飛距離では負けない

Zスターの前身、Z-URシリーズからボール開発に携わる神野一也さん
スリクソンZスターが登場したのは2009年。「入社して間もなく携わったのがZスターの前身、Z-URの開発でした」とはゴルフボール技術グループの神野一也さん。
初代Z-URの発売は2005年、「〝飛距離では絶対に負けないツアーボール〞がポリシーでした。
当時、加瀬秀樹プロや星野英正プロが『飛んで止まって打感もいい』と、プロの信頼も厚くなっていきました」(神野さん・以下同)。
その後、Z-URCというモデルが加わり、ジム・フューリックが使用。「フューリック選手がこのボールで準メジャーのツアー選手権を制した時は『世界で勝てるボールになった』と喜んだことを覚えています」
2009年、ネーミングを一新、Zスターシリーズが登場。ZスターとZスターXの2モデルで、テストしたプロの評判も上々だった。Zスターからシーム(表面中心の線)が消え、シームレスディンプルになった。
2010年にXVが追加、2011年からはZスターとXVの2モデル体制に。
「契約していたヘンリク・ステンソン選手に『とにかく飛ぶボールが欲しい』とリクエストされ、彼に向けて仕上げたのがXVでした」
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの石川遼が、数多のツアーボールを試し、その中で最も飛んだXVを選んだというエピソードも残る。
「初代のコアは1層でしたが、2代目に2層コアになります。2層の調整でスピンを抑えるという考えです。コアが劇的に変わったのが2023年の8代目から。1層のまま硬さを2段階に調整できるDGコアが完成し、さらに最適化したのが現行9代目。XV、Zスター、2021年に加わったダイヤモンド、それぞれDGコアをアレンジしています。例えば、ダイヤモンドはロングショットのスピンを担保するアレンジです」

兵庫県丹波市市島町にある住友ゴム工業のスポーツ総合開発センター、ゴルフ・テニス科学センター。同じ敷地内にスリクソンやゼクシオなどゴルフボールの製造工場がある。稼働開始は1994年

天然芝の巨大なテストフィールド
山間に広がる同敷地には全長400ヤード、全幅75ヤード、天然芝の巨大なテストフィールドがある。両サイドから対面打席で打つことが可能。松山英樹をはじめ男女プロの多くがニューモデルのテストに訪れる

製造工程のひとつ。ボール表面に高分子材料を配合したコーティングを吹きかけている。スピン量と打感に関わるこれも大事な工程

Zスターなどのコア・ミッドレイヤー・カバーによる3ピースボールだけでなく、2ピースボール、練習場で使われる1ピースボールもここで製造されている

各ボールの製造は機械化、デジタル化が進み、高い精度で生産されるが、最終の検品は人の目と手で行う。ここで弾かれたボールは分解されて、可能な限り元の製造ラインで再利用される

検品を終えたXV。Zスターシリーズのカバーについて、「現在は高スピンバイオウレタンカバーという素材を使っています。カバーは0.1ミリ単位でスピン性能がまったく変わり、現行のZスターとダイヤは0.6ミリ、XVは0.5ミリです」(神野さん)
ディンプル数は338個。これは3モデルとも同じで5代目から配列に変化はない。