デービス・トンプソンはプロ2年目、ジョージア大出身の25歳です。
世界アマチュアランキングで1位に輝いたこともある彼は、21年から始まった「PGAツアーユニバーシティ」の特典の1つ、QTファイナルからの参戦を利用しコーンフェリーツアーの資格を得て、昨年ルーキーイヤーで早くもPGAツアーのシード権を獲得。
優勝するまでに2位が3回と実力を見せつけ、期待通りに初優勝を飾りました。実は今回のジョンディアクラシックで、ある"3連覇"も達成されました。
22年のJ・T・ポストン、23年のセップ・ストラカ、そして今年のトンプソンは、同じ一軒家を借りて大会に臨んでいたんです。メディアからは「トロフィハウス」と呼ばれています。
さて、彼の特徴は、すべてが平均以上のスタッツだけでは語れません。というのも彼はラウンド中にはまったく笑わず、キャディとすらほとんどしゃべらない、常ににらみつけたような表情で、怒っているのかと思うほど戦闘モードの様子を見せる選手なのです。
優勝した試合、最終ホールでグリーンに上がった際に少し頬がゆるんだものの、ウィニングパットを決めるまでは笑顔はなし。
「彼と交わした言葉は、スタート前の"おはよう"だけ」と言ったのは同組で回った選手のキャディ。89年の全英オープンチャンピオンのマーク・カルカベッキアには、「ジョンディアクラシックを見続ける唯一の理由は、トンプソンに歯があるかどうかを確かめるためだ」とツイートされる始末です。
そのプレースタイルには、賛否両論あることも事実。ただ近年"お行儀がよい"選手ばかりが増えたPGAツアーにおいて、こういう選手がいてもいいし、このままで突き進んでほしいと思います。
ジョージア大出身のプロは多いのですが、先輩のケルシー・ミッチェルは「彼の言動はコースの中でも外でもプロフェッショナル」と言い、また同じくブレンドン・トッドは「彼は必ず近い将来メジャー優勝するだろうし、ライダーカッパーになることは間違いない」と評す。
その言葉はトンプソンの負けず嫌いからくる強さを知るからこそでしょう。ジョージア大には、全アスリートの中で学業での成績最優秀者に贈られる賞があり、トンプソンはこれを受賞。
同大コーチのクリス・ハックは、「文武両道の選手は何人も見てきたが、その中でトンプソンの右に出る者はいない」と。190㎝の長身。高校時代はバスケットの選手で、チームを州チャンピオンに導きました。その原動力は自ら認める負けず嫌いの性格であり、スポーツも勉強も"勝負事"になってしまうようです。その意味でもトンプソンの試合中の表情は楽しみだし、やがてPGAツアーの名物となるかもしれません。
ジョンディアクラシックは、若手選手の登竜門的な大会。この大会で初優勝したペイン・スチュアートをはじめ、ジョーダン・スピース、ブライアン・ハーマン、ブライソン・デシャンボーは、いずれも後にメジャーチャンピオンに輝いています。
トンプソンもこの流れに続く一人になりそうですね。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年8月20&27日合併号「さとうの目」より