今年のドライバーは、「MAX」や「10K」といった慣性モーメント(MOI)の非常に大きなモデルが話題の中心だった。これらは圧倒的な寛容性を狙っているわけだが、そんな2024年のドライバーウォーズのトリを務める形で登場したHONMA「TW767」は、10K超えの大慣性モーメントに加え、飛距離性能、そして感性も満たすモデルだと、メーカーは他との明らかな性能差を強調する。その実態をレポートしよう。

TW767のカーボンテクノロジーは他とひと味違う

画像: フェース側と後方のウェイトをつなぐボディの大部分がカーボンの「TW767」ドライバー。圧倒的な余剰重量を生み出す

フェース側と後方のウェイトをつなぐボディの大部分がカーボンの「TW767」ドライバー。圧倒的な余剰重量を生み出す

2024年終盤、誌面やWEB上で目にする機会の多い、深いブルーのカラーリングが印象的なドライバー「TW767」。「10K+++」、「HONMAの0打目。」など意表を突くキャッチコピーも手伝い、従来とは一線を画すリニューアル感が強い。シーズン中にはプロトタイプがお目見えし、契約の女子プロたちがこぞって乗り換えたドライバーでもある。その真の性能を探るべく、HONMAの酒田工場で日夜研究に勤しむ開発チームを訪ねた。

TW767ドライバーは、寛容性にあふれるスタンダードタイプを中央に、ロースピンタイプのLS、つかまり性能に優れるMAXという3機種をラインナップ。ちなみにスタンダードとMAXがMOI10,000g・㎠超えを達成している。

構造としてはヘッド前方はチタン、そして後方にチタンとタングステンを合わせたウェイト、その中間部にカーボン製のボディ、大きくはこれら3つのパーツで構成されている。

「ポイントは、中間のカーボンロールテクノロジーというボディ部分です」と語るのは、酒田工場の開発チームの責任者・佐藤巧氏。

画像: HOMNAで開発のトップを務めるディレクターの佐藤巧氏

HOMNAで開発のトップを務めるディレクターの佐藤巧氏

「カーボンを用いることの大きな目的は軽量化です。そこで生まれた余剰重量をウェイトとして、欲しい性能を引き出す部分に配置する。これは各メーカーが取り組んでいるところです。HONMAは、カーボンを360度のロール状にしてフェース側とバックウェイトをつないでいます。圧倒的な軽量化が図れ、より多くの余剰重量を生み出せています」

ただ、360度のカーボンボディなら他社もやっていること。HONMAの優位性はそこから先だ。

「ヘッド後方に大きなウェイトを配置することは、取りも直さずMOIを引き上げる効果がありますが、もうひとつ重要な役割があります。それはインパクトの瞬間、後方の重量物が大きなエネルギーとなってボールを押すことです。そのエネルギーをいかにロスなく伝達させるか、ここがポイントになります。

仮にチタンボディだとこのエネルギーを受け止めてしまうので、伝達力そのものが弱い。そこで360度のカーボンボディ、となるのですが、ここの製法や精度がカギを握ります。

我々が開発の絶対条件としたのは、“シームレス”であること。つまり継ぎ目がないということです。クラウン側とソール側が別のパーツで、それを貼り合わせると当然継ぎ目ができます。エネルギーは硬いところを走るので、エネルギーが均一に伝わらない。だからシームレスにこだわりました」

画像: シームレスのカーボンロールテクノロジー。中間部の圧倒的軽量化に寄与(右)。余剰重量を後方のウェイトに転換。MOIが飛躍的に向上(中)。フェースは反発性能の高いβ系チタンを採用。またスリットの効果で広範囲で高初速を実現する(左)

シームレスのカーボンロールテクノロジー。中間部の圧倒的軽量化に寄与(右)。余剰重量を後方のウェイトに転換。MOIが飛躍的に向上(中)。フェースは反発性能の高いβ系チタンを採用。またスリットの効果で広範囲で高初速を実現する(左)

「そしてもうひとつ、360度のシームレスカーボンであっても、内圧成型といって、金型の内側にカーボンを貼り付け、中からバルーンを膨らませて成型する技術だと、ひとつひとつ、カーボンの厚みにムラが出やすい。ムラがあれば、これもエネルギーの伝達が不均一になるし、場合によっては破断する可能性もある。今回、シームレスのカーボンボディを、設計通りに均一に作れる成型方法が確立できたことで、製品化に踏み切れました。後方のウェイトのエネルギーを均一に余すことなくボールに伝える。これは他のどこも達していない領域です」

そして、HONMAのもう一つの特徴は、自社でシャフトを製造している点だ。

画像: シャフトも職人の手によって丁寧に作られ、検査も徹底。製品誤差は極めて少ない

シャフトも職人の手によって丁寧に作られ、検査も徹底。製品誤差は極めて少ない

「ヘッドとの相性を考えてシャフトを作れるメリットはもちろんですが、HONMAのシャフトの優れている点は、製品公差が±1グラム以下。それだけの精度があるので、その分ギリギリまでヘッドの設計に生かせるのです。これは開発にとって非常に大きな優位性です。今回はオールカスタムシャフト、というコンセプトで、4タイプのシャフトからどれを選んでもアップチャージなしで選択できます。ゴルフって、自分に合うクラブがあるんだ、ということをぜひ知ってほしい。フィッティングを活用してもらい、自分だけのクラブを作り上げる、そのきっかけにしてほしいと思っています」

TW767は、スタンダードやMAXといったMOI10,000g・㎠オーバーのモデルがウリだが、寛容性に加えて、細かな設計の妙によって飛距離性能もしっかりと担保されている稀有なドライバーと言っていいだろう。

10Kモデルであっても顔の良さ、構えやすさを諦めない

HONMAは、パーシモンドライバーの時代から数多くの名器を生み出してきた。その時代には契約メーカーがあるにもかかわらず、隠れてHONMAのドライバーを使う選手が後を絶たなかったという。プロが集まれば、情報が蓄積され、それが製品にフィードバックされる。ここは今も変わっていない。

HONMAの長い歴史を知る製品開発部顧問の諏訪博士氏は、「パーシモン時代から、性能はもちろん、ヘッドのシェイプ、デザインに至るまで、日本人が日本人に合うように作っています。それは理念として不変です」と語る。

画像: 製品開発部顧問の諏訪博士氏。パーシモン時代からクラブ製作に携わる

製品開発部顧問の諏訪博士氏。パーシモン時代からクラブ製作に携わる

「HONMAのクラブは顔がいい、と言われますが、どこがいいかはプロをはじめとしたクラブの目利きしか表現できないでしょう。普通のアマチュアの方にとっては、アドレスでポンとクラブを置いたときに、“あ、なんか構えやすくて、打ちやすそう”と感じてもらえる。我々はそこを常に目指しています。そう感じてもらえたら、それがクラブの作り手のメッセージと使い手がひとつになる瞬間なんだと思います」

画像: TW767、スタンダードモデル。3モデルの中では最もMOIが大きい

TW767、スタンダードモデル。3モデルの中では最もMOIが大きい

画像: TW767 MAX。“ネバースライス”をうたうドローバイアスモデル

TW767 MAX。“ネバースライス”をうたうドローバイアスモデル

画像: TW767 LS。ソール前方にもウェイトが付いたロースピンモデル。LSのみブラックを基調としている

TW767 LS。ソール前方にもウェイトが付いたロースピンモデル。LSのみブラックを基調としている

画像: 構えた時にヘッドのクラウンが自分の顔と正対するヘッド形状が大事、と諏訪氏。その関係をキープしてテークバックすれば、自ずとクラブの重心を外さない(管理した)スウィングが可能になるという

構えた時にヘッドのクラウンが自分の顔と正対するヘッド形状が大事、と諏訪氏。その関係をキープしてテークバックすれば、自ずとクラブの重心を外さない(管理した)スウィングが可能になるという

今回のTW767には、パーシモン時代に培ったテクニックが盛り込まれているという。

「TW767の3モデルとも、後方にウェイトが付いています。その境目をクラウンにあえて残しました。パーシモン時代のサイドウェイト、あのイメージを盛り込んだんです」

画像: パーシモンヘッドにも寛容性やつかまりの良さを求めるゴルファーには、サイドウェイトのついたモデルが用意されていた

パーシモンヘッドにも寛容性やつかまりの良さを求めるゴルファーには、サイドウェイトのついたモデルが用意されていた

ベテランゴルファーならご存じかもしれないが、かつてパーシモンドライバーには、ヘッド後方にメタルが付いているモデルが多くあった。つかまりが良くなったり、寛容性が増す効果があった。

「これについては、かなり議論しました。見せないほうがすっきりしていていい、という意見も少なくなかった。ただ、開発としてはこの境目は残したいんだと。残すことによる視覚的効果も狙っていたので」

どんな視覚的効果があるのか。

「ウェイトの境目のラインが真っすぐじゃないですよね。ちょっと斜めにすることで、始動でスムーズに動かしやすいんです。この線の角度、ドローバイアスのMAXが斜めの角度が強く、よりインサイドに引きやすい。スタンダードもLSも真っすぐじゃなくちょっと斜め。ぜひ構えてみてほしいんですが、こうすることで体の回転で自然にクラブを引けるイメージが出るんです。仮にこの線がフェースと平行だと、円軌道で動くクラブヘッドとケンカする感じになって見え方が悪くなるんです」

後方のウェイトをただの重りで終わらせず、バックスウィングを正しく導くガイドとしても活用する。クラブを知り尽くしている匠たちのノウハウが盛り込まれている。

[COLUMN]
飛びを追求して「パーシモンなのに中空」を作っていた!

画像: 当時台頭してきたメタルヘッドに対抗し作られた「BIG LB」。パーシモンなのに中空構造という意欲作

当時台頭してきたメタルヘッドに対抗し作られた「BIG LB」。パーシモンなのに中空構造という意欲作

HONMAにはかつて「BIG LB」というパーシモンドライバーがあった。このモデル、パーシモンでありながら実は中空構造。そこで生まれた余剰重量をソールのプレートに転換、パーシモンとしては圧倒的な“低重心”かつ“大MOI”を実現した。ちなみにLBは“Low Balance”の頭文字。
素材は変われど、現代も発想は変わらない。
「HONMAはパーシモンの時代から常に飛びを追求しているんです」(諏訪氏)

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