「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

PWが姿を消し、ウェッジが4本になるのは時間の問題

GD 男子ツアープロのクラブセッティングについてお聞きします。サムネイル画像は「週刊ゴルフダイジェスト」(7月11日号)の表紙ですが、マキロイのクラブが写っています。よーく見ると、4番アイアンは2018年モデルの『P760』が入っています。

長谷部 ドライバーとパター以外のところのバリエーションがかなり出てきていて、「5W」の普及は男子ツアーでも浸透していますし、先日シェフラーが「7W」を駆使してミュアフィールドに勝ったりすると、5Wを中心にしたウッド展開になることも考えられます。

アイアンは5番が一番頭になって、マキロイのように5番アイアンの上を中空アイアンにしたり、ユーティリティにしたりという組み合わせが見受けられるようになりました。

GD これはアイアンのストロング化、ツアーモデルといえどもロフトが立ってきていることが影響しているんですか?

長谷部 それはあると思います。昔はプロモデルのほとんどが7番アイアンで「34度」だったのが、今だと平気で2度ぐらい立っていたりするものもたくさん出てきています。5番アイアンもストロング化していることを考えると、アイアンのロフト間隔が少し広がってアイアンの位置付けが少し飛距離を求める方向にスライドしている気がします。

GD ウェッジに関しては、タイガー・ウッズがきっかけだと思うんですけど、タイガーのアイアンのロフトはずっと変わっていません。PWが50度で、その下が56度。なんとなく昔のなごりを頑なに守っている感じがします。とはいえ、上の方は5Wを入れたり、さすがにウッド型ユーティリティを入れてるのは見たことはありませんが、アイアン型ユーティリティを試したりしています。

長谷部 タイガーの場合、ロングアイアンに関しては中空キャビティなどいろんなものを試すことがあったので、ハイブリッドを入れることがあったとしても、今は5Wを定着させている感じがします。

GD ウッドは1番、3番、5番。アイアンが3番からPW、56度と60度のウェッジ2本にパター。このタイガーのセッティングは、一時代前の構成のような気がしますね。

長谷部 かなり古いですね。タイガーは最新モデルを使わずアイアンも完全にカスタマイズされた自身のモデルを使っていることからしても、ロフト設定が特殊というか、頑なに昔のロフト設定にこだわりがあることがわかります。

GD 松山英樹もそうですが、PWを抜いてギャップウェッジを入れるプロが増えています。

長谷部 PWの位置づけが、フルショットから完全にアプローチショット、コントロールショットを中心に考える流れになったと思います。7番アイアンのロフトが立ってきて、PWもそのまま立ってくるとフルショットにしか使えないクラブになってきているんじゃないでしょうか。そこで考えたのが46度、47度ぐらいのギャップウェッジ。

GD それはコースとのマッチングですか?

長谷部 どうなんでしょうね。ピンを狙う距離の残し方との関係ももちろんあると思うんですけど……。

GD ドライバーが飛ぶようになってコースが短くなってきたため、PWよりもスピンが入るギャップウェッジを選ぶということを聞きますが?

長谷部 いわゆるアイアン形状の流れのPWだとヘッドが小ぶりになってくるし、スピンはロフトなりにかかるんでしょうけど、ウェッジ形状のクラブはフェース面積が大きくなるため、重心も高くなる。そのためスピンはかけやすくなります。フェースを開いたり閉じたりということも含めて、スピンコントロールを意識したショットを目指しているような気がします。

「PGAツアーからの影響で……」となれば、コースコンディションやコースセッティングがハードだから止めたい。100ヤードを超えてでもそういったコントロールショットを打ちたいということになっているんじゃないですかね。

GD PWを抜くことは、まだ日本のツアーでは少数派ですが、PGAツアーの影響を受けてくると、いずれ日本でもPWが姿を消す可能性があるような気がします。

長谷部 そうなるでしょうね。特にこだわりのあるプロは「PWだけノーメッキにしてくれ」というオーダーをしているのを見ると、もう完全に特殊なクラブになりつつある。そうだとするとロフトだけの表示のウェッジに切り替わるのも時間の問題だったりするのかなって思います。宮里優作プロはノーメッキの理由を「ボールが滑らないようにするため」とYouTubeで語っていましたが。

GD 56度はロングバンカーショットなど使い勝手がいいクラブだと聞きます。クラブ構成の下の部分は「52、56、60」に46度、47度付近のギャップウェッジに固まりつつあるように見えるんですよね。

長谷部 最近はローバウンスのいわゆるロブショット用のウェッジが定着しつつあることを考えると、下が決まってくるわけですから、その上のロフト間隔が4度とか5度に設定してくれば、いずれ4本ウェッジが定番になるでしょう。

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