「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

2025年は『レギュラーモデル』と『MAX』の距離が縮まった

GD これまでの流れだと2025年は『MAX』を中心に考えなきゃいけないと思うんですけど、「2025年モデルはマックスのフィッティング域が広がっている」という話を前回(ギア問答!#42)ちょっと触れました。

長谷部 1番に『MAX』を先行した「ピン」が何をしているかっていうと、MAXの寛容性を維持しながら、形状を少しだけスリムにしている点が非常に注目で、カーボンクラウンにしたこともそうなんですけど、部分的な肉厚を細かく意識して余剰重量を生み出して、重心を低くしているので、フィッティングのしやすさっていう点では調整幅はあまり変わらないですけど、『G430』とかその前のモデルのMAXを使っていたり、『G430 MAX 10K』を使っていてスピンが多いなっていう人にとってみれば、メチャメチャはまって飛ぶドライバーになっているのかなと思います。

GD 「ピン」のMAXに関して言えば、打ってみてやさしい、結果が出るから人気になったという見方ができます。

長谷部 『G440』は従来モデルよりスピンが300回転から400回転も減って、強い弾道で飛ぶ要素が加わってくるので、そこは魅力じゃないですかね。

GD ヘッドがスリム化したというのは、行き過ぎたストレッチ形状から戻ってきた?

長谷部 ストレッチしたものが戻されているというのと、あとは見た目のデザイン。細かなデコレーションがなくなっていて、スッキリ構えられるので、「ピンに興味はあったんだけど見た目が嫌だな」とか、「形状がちょっとな」っていう人たちにとってみれば、「すごく変わったな」という印象になるのではないでしょうか。

GD 「テーラーメイド」はどうでしょう。

長谷部 今回の「テーラーメイド」は、『MAX』と『レギュラーモデル』の投影形状が同じなのでMAXが合わなかったら、レギュラーモデルに移行しやすいようになっています。

『MAX』は後方にウェイトが1カ所で、レギュラーは後方とフェース寄りの2カ所にウェイトがあるので、ウェイトを前後入れ替えることでレギュラーモデルでも大きく性能が変えられる仕様になっています。なので、「MAXだとちょっとスピン多いな」と思えば、レギュラーモデルにしてウェイト調整で合わせるというやり方ができます。

画像: 左から『Qi35』、『Qi35 MAX』

左から『Qi35』、『Qi35 MAX』

GD 同じ形状でウェイトの付け方が違う。

長谷部 本当にやさしくつかまえたい人は『MAX』でいいんですけど、「スピンを減らしたいな」って言う人はレギュラーモデルで調整ができるのが今回の「テーラーメイド」です。

GD デフォルトで後方13グラム、前方3グラム。それを入れ替えると重心が浅くなって『LS』(ロースピン)になっちゃいませんか?

長谷部 『LS』は形状が違います。形状がもっとシェイプされ、丸みが収まっていて、さらにウェイトが3つ入り、トウとヒールと後方と入れ替えることで、フェース上の重心を下げることができるので、LSのターゲットは違うゴルファー向けになります。

GD 「キャロウェイ」は、『MAXモデル』も『レギュラーモデル』もそれぞれウェイトが後ろにあり、横移動できる仕様になっています。

長谷部 ウェイトを入れ替える仕様になっていて、重心距離の調整ができるタイプなんですが、どちらかのヘッドに決まらないと微妙な調整の効果は出にくいので、「ELYTEモデル」(エリート)内のスイッチは難しいかもしれません。

GD 算数の集合じゃないですけど、性能の重なりが大きいのが「テーラーメイド」で、「キャロウェイ」は小さい?

長谷部 「キャロウェイ」は重なる部分が非常に少ないと思います。「テーラーメイド」は重なる分が多い。各モデルのウェイト調整が非常に広範囲になっていることと、『LSモデル』でも重心を深くしようと思えばできますし、『レギュラーモデル』で重心を浅くしようと思えばできる。

GD ウェイトを前後入れ替えると重心が浅くなりますよね?

長谷部 フェース面上の重心は下がり、重心距離も短くなります。

GD そうすると、操作性がアップする?

長谷部 はい。

GD そうすると、最近だと社外品のアフターパーツを使えばウェイトを軽くすることもできるじゃないですか。後方のウェイトを軽くしたら、重心は浅くなって重心距離が短くなって、扱いやすくなるという調整も実はできるんですよね。

長谷部 自分も使っていたドライバーの後ろのウェイトを軽くしたり、抜いたりしてバランス調整をしつつ、若干重心距離を短くしたり、浅くしたり、 振りやすく調整することをやっています。『ローグST』もそうですし『SIM2』でもやりました。

GD まだ登場間もないのでアフターパーツが出てくるかわからないですけど、買った後に「合わないから売っちゃえ」みたいなことは減り、アフターパーツでウェイトを入れ替えることによって、クラブが実は良くなるってこともあり得ますよね。

長谷部 「テーラーメイド」は今回、ウェイトを何種類か同時に用意するって話をしてたので、そういう意味では最初にデフォルトで入っているウェイトから、2グラム、3グラム、なんならもっと5グラムぐらい軽くして振りやすくなるってことも可能になります。
 
次ページは「ウェイト調整とフィッティングの関係」

This article is a sponsored article by
''.