ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、3月のアーノルド・パーマー招待で通算5勝目を挙げたラッセル・ヘンリーについて語ってもらった。
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3月のアーノルド・パーマー招待で通算5勝目を挙げたラッセル・ヘンリー

3月のアーノルド・パーマー招待で通算5勝目を挙げたラッセル・ヘンリー。世界ランキング8位(4月23日現在)と初のトップ10入りを果たしました。ヘンリーといえば思い出すのが、22年のソニーオープン。

最終日、5打差リードでバック9に入るも、松山(英樹)くんに追い付かれ、プレーオフの末に敗れました。ヘンリーからすればショッキングな負け方で、自信とプライドをズタズタにされても不思議ではない試合でした。

しかし、逆にあの敗戦が転機になったのか、翌22-23シーズンあたりから、徐々に強くなっていった印象です。11月のワールドワイドテクノロジーで5年8カ月ぶりの4勝目を挙げ、マスターズでは4位タイと自身初のメジャーでのトップ10入り。6年ぶりにツアーチャンピオンシップにも進出しました。翌24年シーズンは優勝こそありませんでしたが飛躍の年に。19試合に出場して18試合で予選通過。

トップ10入りは7試合。全米オープンで7位タイ、全英オープンで5位となり、フェデックスランク4位も自己最高で、初めてプレジデンツカップにも選ばれ、スコッティ・シェフラーと組んで、米国選抜の10連勝に貢献しました。

そして今シーズンは、優勝したアーノルド・パーマー招待までの7試合ですべて予選通過。うち4試合でトップ10フィニッシュです。ザ・プレーヤーズ選手権で30位タイ、マスターズは予選落ちに終わりましたが、すべてが1ランクアップしたことは間違いない。いや、アマチュア時代のキャリアを考えればいよいよ本領発揮と言えるかもしれません。

ジョージア州メーコン生まれ、ジョージア大出身の36歳。大学時代は同級生のハリス・イングリッシュとともに華々しく活躍し、オールアメリカンには3度選出され学生最高の栄誉であるハスキンズ賞も受賞。10年には全米オープンでローアマに輝き、11年にはPGAツアーの下部ツアーのスタディオンクラシックで、史上2人目のアマチュア優勝を果たします。

プロ転向は選出されたウォーカーカップ終了後の11年。すると下部ツアーで2勝し、賞金ランク3位でPGAに昇格。ルーキーとして参戦した13年、開幕戦のソニーオープンでいきなり初優勝。14年のホンダクラシックではプレーオフでローリー・マキロイら3人を抑えて2勝目を挙げます。当時の印象は、地味ではあるけれど派手なことをやってのける、とにかくパットが入る選手、というものでした。順調な滑り出しに思われましたがその後は、〝実力のある中堅選手〟の一人に埋もれていった気がします。

シードを落とすことはありませんが、たまに上位に顔を出す程度でメジャーではなかなか活躍できない。当時のスタッツを見ると、かつて得意だったパットが悪すぎます。パーマー招待で勝った後の記者会見で、「何もかも見失って、何をしていいかもわからなかった」と当時の心境を吐露。

そこで救いを求めたのはシェフラーらを指導するパッティングコーチのフィル・ケニオンでした。ラインの読み方、アドレス、打ち方といった技術的なことだけでなく、「彼はボクの性格まで理解してくれるサイコロジストだ」と優勝後に絶賛していました。

昨年、初出場したプレジデンツカップではシェフラー、コリン・モリカワ、ザンダー・シャウフェレ、パトリック・カントレーの名前を挙げ「これまでどんな練習をしていたのか、YouTubeで見ていた選手にチームメイトとして直接アドバイスを受けられた」と喜びます。

そのキャリア、実績、年齢を考えれば、年下にアドバイスを受けるのはプライドが許さない、そんなアスリートは多いはず。ですが、世界ランク7位となり、「自分をトップ10の選手だと思うか?」という記者の意地悪な質問に対し、穏やかで冷静で自然に受け答えるヘンリー。「今のツアーにはすごい選手がいっぱいいるからね」。

ちなみにパトリック・リードは、14年のWGCで優勝し世界ランクが44位から20位に上がったとき「俺は世界のトップ5」と豪語してひんしゅくを買いましたが、一流アスリートにはこのタイプが多いことは間違いありません。

ジョージア大時代のコーチのクリス・ハックは、ヘンリーに「毎日コツコツ練習を重ねて大学の試合に出ていれば、4年経ったら自然と上手くなってるから、余計なスウィング改造をしたりしないほうがいい」とアドバイスし、今でもコツコツと毎日同じような練習をするスタイルでやっていると言ってました。

今シーズン、ヘンリーも含めジョージア大出身は4人勝っていますが、そうした指導方針が今に生きているのかもしれません。とかく新しい打法、練習法、道具に目を奪われがちですが「継続は力」。アマチュアも見習うべき点でしょう。

◆参考ポイント=一度ターゲット方向に体を回す"始動"でスムーズに

画像: ヘンリーのアプローチの"足"の使い方に注目。一度ターゲット方向に体を回す"始動"で動きがスムーズになるという

ヘンリーのアプローチの"足"の使い方に注目。一度ターゲット方向に体を回す"始動"で動きがスムーズになるという

「ヘンリーがコツコツとやっている練習が、60Yから140Yをキャリーで5Y刻みに打つもの。自分のキャリーを知ることは大事。アマチュアは10Y刻みでよいのでトラックマンなどの設備がある場所ではそれを利用し、看板などまで距離計でしっかり測ってキャリーで練習したほうがいいです。距離計がないならぜひ買いましょう。また、アプローチで構えたら一度ターゲット方向に体を回して、それをきっかけに始動します。アドレスに入るとボールとにらめっこして固まるアマチュアは多い。取り入れてもよい"始動″です」(佐藤プロ)

※週刊ゴルフダイジェスト2025年5月6日号「さとうの目」より

ジョージア代出身プロたち

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