
桐林宏光(きりばやしひろみ)
ゴルフ塾主宰。LPGAティーチングプロA級・ジュニアゴルフコーチ。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。1964年東京都出身、日本女子大学卒業。プロゴルファーとして活動中、筑波大学大学院で心理学を学び修士課程修了。心理面と技術面を融合し、ジュニアからシニアまで延べ1万人をレッスン。19年「LPGAアワード ティーチャー・オブ・ザ・イヤー清元登子賞」受賞
「自分の心」だけはコントロールできる
技術とメンタル面を融合したレッスンを行う桐林宏光プロが、「ゴルフメンタル勉強会」を開催。そこに参加し、ラウンドで使えるメンタルスキルを学んできた。
「体や技術は数値でわかりやすく上達が見えますけれど、メンタル面での上達は、何を測っていい
かわからない。でも、心も、体や技術のように、使い方などのトレーニングは必要です」

「決断のラインを自分で作り、感情は5秒でリセットする」
そもそもラウンドにおいて、自分でコントロールできるものは「自分の心」だと桐林プロ。
「OB、池、バンカー、林といった『動かないハザード』、雨、風、暑さ、寒さといった『動くハザード・自然編』、そして同伴競技者、キャディさん、前後の組の方などの『動くハザード・人間編』はコントロールできません。特に厄介なのは人間。やはり同伴競技者の言動にはすごく左右されますし、前後の組の方によっては焦ってプレーするしかない状況も生まれる。でもこれらは全部自分がコントロールできないもの。そこにイライラしたりストレスを感じることは損だと理解してほしいんです」
自分の心をコントロールするための「1ストローク」に注目してみよう。
「準備をして、決断をして、球を打って、その後に何らかの感情が必ず起こります。そこまでが1ストローク。決断の仕方も大事。楽屋で『決断のライン』をきちんと自分で作り、ラインを越えて舞台
に上がったらもう迷わず余計なことを考えず、決めたことをとりあえずやってみる。例えば、7番ア
イアンでこういうラインを出して、お腹にはこういう感じで力を入れて、と具体的に落とし込んだ決断がいいですね。結果とすり合わせて実行寸前まで迷うと、パフォーマンスは発揮できません。また、打った後に起きた感情を5秒でリセットすることも必要。ミスショットでも最高のショットでも同じように5秒で切り替えるのです」

「ゴルフはターゲットゲーム。コースでA地点からB地点へのボールの移動に伴う喜怒哀楽の感情が生じます。対して練習場ではそんなには生じないですよね」
ミスショットとナイスショットのメカニズムから考えてみよう。
「同じような刺激(ストレス)が来ても、それをどう評価してどう自分が受け止めるかで体の反応が変わり、結果的にパフォーマンスの失敗と成功が生まれるんです」

“朝イチショット”を例に。まず「刺激」というストレスがあり、これはなくせないが、次に生まれる自分の「評価」がポイントとなる
この「評価」には、プラスに考え受け止めることが必要なのだ。
「もちろん、リスクマネジメントは必要で、行き当たりばったりや、ただの能天気とは違います。まず準備の段階で最悪のことを想定し、それをよりポジティブな思考で上塗りして決断することです」
ポジティブ思考はトレーニングで養えるという。
「ラウンド中の嫌な場面を想定し、自分が発するマイナスな語りかけの言葉や、浮かんだ感情を書き出します。そのマイナス思考の文をプラス思考の文章に書き換えるんです。自分の心はついてこなくても、言葉面づ らだけでいいのですぐに変換するクセをつける。するとそのうち心が追いついてきて、繰り返しているうちにだんだん習慣化されていく。ポジティブ思考にするというより、100%だった負の感情が50%くらいになっていくという、マイナス思考を減らすトレーニングでいいんです」
【桐林塾メントレ①】
思わず浮かぶマイナス思考をすべてプラスに変換するクセを!
認知の置き換えトレーニング。「両方書くことが大事で、ネガティブな感情をムリやりにでもプラスに置き換える訓練が必要です。やっていくうちに心もついてくるようになります」
1、同伴競技者がスロープレーだ。後ろの組は待っていて、グリーンが空いてしまっている!
マイナス( )
↓
プラス ( )
2、過去何度も同じように池ポチャしているホールで、池越えのショットを迎えた
マイナス( )
↓
プラス ( )
PHOTO / Yasuo Masuda
※週刊ゴルフダイジェスト4月15日号「ラウンド中の自己コントロール術」より一部抜粋