いよいよシーズンイン。今季は、メンタル面から自分を鍛えなおしてみませんか? 「技術を磨くことと同じくらいスコアアップにつながる」というのは桐林宏光プロ。週刊ゴルフダイジェスト4月15日号では、メンタルトレーニングのより実践的なお話を特集。「みんゴル」でも2回に分けてご紹介。【2回中2回目】
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きりばやしひろみ/桐林宏光
ゴルフ塾主宰。LPGAティーチングプロA級・ジュニアゴルフコーチ。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。1964年東京都出身、日本女子大学卒業。プロゴルファーとして活動中、筑波大学大学院で心理学を学び修士課程修了。心理面と技術面を融合し、ジュニアからシニアまで延べ1万人をレッスン。19年「LPGAアワード ティーチャー・オブ・ザ・イヤー清元登子賞」受賞
では、具体的なラウンド中の自己コントロールスキルを教えてもらおう。まずは、リラックス法から。1つ目は体ベースで取り入れる「筋弛緩法」。
「例えば腕にギュッと力を入れた後にゆるめることで体をほぐしてリラックスさせる方法です」
2つ目はイメージ力、氣、言霊で取り入れる「折れない腕」。
「腕を伸ばして、他の人にひじあたりを曲げてもらいましょう。まず、ただ伸ばしただけだと意識が向いていないから“腑抜け”の状態ですぐに曲がる。逆に曲げられないように“力”を入れるとガチガチではありますが案外曲がったりする。では、手をパーにして腕を伸ばし、指先から水が出ているイメージにしてみましょう。不思議なことに自分では全然力んでないのに、他の人から力をかけられてもなかなか曲がらないんです。腑抜けと力みがよくない。その間のリラックス状態が一番強い『折れない腕』。これは、スウィングのときにも利用できて、クラブヘッドの先から水がバーッと出ているようなイメージでアドレスし、そのまま水を回すようなイメージで振ると、脱力した状態でヘッドの重さを上手く使えるようになります」
桐林塾メントレ②「折れない腕」を作る先から水が出ているイメージを!
ムリに力を入れなくても、手の先から水が出ているイメージを持つと、リラックス状態で強い「折れない腕」に。同様にヘッドから水が出ているイメージで構えて振ると、いい感じに脱力してヘッドの重さを使える。

いい感じに脱力できる
イメージすることや言霊で、動きを変えられることを理解してほしいと桐林プロ。
「『私はできる』と言いながら振るのも、水が出ているイメージと同じ効果があるんです。力が入ってはいないけれど集中力は高まっている状態。『絶対にフェアウェイの真ん中に行く』など、他のプラスの言葉でも試してみましょう」
紐を結んだ5円玉でのイメージトレーニングもやってみよう。
「腕が地面と平行になるようにし、紐を持って5円玉が左右に動くイメージだけを持つと、実際に動いてくるんです。次に回るイメージを持ってみると、実際に回転するんですよ。結局、頭でイメージしたことが神経を通って体に伝わり動きにつながる。実際は指先を動かしてはいるんですけど、それはイメージしたことに対して体が反応してやっているだけ。
桐林塾メントレ③イメージで5円玉は回る!神経回路をスムーズにしよう
紐に結んだ5円玉を持ち、左右に動いたり回るイメージを持ってみよう。実際、動いてくるから不思議だ。「頭でのイメージが神経を通って体に伝わる。自分の流れがよくなるんです」

イメージで回る
疑いを持ったり、『本当に動くかな、どうしよう』と焦りを持つとブロックされます。パターを使って同じようにやってみるのもいい。振り子運動で『動け、動け』と言いながら練習する。イメージが先にあって、その後パターヘッドという物体がくる。リラックスもできますし、動きがスムーズになります」
次にリセット法だ。前述した「感情を5秒でリセットする」ために、実際にできることは?
「まずは深呼吸。鼻から吸って口から吐きます。4秒吸って、4秒止めて、8秒吐く。ゴルファーなら、アゲンストの風を吸い込んで、4秒待って、風が入れ替わりフォローの風に乗って吐き出すイメージで行うのもいいと思います。悪いイメージを乗せて吐き出すのもいいですよ。ラウンド中、無呼
吸になっている人は多いんです。深呼吸すると脈拍が下がってくるというエビデンスもあります」
2目は体に刺激を与えること。おしりをポンと叩く、晴れた日なら太陽をパッと見て「まぶしい」と感じることでもいい。
「3つ目は、1ストロークごとにグローブをビリッとする。『さっきのプレーは終わったよ』と自分への合図にするんです」
同様に、「はい、次!」と、自分の切り替えの合図を作るのもいい。
「4つ目は、現象化すること。打った瞬間、『右に行っちゃった、どうしよう』と思うと感情が乗りますが、自分が解説者だと思って、『右の林に飛んでいきました。あれはOBではないから次は出せますね』と現象としてとらえる。『シャンクが出た!』ではなく『右斜め45 度に低い球が出た』などと解説していくと感情は入りませんし、リセットにもなります」
桐林塾メントレ④ラウンド中のリセット法自分に合ったものを使おう!
1つのストローク後に生まれた感情は「5秒でリセットする」ことが必要。いろいろと試して自分に合う方法を見つけ、スキルを磨いていこう。

4秒吸って、4秒止めて、8秒吐く。おしり、ポン、太陽がまぶしい!解説者になる。「右斜め45度に低い球が出た」、「はい、次!」と口に出す、「……のに」と言わないなどなど
5つ目は、「この間は上手くいったのに……」「練習ではよかったのに……」と「……のに、」という言葉を使わないようにすること。
「『のに、』の次にはネガティブな言葉が続きます。だからその前で句点を付ける。『この間は上手くいった。』『練習ではよかった。』とすると、だんだん現象としてとらえられるようになってきますし、感情も傷みません」
メンタルトレーニングは弱い心を強くすることではなく、自分の持っている実力を発揮させるためのものだと桐林プロ。
「マイナスのイメージを持つと自分の能力やパワーは遮断されてしまう。リラックスできているとき
は、自分の流れがよくなり、自分が持っているものを100%表現できるようになるんです」
今シーズン、心のトレーニングにも取り組んでみようではないか。

練習やラウンドがあまりできない人こそメンタルトレーニングの価値はあると桐林プロ。
「ゴルフメンタル勉強会」は4月からも毎月1度開催予定。申込みは公式HPで
PHOTO / Yasuo Masuda
※週刊ゴルフダイジェスト4月15日号「ラウンド中の自己コントロール術」より一部抜粋