今年の5月、6月頃に『GT1』がブレイクする可能性
GD 「タイトリスト」に関して言えば、PGAツアーで6年連続ドライバー使用率ナンバーワンですが、日本の市場ではその点があまり知られていません。それは市場におけるマーケティング的なものですか?
長谷部 その通りですね。日本でのマーケティングのやり方が、タイトリスト独特って言ったら変ですけど、あまり無理してユーザーの拡大を意識はしてないって話を以前もしましたが、PGAツアーとかアメリカ本国での使用率は高いけれど、日本ではそうでもないと言われる部分になっているのかもしれませんが、競合の「テーラーメイド」と「キャロウェイ」が『GT』を意識した色を出していることを考えると、本流はどっちなの? って言われた時には『タイトリスト GT』なんでしょうね。
GD アマチュアは元々プロが使っている道具に憧れをもっていたので、「プロが黒いヘッドを使っていれば黒いヘッドがいいんだ」ってなったけれども、今はちょっと違う?
長谷部 PGAツアーの情報が如実に日本のアマチュアゴルファーに影響しているのかって言ったら、日本の市場で今一番の影響力を与えているのはアマチュアのユーチューバーだったりするわけですよ。
そういう人たちの評価とかコメントがものすごく影響を与えてしまっているので、公式な情報だったり、メディア視点の情報も見つつ、何を最終的な選択肢の理由のひとつにしているかというと、ユーチューブでの動画は見逃せないですね。
GD 昔は口コミが一番力を持っていたと言われます。その口コミの発信地は上手い人だったじゃないですか。上手い人たちから、わーって広がっていったものですが、今はちょっと感じが変わりました。
長谷部 コロナ禍でゴルフができない人がユーチューブを見漁った時に、自分に近しい人が打って評価しているのを参考にする傾向が強まりました。それまではホームコースのシングルやトップアマが使っている道具を見習って トップダウンで広まった。
ある地域であるクラブが売れるという独特な文化があったのが、いつの間にかネット上でのインフルエンサーに影響されるようになって数年経つので、その口コミの発信源がどこにあるのかはちゃんと注視しなきゃいけないんでしょうね。
GD 『G400』がブレイクしたきっかけは、半年後に出てきた『G400 MAX』、「遅れてきた大本命」と言われ、今に繋がるドライバーの大きな流れを作ったきっかけだったわけですが、『GT2』と『ピンG400』の流れが似てるような気がしています。
最初に『G400』のLSテックとレギュラーに火がついて、その後『G400 MAX』が出てドンときた。今回『GT2』が市場で評価されて、『GT1』が遅れて出てきたことを考えると、「遅れてきた大本命、再び」の可能性もゼロではないように思います。
長谷部さんが言うように、「タイトリスト」のマーケティング手法は、「テーラーメイド」、「キャロウェイ」のような大々的なものではありませんが、あの当時『G400』も大々的にはやってなくて、市場が評価したことを考えると「ピン」、「テーラーメイド」、「キャロウェイ」が三つ巴でにらめっこしてる間に、コンサバティブな黒塗りのヘッドの評価が高まると「例年とは違う動きを見せんじゃないの?」という見方もできなくもないと思います。
長谷部 いい意味で言うと、毎年新製品を出すブランドではないというところが1つ鍵になると思うんですね。ですから、市場でじっくり売ることができる。火がつくのが発売直後じゃなくて、今年の5月、6月 ということだって十分考えられますし、「一通り打ってみたけど、やっぱりGT1が一番いいじゃん、飛ぶじゃん」ってことになる可能性だってゼロじゃない。
実際自分も『GT3』のトウヒットでドローを打って飛ばせるようになったことに感動しているんですけど、反発性能の高いドライバーでも、トウヒットでは初速が落ちてしまうことが多い。むしろフェースセンターからヒール寄りで打つのが安全なんですけど、それだとドローボールが打ちづらいので、ドローを打つにはトウヒットしたい。
ここでの『GT』のハマり方がすごく良かったので、そういった自分好みのドライバーにハマる人がいるのであれば、メーカーがどんなロジックを言おうが、理論上ヘッド機能が高まろうが、やっぱり打ってみてこれが飛ぶとなれば、ある分野ではヒット商品になりますよね。
GD まだ2025年商戦ははじまったばかりですが、どのクラブがリードしそうだと思いますか?
長谷部 「デザインのかっこいいテーラーメイド」と、「やさしいピンの飛び」がまず比較対象に上がるような気がしますね。「キャロウェイ」は1個1個のモデルが熟成されているので、キャロウェイファンはそこで満足すると思うんですけど、他のブランドからのスイッチが非常にしづらいように見えます。
というのはちょっと狙いを定めすぎているような、1つ1つのモデルがゴルファーを限定している。『エリート』のやさしいMAX系を選びたい人は2つの選択肢があるのですが、『エリートX』はドローバイアスに振っているので、他社のMAXからのスイッチはしづらいような気がします。
「テーラーメイド」も「ピン」もやさしいモデルで重心位置を変えたり、低重心にしたりして飛ばせるようになっているので、2024年にMAXに手を出せなかった方も含めていろんなところから入りやすいような気がします。ここの2つが割と話題になるような気がするところに、『GT1』がどこまで健闘するのかっていう感じじゃないですか。
GD 『GT1』はどっしり構えていて、「使いたかったら、好きならどうぞ」といった感じでしょうか?
長谷部 あえてメーカーが仕掛けることはせず、「打ってみたら意外にいいんだよね」っていう声が、じわじわと春先から広がる可能性はある。2025年のダークホースと言っていいかもしれませんね。
【購読のご案内】
「長谷部祐とギア問答!」は、ゴルフダイジェスト公式メールマガジンで定期配信(購読無料)しております。みんなのゴルフダイジェストサイト内のバナーをクリックし、購読登録をお願いします。