「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

大ヒットモデル。2011年「910D」の再来になる可能性も。

GD 「タイトリスト」のドライバーでいうと、「9シリーズ」がPGAツアープロの間では使用されてきました。一般のアマチュアに注目されたのは、2011年の『910D』で、ここで大きく潮目が変わりました。その後も順調に続いてはいたましたが、他の外ブラの勢いが強くなったことでタイトリスト人気がちょっと落ち込んだとも言えます。

今回の「GTシリーズ」は『910D』を彷彿させるぐらいの勢いを感じるのですが、アマチュアゴルファーが革新的なクラブに見切りをつけて、やっぱりトラディショナルな、保守的なクラブに目を向け始めたのでしょうか?

長谷部 「タイトリスト」とは対極なんですけど、独自性の強い「ピン」も今、人気ですよね。お客様を見て他社を意識して右往左往するブランドよりは、「自分たちはこう考える」っていう主張を貫いているほうが、結果的には消費者から見た時の安心感はあるでしょう。「タイトリスト」が貫いている姿勢が支持されているというブランディングのお手本のような気がしますけどね。

GD 「ピン」を中心に「キャロウェイ」、「テーラーメイド」は革新争いを繰り広げている。 その一方で「タイトリスト」は保守を貫く。

じゃあ、その時日本のメーカーはどこに向かったかというと、タイトリスト的な考え方を持っていながらも、「キャロウェイ」、「テーラーメイド」、「ピン」に戦いを挑んでいて、なんとなくどこ向いているの? ってことになっている。本来なら、タイトリストグループに入っていたほうが、日本のメーカーにはよかったんじゃないかって思えてきます。

長谷部 そこまで厳しいことはなかなか言えないけど、オリジナルシャフトの開発をやめてしまった日本メーカーが多い点は本当に良くないと思っていて、「このヘッドにはこういうシャフトが日本のゴルファーには一番いいんだよ」というのを日本のメーカーだからやらなきゃいけないんだと思うんですよ。

市場の意見としてシャフトメーカーの人気ブランドとのコラボを採用すれば人気だし、そっちが売れるからそうしているって安易に採用しているように見えるのが一番良くないと思っていて、せめて日本のメーカーは日本人に合うクラブを出してくれっていうのは正直思います。

GD 例えば「本間ゴルフ」。本間の歩みを見れば、日本の人に向けたクラブ作りをしてきたメーカーだったと思うんですよ。それがやっぱり「マックス」という名前をつけてきた。「マックス」をつけることで販売量の増加を狙っているんだと想像しますが、元々のモノづくりのスピリットみたいなものからちょっとずれちゃうのかなと感じます。

本間だけではなく、「ミズノ」も、「ダンロップ」も。ダンロップは今回も「マックス」を作ってきました。「タイトリスト」はあえて「マックス」を言わないで、独自の世界観で勝負しているところにこだわりを気がします。

長谷部 「マックス」という曖昧な表現に乗っかってしまった結果、ブルーオーシャンではないレッドオーシャンの領域に自ら首を突っ込み、自分で自分の首を絞めているような宣伝文句になっているような気がします。結局、「マックスじゃないとおすすめしませんよ」ってお店の方に脅されているのかなって思ってしまいます。

マックスカテゴリーでひとくくりにして推奨されるのかと言ったら、試打クラブで推奨されるのは人気上位3本なので、絶対に入るわけじゃないです。そこに個性を出さなかったら、多分選ばれようがなくて埋もれていく、レッドオーシャンで沈んでいくってことだと思うので、「数多く売りたいからマックスにしました」というのは理由になっていないと思います。

ビジネスとかマーケティングを考えた時には、「自分たちがどういうポジションで、どれぐらいの数量だったら採算が取れるか、最低限ここを目指しましょう」みたいな精緻なビジネスプランがあって初めて戦略を練るべきなんですけど、もういきなり売れていると思われる市場に自ら飛び込んでいって厳しい戦いをしているようには見えますよね。

GD 本来、ゴルフクラブって性能勝負だったはず。 でも冷静に考えるとフィッティングは一見、性能勝負をしているように見えるんだけど、ショップ店員のフィルターが入ってくるじゃないですか。その時点で純粋な性能勝負というところが少し崩れているのかなと思います。

長谷部 やっぱりお買い得、売りたい商品、そういったところをおすすめポイントとして必ず出てしまうので、そういった中で、「今ミニドライバーも流行っていますよね」って言われることに端を発していると思うんですけど、「進化って何よ?」ということと、「自分に合うクラブって何?」っていうところがきちんと切り分けて話されていないと、「世の中のトレンドは大型化しているんだね、でも自分に合うのは小さいヘッドのドライバーなんだな」っていうのがどこかで結論が出ない。

それに伴うモノづくりというものがメーカーがちゃんと見極められてないと、ちょっとミニドライバーは市場性がまだ小さいからやめとこうと思う企業が多いのか、ミニドライバーをやりすぎても今までのロジックから外れてしまうからやらないでおこうなのかわからないんですけど、流行とブランドの整合性あたりについて、メーカーも今一度原点に立ち返って自らのポジショニングを見極めるタイミングが来ているんじゃないかなって気はしますけどね。

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