ミニドライバー派とコブラ派。共通するのは「操作性」
GD シニアプロにはクラブ契約をしてない選手が多くいます。そのフィールドで「性能第一」でクラブを選んできた時に、「コブラ」に人気に火がついたということは、性能が高いと見ていいのでしょうか?
長谷部 もちろんそうだと思います。とにかく『エアロジェット』の時は、シニアツアーで話題が持ち切りでした。次のモデルの『ダークスピード』になっても、結構スイッチして使っていたプロがいたので、この人気は本物だと思います。
白基調の明るいデザインから黒いヘッドになって、「ダークスピードはかっこいい」という評価がありました。今年、真っ黒なデザインを「テーラーメイド」が模したかのようにデザインも先行しているということになれば、何かしらのイノベイティブな取り組みは「コブラ」が先行しているので、シニアツアーを皮切りにまた話題になる可能性あります。
GD シニアツアーで言えば、ミニドライバーがブームになっていています。ミニドライバー派とコブラ派に分けた場合、これってどのように見えますか?
長谷部 ミニドライバーもコブラも、どちらかというと主流じゃないものをシニアが選んでいるのだとすれば、そういった個性をしっかりと見極める力が当然シニアプロにはあるし、自分たちが過去に使っていた、若い頃の息のいい時を呼び戻してくれるようなイメージやパフォーマンスがそこにあるのだと思います。
ミニドライバーはヘッド体積が400ccまでいかない時代の形状にまで振り切って作られているわけですから、今主流のMAX系の大慣性モーメントのものが振りづらいと感じているシニアプロに関しては、コブラもミニドライバーもどちらも振りやすく感じるんじゃないでかね。
GD そこに共通するのは「操作性」。コブラの「LSモデル」が人気というのも操作性がキーワードになりそうですね。
長谷部 ある程度フェース面寄りに重心があるほうが打ちやすいと感じているプロが多いのだと思います。あともうひとつドライバーに関して特化して言うと、初速性能が非常に高い。そういう評価が多いですよね。巷のユーチューバーやショップの話を聞いても、「コブラは初速が速いよね」って第一声であがるので、その辺も魅力としてあるのでしょう。
もちろんルール内の設計にもかかわらず、打点との一致とか、当然そういうことも考えられるんですけれども、初速性能の高さをうまく引き出したのが高評価のポイントじゃないですか。
GD 日本のメーカーを含め、他の外ブラも総じてテクノロジーを前面に押し出してきます。逆にコブラはそんなに言ってないような気がします。
長谷部 素材とか設計のベースとなる構造が最新ではないかもしれないですけど、適材適所で使っていることは間違いないですし、クラウンが全面カーボンかっていうかそうでもないわけですけど、行うべき重心設計がちゃんとできているということじゃないですか。
GD 「これがすごい、これがすごい」ということに消費者はちょっと踊らされているかもしれません。でも本当の答えは実はちょっと違うところに存在していて、それをあえて言わなくても、結果として出しているのが、今のコブラ人気のような気がします。
長谷部 そうですね。マーケティング用語では「リーズン・トゥ・ビリーブ」という言葉があって、要はその製品が良い理由が何かをメーカーは必死になって答え合わせをして言うわけですよ。みんなそれに踊らされてしまうんですけど、ゴルフクラブの場合は、「試す」というチェック機能が1回入っているので、それに踊らされない人も中にはいる。コブラの商品が評価されているのは、仮に多くの説明がなかったとしても、1回チェックをするという工程を踏まえれば、「あれ? コブラいいぞ!」と思う人が現れるわけです。ひと通り今年の新モデルを打ってみた。「あれあれ、コブラのほうがいいんじゃないか」という声がじわじわと出てくることはあり得ると思います。
その辺がマーケティングの取り組みとコブラの発信するメッセージ量というのが確かにあるんですけど、いろんな構造とか設計の説明をされるよりも、一度打ってみないとわからないという感じのブランドだと思います。