カシオワールドで優勝した岩田寛は、勝利が決まるとプレーオフに備えていたパッティンググリーンを一目散に駆け回った。歓喜の表現と思ったギャラリーも多かったはずだが、実は仲間たちのウォーターシャワーから逃げ回っていたらしい。
「風邪をひいたら嫌だから」が理由だ。優勝者に同僚や仲間たちがペットボトルの水などをかけて祝福するのは、男子ツアーではお決まりになっている。
"水"の儀式はいつ頃始まったのか、明確に答えられる人はいなかった。ただプロ野球でもヒーローには水をかけて祝福するし、優勝後のビールかけパーティも延長線上の儀式だろう。
そういえF1でのシャンパン開けも勝利を祝う定番儀式になっている。
米ツアーでの水にまつわるエピソードでは1982年、ザ・プレーヤーズ選手権で優勝したジェリー・ペイトが有名。難関コースで選手たちからブーイングの嵐の試合。勝利したペイトが当時のPGAコミッショナー、ディーン・ビーマンと、設計者のピート・ダイを道づれにして、池に飛びこみ自ら祝福したのである。
他の選手たちから喝采の嵐を受けた。閑話休題。わが日本女子プロツアーに目を転じよう。実は2022年、同ツアーでの優勝者祝福のウォーターシャワーが“禁止”事項になっている。
トーナメント規約・規定の改正で「選手・キャディーは優勝者を祝福する際に飲料水等を含む液体を浴びせてはならない」と記された。その理由として「SDGsの観点及び、その後の写真撮影への配慮等から」としている。
「禁止というより選手の心得としてです」(JLPGA広報)
確かにびしょ濡れでは表彰式での写真撮影にも支障はあろう。下着のラインが浮き出る恐れもあるだろうし、契約先のアパレル会社も気持ちいいものでもなかろう。風邪をひいてはいけないというのもわかるが、水かけ祝福がなくなれば少し寂しい気もする……。