ウェイト調整によってさらに細かなフィッティングが可能になる
GD ウェイト調整の話をするとこの「ギア問答」でも何回かやっていて、軽くしたほうが振り心地が良くなるという話をしましたが、「D0神話」じゃないけども、数字にとらわれる必要はなくなってきますね。
長谷部 ドライバーのヘッド重量は限られた範囲内で作ってはいるものの、未だにアメリカのメーカーのものは設定自体が重いので、それに対してのD2設定やD1設定は規定として決まってしまっているんですけど、そこから思い切って5グラムぐらい軽くして振りやすくしたほうが日本のゴルファーにとってはいいのかなと思います。
GD 「ライトウェイト」を謳ったのも「ピン」が先駆けだったと思います。その延長線上に今あるわけで、今度はウェイトの取り替え調整も含めて、ドライバーの進化のように感じてくるんですが。
長谷部 「テーラーメイド」が推奨することでフィッティングの仕組みが今後どう変化してくるかわかりませんけど、可能性を持っているのがウェイトのバリエーションだったり、可変することで重心が大きく変わることを「テーラーメイド」は積極的に説明しているので、ひとつのきっかけになればいいなと思いますよね。
新製品を買ったけどうまくいかなかった時に、まだちょっと微調整ができる許容範囲を持っているクラブが今年は増えたのかなっていう気がします。
GD ウェイト調整の始まりは「テーラーメイド」の『R7』で、スクリュー型のウェイトがトウとヒールに埋め込まれていました。その次に「ミズノ」が採用したスライド式が登場してきましたが、元々そういう考え方ってあったとしても時代的に言えば10年以上前の話になります。その間にヘッドが変化しているわけじゃないですか。その変化したヘッドに対してもウェイトの効果がより出るようになったということですかね?
長谷部 基本的にはここ何十年もヘッドを大きくすることに着手して開発してきました。ヘッドが大きくなれば余剰重量が減って、またさらに余剰重量を生み出す努力をしてきました。その中でヘッドがある一定以上の大きさになれば、慣性モーメントもある一定以上の領域にはいってくる。
「10Kまで必要ないんじゃないか、8000g・㎠ぐらいあれば十分にやさしい」となるんであれば、その中でウェイト調整によって何ができるかというのが今の『MAX』だったり、『レギュラーモデル』だったりする。 だから『R7』で考えていた重心距離を変えることによって振り感を変えるという時代から、もう1歩先のフィッティングで振りやすさをどう求めていくかに変わってきた気がしますけど。
GD 慣性モーメントを大きくすることが余剰重量の使い方の目的だったと思うんですけど、今後は慣性モーメントを大きくすることではないところに余剰重量を使って、さらにパーソナルで変えられるようにしている?
長谷部 そう見ていいと思います。各社ウェイト調整の話は積極的にしてくると思います。かつてはひとつのヘッドで何人ものゴルファーに合わせるためのウェイト調整だったような気がするんですけど、近年はヘッドバリエーションがあるので、ある一定のゴルファーをひとつのヘッドの中で囲みつつ、さらに良いパフォーマンスを出せるようなウェイト調整機能に進化したと思います。
GD 『LS』、『レギュラー』、『MAX』の中から選択させていた状態から、例えば『MAX』の中でさらに細かい調整ができるようになった。
長谷部 そうです。今はもう3種類のヘッドがあるという前提で考えたりしていると思うので、その中でさらに振り感とスピン量の調整がしやすくなっているんだと思います。
GD 今回の『MAX』で調整できるのはどこ?
長谷部 ウェイトを軽くすることはやろうと思えば全部できます。「タイトリスト」だってできます。それを積極的にやるかどうかが今まで言及されてなかったのに対してウェイトを何種類も用意することで軽くすることもできるわけですから、非常にフィッティングはしやすくなると思います。
GD 余剰重量をどう使うかでヘッドの完成形を目指していたところから、余剰重量を自由に使えるようにした。それでも基本的な設計がちゃんとしていないと壊れちゃうこともあるわけじゃないですか。
長谷部 普通に考えると違和感が生まれる可能性もゼロじゃないですよね。
GD でも、そうならないところまでヘッドの基本形が出来上がってきたということですか?
長谷部 ここ何年もかけてストレッチ形状を極めてきているわけですから、その中でいってはいけない重心位置の設定もわかっているでしょうし、ゴルファーが振りやすく、低重心でスピン量を減らすためにはどこがいいのかもわかっているから大胆にできるんだと思います。
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