。同CCの民事再生前(06年)までは石破氏はメンバーであったという事実だ。同CCではハーフ40台のスコアで回っていたとの話も。
しかし86年に29歳で初当選した直後、早朝ゴルフをしていた同氏は地元有権者から冷ややかな声をかけられ、それ以後、ゴルフから遠ざかったという。
首相周辺からは「またクラブを握ったらどうか」、外務省関係者からは「ゴルフが必要かもしれない。長時間、“サシ”(1対1)で雑談できる場はそう多くない」という声が聞こえてきた。
ただ、首相在任中の安倍氏とトランプのゴルフ外交にはやや距離を置いていたと見られる石破首相。自民党総裁選に出馬した記者会見で、「安倍氏のようにトランプ氏とゴルフをしたいか」と問われると、明言は避けたものの、「おべんちゃらやお世辞をいうのではなく、国益をもって不退転の決意で臨んでいると相手に思ってもらうことが大切だ」と答えたという。
二番煎じは嫌なのかもしれない。さて、このゴルフ外交の顛末はどうなるのだろうか。
※週刊ゴルフダイジェスト12月3日号「バックナイン」より