中嶋常幸が主宰する「ヒルズゴルフ トミーアカデミー」の第7期生選抜テストが17日、茨城県の静ヒルズカントリークラブで行われた。中学1年生から大学2年生までの114名(男子48人・女子66人)が参加した。
画像: 選考会でジュニアゴルファーのスウィングをチェックする中嶋常幸

選考会でジュニアゴルファーのスウィングをチェックする中嶋常幸

「トミーアカデミー」は2012年に誕生したジュニアアカデミー。主宰する中嶋常幸は「世界に出て活躍できる日本人を育てよう」という目標を掲げ、第1期から第6期までに212人が学び、畑岡奈紗や河本結ら23名(女子プロ18名、男子プロ5名)のプロゴルファーを輩出している。

●昨年は7人の女子プロが誕生!

画像: 昨年7月、プロテスト前に中嶋から指導を受けた中村心と入谷響(ヒルズゴルフ トミーアカデミー提供)

昨年7月、プロテスト前に中嶋から指導を受けた中村心と入谷響(ヒルズゴルフ トミーアカデミー提供)

昨年のプロテストでは都玲華、入谷響、中村心、山口すず夏、前田羚菜、六車日那乃、平塚新夢の7名が合格。21名の合格者の実に3分の1をトミー門下生が占めた。ルーキーとして今季ツアーデビューした入谷と中村はスタジオアリスで優勝争いもしている。主宰コースの季刊誌「HILLS GOLF」にも中嶋から指導を受ける2人の姿が掲載され。昨年7月プロテストを受験する前の入谷と中村がトミーアカデミーの体験を語っていた。

今季ドライビングディスタンス1位の飛ばし屋の入谷は「中嶋プロのワンポイントアドバイスは、発想が変わるので、プレーの質がすごく広がっていきます。合宿が終わってからもノートを見直したりとかして、自分でどんどんつなげていけるのですごくいいです」と中嶋からヒントを得た。中村も「試合で緊張して思うプレーができずに悩んでいたとき、中嶋プロから『緊張は悪いものではない。誰ででもあるもの』と言っていただき、緊張は悪いものではないと認識できたので、それからは気持ちが楽になりました」と技術面だけでなくメンタル面での指導も受けていることがわかる。

●「あの子もアカデミー生なの?」って言われるようになった

画像: スウィングをチェックしながらメモを取る中嶋

スウィングをチェックしながらメモを取る中嶋

23人ものプロを輩出した中嶋とトミーアカデミーの指導法は気になるところ。選考会の合間に中嶋がアカデミーへの想いと子どもたちへの教えを語った。

――3年ぶりの開催で今回初めて選考会が公開されました。

今までメディアに出す気持ちはなかったんだけど、そろそろ出してもいいかなと思ってね。アカデミー生がプロになって活躍するようになって、『あの子もアカデミー生なの?』って言われるようになった。やっぱり(アカデミーが)周知してないから。卒業生の人たちの活躍を少しでも知ってもらって、アカデミーに入って勉強したいっていう子がいればなと思って。窓口を広げようと開催しました。

――昨年は7人の女子プロが誕生。

(活躍するプロが増えて)ちょっと見てもらおうとか、練習に来ていいですかという人もいる。アカデミー生じゃない人を見ることもある。アカデミーを知りたいって子がいます。

●いろんな上達の仕方があると思う。アカデミーもそのひとつ

今回の選考テストは中嶋自身とスタッフがドライビングレンジでショットをチェック。アプローチ、アイアン、ドライバーショットを生で見て、チェックリストにペンを走らせていた。

――今回の選考会で子どもたちを見た印象は?

ほとんどの子が基本ができている、意外とお父さんにならっている子が多い。自分も23歳まで親父に倣って、プロコーチについたわけではないし。ただ、誰に習うかというのはポイントだと思う。いろんな習い方がある。お父さんやお母さんでも問題ない。地元の指導員みたいな方でもいいし、しっかりコーチに習ってもいいし、いろんな上達の仕方があると思う。アカデミーもそのひとつ。上達していくためのひとつの方法になっている。アカデミーに入らなければ強くならないというわけではないし、アカデミーに入って何かを勉強できればもっといい。

――今回の合格者は?

20人くらいを目途にプラスアルファ、4~5人かな。

――選考の基準はフィジカルと技術的な部分?

今日のデータを取って、夜遅くまでどうしようと(検討)。完全に通る子はいい。どうかなっていう子についてみんなで考える。

●「6球で失神するつもりで打て」

中嶋はドライバーショットを見る際に「6球で失神するつもりで打て」と子どもたちに声をかけていた。

――やっぱり振ることが大事?

若いうちに振れないと、男子は25歳を過ぎて飛ばし屋になろうとしても無理だし、振れるうちに振っておかないと飛距離は出なくなる。振れる体を作ることも大事。振れる次にコンスタントに打てる技術。まず振るってことができないと。

――振れているかどうかがチェックのポイント?

今振れなくてもこの子は振れるようになるな。きっと振れる人間になるな、と思える子。もうひとつはトレーニングについて来れるかなということを見る。トレーニングは厳しいから、トミーアカデミーのトレーニングについて来れる体、あるいは精神があるかを見ている。

●トレーニングについて来させるのも我々の仕事

画像: 立幅跳びや腹筋、バランスなどを飯田光輝トレーナーがチェック

立幅跳びや腹筋、バランスなどを飯田光輝トレーナーがチェック

松山英樹のトレーナーでもある飯田光輝さんが体力面や運動能力をチェック。立幅飛びや腹筋などで瞬発力をチェック。中嶋はトレーニングの重要性にも言及した。

――フィジカルとかトレーニングについてどうを見ている?

(気持ちが)前のめりに出てくる。テストをうけながら、体のなかに情熱が見えるか見えないかを、感じることができる。(中嶋プロが)トレーニングについて来れるかって言ったけど、ついて来させるのも我々の仕事、役目だと思っている。ついて来れるかどうか微妙なところを支える。たとえば小滝水音なんかは努力家だった。ついて来れなかった。でも情熱的にはついて来れる。ほかの選手ができているんだからお前も頑張れよじゃなくて、お前のできる範囲でもいいからきっちり全部やれ。ついて来れなくても来させる努力が我々に必要。今日テストを受けに来た子はみな情熱がある。ほんとはみんな入れたい(合格させたい)けど門が狭ければ頑張るじゃない。限定された学校にしたい。

●基本はドロー。フェードをもうひとつの武器にする

画像: トミーアカデミーの基本はドローボール

トミーアカデミーの基本はドローボール

ゴルフアカデミーといえば、やはりスウィングや技術の指導法は気になるところ。中嶋はどんな点にポイントを置いているか。

――スウィングについてどう教える?

こう振ったほうがいいよという、自分の経験値で教えている。ヒントだよね。こう振ったほうがいいんじゃないか、その理由はこうだよ、と。理由を言わないといけない。こういうふうに振ったほういいよ、こういうふうにトレーニングしたほうがいいよ、こうやってつなげたほうがいいよって。それを本人たちが咀嚼して栄養にする。

――メカニックを教える?

こすりボールでスライス打ってて損してる子がいる、でも安定してると周りは何も言わないかもしれない。でももしドローで厚い球が打てたら、その子にとってもいい素材が入る、戦う武器が増える。ほんとのドローを打つためには苦しいし、時間がかかる。それを見てあげて、1年2年かけてほんとのドローが打てるように教えていく。そうすると次にフェードを打とうとするときにラクなのよ。いいドローが打てなくてフェードを打ってもそれはこすり。厚さのないフェード。厚いフェードを打つためにドローを練習する。うちの基本はドロー。しっかり厚いインパクトを作って。フェードをもうひとつの武器にする。

――メカニックを教える意味。

試合でやる難しさがわからないと、試合でできません、となる。入谷響はドローが打てなかった。全部フェード。今でもフェードが得意だけどね。小6から来てて、来るたびにドローと言い続けた。インパクトが厚く当たるようになるからねって。ドローも今は打てる。攻めるうえではフェードがメインだけど、ドローも打てるからいいフェードが打てて飛距離が出るんだよね。本人はいいフェードでしょっていうけど、ドロー打てなかったらフェードっていうなよって言われて、ドローを打てるようにかなってから、いいフェードになっていく。アカデミーの大事な柱。構えをよくしてドローを打てるスウィング作りをやっていくことで、レベルが上がっていく。ナチュラルドローヒッターもいる。(畑岡)奈紗みたいにね。蛭田(みな美)にしても小滝にしてもね。小滝はこすりフェードだった、相当ドローを練習した。打てるようになって、自分たちが工夫していくものと、トレーニングを結びつけていってポーンと活躍できる。結局インパクトの厚さを作るためにやっている。

●「強く、やさしく」がアカデミーの副題

画像: 技術やフィジカル以外にも「強さとやさしさ」を教えるトミーアカデミー

技術やフィジカル以外にも「強さとやさしさ」を教えるトミーアカデミー

中嶋はアカデミーを始めるにあたって、「やさしい選手になってほしい」ということをインタビューで語っていた。

――スウィングやフィジカルのほかに世界を目指すには「やさしさ」も必要?

やさしい前にひとつある。『強く、やさしく』。やさしいだけんじゃないんだよ。強くなければ生きていけないし、やさしくなければ生きていて面白味がない。アカデミーの主題は『世界に出て戦える選手』なんだけど、副題がある。副題は『人に対してやさしくなれる』だ。ということは自分を強くしましょう。強くなればやさしくなれる、強くならなければやさしくなれない。

――「副題」を考えるようになったきっかけは?

「(アカデミーを始める前に)森ビルの森稔社長といろいろ話をしながら、世界に育つ選手が出たらいいですねって話をしてた。それでやりましょうとなってアカデミーができたんだけど、ちょうどそのころ中学生の自殺が多かった。なんで中学生で自殺するんだよ。自殺はその前からもあったけど、それが結構多かった。
死んでもらっちゃ困る。いじめられて死ぬって子が多かった。いじめって、どの時代でもある。どの世代でも大人でもある。子供だけじゃない。だったらいじめられても負けない子になろうよというのがあって。それで副題にした。

●あの子たちは、攻め続ければ勝てる素材

「強さ」と「やさしさ」、そんなメンタルティを学んだ卒業生で、前述した入谷と中村の2人はルーキーながら富士フイルム・スタジオアリスで、優勝には届かなかったものの優勝争いを経験した。

――ルーキー同士の優勝争い、気持ちの強さが必要?

「最後まで攻める気持ち、攻めるゴルフをすること。ゲームっていうのは優勝できそうと思った瞬間が一番やばい。集中が途切れやすい。とらぬ狸の皮算用だね。あそこでパーでできればバーディでって計算しちゃうのがよくない。バックナインに入っても攻めること。野球で次の塁を狙えっていうように、ゴルフも次のバーディを狙うこと、それをやり続けていけば、あの子たちは勝てる、それだけの素材だと思う。

――ふつうにやれば勝てた?

ふつうが、そのふつうにやればっていうのが一番の誘惑のミソ。攻め続けてこそ。

――入谷プロなど卒業生とLINEなどのやり取りをしてる?

みんな卒業してもいい子。迷ったら連絡は来るし、頑張ったなっていうと返事が来るし。優勝したらコンペしようねって話してる。

第7回目の選考テストでは20~30人が合格となる。

技術、フィジカル、メンタル、思考……といろんなことを学ぶことができるゴルフアカデミー。合格後、子どもたちは、プロゴルファーを目指して夢の道に進んでいく。

トミーアカデミーの取り組みと選手たちの活躍ぶり

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