
「Vポイント×SMBCレディス」での笠りつ子のルール違反について検証
同レディスの2日目、13番ホール2打目。笠はレッドペナルティーエリアからのラテラル救済でドロップした。しかし、スタンスがレッドペナルティーエリアにかかるので正しくないと、笠は判断したのだろう。再びボールを拾い上げ、2回目のドロップも拾い上げてプレースした。
これは笠の勘違いだった。1回目のドロップ処置は正しく、インプレーの球だったのだ。〈ゴルフ規則17-1 ペナルティーエリアの球の選択肢〉に「プレーヤーはペナルティーエリアからの救済を受けた後を含め、ペナルティーエリアの外の球をプレーするためにペナルティーエリアの中に立つことができる」とある。つまり、笠のスタンスがペナルティーエリアの中にあっても救済のためのドロップは成立し、よって最初の球はインプレーとなったわけである。
一方、例えばカート道路など動かせない障害物などの救済には「その異常なコース状態によるすべての障害からの全ての完全な救済でなければならない」〈同16 -1b〉。となっている。つまりドロップして救済を受けた場合、スタンスがその障害物にかかったら再度ドロップをやり直ししなければならない。同じ救済でもまったく違うのである。
これらのことが大会関係者の指摘で明らかとなり、笠も認めたため、最終ラウンドの後に〈同14-7誤所からプレーすること〉により、2罰打となり、2日目13番のスコアは6から8、通算スコアもトータル1オーバーになり、最終順位は13位タイとなった次第だ。つけ加えておくと、インプレーの球を拾い上げてストロークしてしまうと1罰打を受けるのだが、「誤所からの2罰打」と重複した場合、「複数の規則違反」として、ボールを拾い挙げた罰打は免除される〈同145c〉のである。
「この2つの救済のケースは紛らわしいですね。ゴルフ規則はプレーファストを前提にして“簡素化"を目指しているように見えます。いわゆる重箱の隅をつつくような条文が消えていく傾向をみると、改定されるかもしれませんね」とルール研究家の小山混氏。
それにしてもルールの知識は自分のスコアを守る武器でもある。プロである以上、またアマチュアの模範となるためにも、しっかりした知識を持つことはいうまでもないことだろう。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年4月15日号「バック9」より