ニューフェイスたちにチャンスが来る2025年
来シーズンは、賞金ランク1位の金谷拓実がPGAツアーの予選会で出場権を獲得。2位の平田憲聖は米下部のコーンフェリーツアーへの挑戦を表明しています。つまり単純計算ですが2人が挙げた6勝と、約2億3000万円の「枠」が空くということになります。
[今シーズンの振り返り]でも紹介しましたが、金谷と平田のほかにも多くの20代前半からアラサー世代の選手が海外で活躍をした1年になりました。今季はその世代の選手たちが「あいつらにできるなら自分だって!」と奮起し、空いた「枠」のチャンスを狙う多くのニューフェイスがあらわれるシーズンになると予想しています。
個人的に最も注目しているのは賞金ランク11位、ZOZOチャンピオンシップでは日本人最上位の6位タイ、そして日本プロで初日からトップを守る完全優勝を果たした杉浦悠太です。メジャーで勝っているしアマチュア時代の実績も十二分なので「ニューフェイス感」は薄いかもしれませんが、来シーズンは間違いなく男子ツアーの中心になるでしょう。

賞金ランク11位の杉浦悠太。24年の日本プロで国内メジャーを制した(撮影/岡沢裕行)
杉浦にとって今シーズンは「もうちょっとやれると思っていた」シーズンだったはず。高校2年で日本ジュニア優勝、ナショナルチーム選出。アマチュアだった日大在籍時には日本オープン3位、そしてダンロップフェニックスで優勝を果たしています。
ツアーのフル参戦1年目でメジャー優勝は快挙ではありますが、彼の実力と実績からすればまだまだこんなもんじゃないと思っています。学生のころとは違い、ほぼ毎週にわたる4日間競技と長距離移動。初めてのことづくしでコンディションの維持がかなり難しかったはずです。夏以降の失速はそういったことの蓄積が要因でしょう。
杉浦と同じようにアマチュア時代から実績十分だった中島啓太や平田憲聖も、フル参戦1年目はリズムが作れずコンディションを整えるのに苦労したと言っていました。ただ2年目以降の活躍はご承知の通り。今年、ツアーの戦い方を学んだことで来シーズンは年間を通した活躍が期待できます。
杉浦と同様、参戦1年目の経験を糧に来季ジャンプアップしそうなのが岡田晃平です。彼も東北福祉大在籍時の22年に日本アマのタイトルを獲り、同年の日本オープンでローアマを獲得しています。

東北福祉大在籍時の22年に日本アマのタイトルを獲り、同年の日本オープンでローアマを獲得した岡田晃平(撮影/姉崎正)
今シーズンは開幕から5戦連続で予選を通過し、日本ツアー選手権では4位に入るなどさすがの好スタートを見せました。しかし、持病の腰痛の影響もあってか中盤以降は失速。プロ1年目として賞金ランク50位でシードは獲得するというのはすごいことですが、岡田選手の力からすると不本意なシーズンとなってしまったのではないでしょうか。ただ、平均飛距離300ヤードに迫るドライバーショットを持っておりポテンシャルは十分。まずは初優勝、そして賞金ランクの上位に絡む活躍を見せてほしいと思います。
QT組に目を向けると、QT1位で「史上最年長初シード」を獲得した49歳の海老根文博が話題を集めましたが、もう1人、QT6位で前半戦のシードを獲得した31歳の黒木紀至も同じく苦労人。最近では珍しく研修生を経験してからプロ入りし、現在は藤田寛之に弟子入りをして技術を磨いているようです。

左・海老根文博、右・黒木紀至
多くのプロゴルファーは、体力と勢いのある10~20代が伸び盛りですが、中にはさまざまな経験やコンディションの波長が上手く重なり、30代以降にピークを迎える選手もいます。海老根や黒木といったキャリアの選手は多くの壁を乗り越えてきたぶん、若手にはない経験が武器として持っています。エリート街道ど真ん中の選手とはひと味違うプレーに注目です。
他にもQT上位で注目したいのが5位の新村駿と、15位の櫻井勝之という2人の飛ばし屋。新村は優先出場できるABEMAツアーの賞金ランク23位にわずか1500円足らず、悔しい思いをしましたが、それを糧にQT上位でフィニッシュ。昨年、ABEMAツアーのJAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP CHALLENGE in FUKUIで3位タイに入り、翌週行われたレギュラーツアーのFor The Players By The Playersで4位タイフィニッシュし、2週連続で優勝争いに絡みました。さらに翌週の関西オープンでは初日単独トップとチャンスをモノにできる力のある選手です。

QT5位の新村駿
櫻井は僕も同組でラウンドしたことがあるのですが、飛距離は段違い。飛ばし屋と言われる選手たち比較しても頭一つ抜けるほどの飛距離を誇ります。一度はツアーを諦めドラコン選手に転身し日本チャンピオンにまでなりました。ロングヒッター有利のコースでうまくかみ合えば、彼のポテンシャルを発揮できるのではないかと、私だけでなく、選手や関係者などが注目しています。

QT15位の飛ばし屋・櫻井勝之
「勝ち切る力」と「落とさない力」の両方が求められる
ネクストブレイクが期待できる選手を中心に紹介しましたが、中心のとなるのは今平周吾、蟬川泰果といった実力者。今平は日本オープンを制し念願だった初メジャーを獲りましたが、優勝はその1回のみ。蟬川に至っては幾つ優勝を積み上げるのか期待されるレベルにいながら未勝利に終わってしまいました。

左・今平周吾、右・蟬川泰果
ただ逆に言えば調子の上がってこないシーズンでありながら今平は賞金ランク5位、蟬川は19位と「悪くても大きく崩れない」というベースの能力の高さが証明されたシーズンだったとも言えます。賞金ランクで上位に入るためには、「勝ち切る力」と「落とさない力」の両方が求められることを考えると、ベテランの岩田寛なども含め、このあたりの実力者がやはり本命になってくるでしょう。
賞金ランク上位2人が抜け、さらに賞金総額4億円のビッグトーナメント「前澤杯 MAEZAWA CUP」も新規大会として加わったことで、賞金王争いは今年よりも混戦になることは必至。開幕から最終戦まで目が離せない展開になりそうです。