
PGAツアー「バルスパー選手権」を制したビクトール・ホブラン(写真/Getty Images)
サンデーバック9終盤、3年ぶりツアー通算16勝目を目指したジャスティン・トーマスのリードは3打に広がっていた。だがホブランは14番で3.5メートルをジャストタッチで沈めバーディを奪うと「自分でも驚くくらい落ち着いていた」と難しい16番、17番で連続バーディを奪ってトーマスを逆転した。
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x.com上がり3ホールでショットを曲げたトーマスが16番と18番で痛恨のボギー。ゴルフ界でもっとも才能豊かで実績のある2人は最後の最後で明暗を分けた。
「正直勝てるとは思っていませんでした」と満面の笑みでインタビューに応えたホブラン。
「この1年半かなり苦労したので今起こっていることが信じられません。今週まで自分のプレーに期待していなかったから」
直近の3試合で予選落ち。前週のザ・プレーヤーズ選手権では初日に80を叩いた。それでも「まぁ、来週は違う風が吹くだろう」と気持ちを切り替え、急遽スケジュールに入っていなかった今大会にエントリーすることを決めた。
アマチュア時代マスターズと全米オープンのローアマに輝きプロデビュー後もとんとん拍子に勝星を積み重ね、23年にはテッペン(年間王者)に立った。しかしそれ以降彼は“完璧主義“という呪いに苦しんだ。
ゴルフに悩み何人ものコーチを渡り歩き、道具を替え、スウィング改造にのめり込んだ。いいゴルフをしたいではなく、いいスウィングがしたい。完璧を求めるが故に壁にぶつかり自信を失った。
復活優勝しても「スウィングはまだ最高の状態じゃありません。でもタイミングが良かった。僕はよく完璧を求めすぎるといわれることがありますが、僕らは上手くなるためにここにいるし勝つためにここにいます。究極を求めないなんて意味がないでしょ?」。
ショットだけでなくこの1年半悪かったのがパッティング。しかし今週パットのデータが+7.353で全体の2位とグリーン上での好調さが勝因の1つだった。
そこには契約しているプーマではなくアマチュア時代から慣れ親しんだナイキのシューズに替えた影響が大きい。
「ナイキは靴底が薄く不安定なぶん、傾斜をより感じることができてラインの読みが良くなった」
ちなみにいまのところプーマが契約違反を申し立てたという報道はない。
長いトンネルの先に灯りを見つけたホブランにはこれから初のメジャー制覇というミッションがある。