
ABEMAツアーなどで実況、ラウンドリポーターを担当する萩原(撮影/大澤進二)
萩原菜乃花(はぎわら なのか)
名門日本大学ゴルフ部に所属して腕を磨き、ベストスコアは75。学生時代から週刊ゴルフダイジェストなどに登場。大学卒業後はライムライト所属のフリーアナウンサーとして活動中。
年間通してベテランの技が光った1年
昨年のABEMAでは、生源寺龍憲選手や鈴木晃祐選手が2大会連続優勝するなど強い選手が頭ひとつ抜けていましたが、 2024年のABEMAツアーは、ベテラン優勝か初優勝かが多く、その中でも、全体的にベテラン勢の優勝が目立った印象です。開幕で優勝した小鯛竜也選手を始め、原敏之選手(JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP CHALLENGE in FUKUI優勝)、北村晃一選手(太平洋クラブチャレンジトーナメント 優勝)、日高将史選手(LANDIC CHALLENGE 11 優勝)、内藤寛太郎選手(ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山 優勝)が優勝に名前を連ね、賞金ランキングも皆さん10位圏内という成績。

小鯛竜也(2024年セガサミーカップ、撮影/岡沢裕行)
今年勝ったベテラン勢の強さは、やはり熟練の小技にあると思います。特にパッティングが上手い選手が多く、北村選手は最終的にパッティングのスタッツ1位でツアーを終えています。日高選手が勝った「LANDIC CHALLENGE 11」は飛距離のある選手が有利なコース。年々、飛距離のある若手選手が多く出てきているなかで優勝を飾ることができたのは、多くの選手が2オンを狙うパー5で3オンを貫くなどのマネジメントの徹底とショートゲームの組み立て方のうまさにあったと思います。
2024年頭角を現したのは松山茉生・下家秀琉
松山茉生(福井工業大付属高校1年)

松山茉生(2024年バンテリン東海クラシック、撮影/岡沢裕行)
2024年日本アマチャンピオンを制し、「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」がツアーデビュー戦でした。彼はとにかく飛距離がすごい! 河本力選手クラスの飛距離を、高校1年生で出しているというのが本当に驚き。その後も5試合レギュラーツアーに出場していますが、「バンテリン東海クラシック」と「ダンロップフェニックス」では予選も通過。すごい若手が来たなと思いました。
下家秀琉(大阪学院大出身)

下家秀琉(2024年ダンロップフェニックストーナメント、撮影/有原裕晶)
「PGM Challenge」で初優勝したツアールーキーですが、最終日のスコアは「59」というビッグスコア。1イーグル5連続バーディという爆発力を見せました。自身のレギュラー2戦目だった「JPCサトウ食品」でも、大会2日目に6連続バーディを含む11バーディを達成しています。身長が180cmと高く、飛距離はもちろんバーディチャンスにつけるショットが魅力の選手なのですが、どんなスコアを出しても常にメンタルがフラットで、優勝インタビューでも「嬉しいです~」と“ゆるふわ系“なのも彼の魅力!
一番印象深いのはやっぱり最終戦……!
ABEMAツアーでは、開幕戦と最終戦の実況席が現地に用意されるので、必然的に選手を見ることが多いし、実況席に選手を呼ぶことができることもあって印象に残っています。でもやっぱり1番印象深いのは最終戦。山田大晟選手が賞金王になったのは全くの予想外でした。賞金ランキング28位で最終戦を迎え、賞金王になるには優勝しかないという状況で、そこを取ってくるんだ、というのにすごく驚きました。
とはいえ、山田選手の強さは2022年に初優勝を挙げた「太平洋クラブチャレンジトーナメント」にも見られたなと思い返されます。当時、最終日最終組についていて、それまでは勝ったことがなかったから「勝てるのかな」と思いながら見ていましたが、あまり周りを気にしていないというか、最終組の優勝争いの中でも自分のゴルフを崩すことなくプレーしていた姿に“強いな”と思ったことがあったんです。今回の最終戦でも3日間の完全優勝。2日目でトップだった時点でこれは勝てるなと思って見ていました。

山田大晟(撮影/岡沢裕行)
最終組で一緒だった河野祐輝選手は山田選手とかなり仲がいいんですが、実は2022年の太平洋でも同組で。雰囲気や関係性のいい組で回れた運の良さというのも彼の強さじゃないかなと思っています。
もうひとつ、印象に残っているのは内藤寛太郎選手。開幕にあった5人でのプレーオフにも加わっていたし、「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」では優勝、賞金ランキングでずっとトップにいて、1年を通して一番オフで仕上げてきたんだろうなっていう選手でした。腰を悪くしてしまって、レギュラーツアーのセガサミ―とABEMAの南秋田を欠場しましたが、40歳を迎えているのに飛距離もあるし、欠場直前までの調子の良さは本当にすごかったんです。

内藤寛太郎(撮影/大澤進二)
最終戦で山田選手が優勝して、2万6869円差の僅差で大逆転されてしまいましたが、「40歳での賞金王見たいよ!」と多くの人から声を掛けられるほどファンにも愛される選手で、腰の状態が悪いとはいえ賞金王は獲りたかったはず。かなり悔しい結果だったにもかかわらず、最終日には実況席に入ってその思いを語ってくれて。本当に謙虚でストイックで、人がいいというか素晴らしい選手の1人だと思っています。2022年の日本オープンでは優勝争いにも加わっていた実力の持ち主ですし、今回の賞金王を逃したこともあり、レギュラーツアーで勝って欲しいですね。
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次回はABEMAツアー7年間の振り返りをアップ予定!
※2025年1月6日17時50分、一部加筆修正しました。