今週、米LPGAのメジャー「アムンディ・エビアン選手権」がフランス・エビアンリゾートゴルフクラブ(6507Y・P71)で開催される。今年LET(欧州女子ツアー)に参戦している上原彩子が、アメリカツアー時代から何度もラウンドしてきた本コースを解説!

大会コースのエビアンリゾートGCは5月のシャブラ女子オープンで回ったばかりの上原。まず注目するのは“コースの傾斜”。

画像: 22年のアムンディ・エビアン選手権にて。つま先上がりの傾斜がずっと続く(撮影/姉崎正)

22年のアムンディ・エビアン選手権にて。つま先上がりの傾斜がずっと続く(撮影/姉崎正)

「フランスのコースはどこもそうだと思いますけど、全体的にかなり傾斜があるホールが多いんです。フェアウェイにアンジュレーションがあるというより、ホールによって右から左、左から右という傾斜です。ですから、マネジメントをしっかりして、次はどこから狙うかということを決めながら組み立てていかないといけないコースです」

今年、距離は6504ヤード(パー71)となった。

「距離は年々伸びている印象です。5月の試合(6264ヤード)のときにも感じましたから。(宮里)藍ちゃんが、米LPGAで勝ったときの距離と比べると年々伸びていて、藍ちゃんがミーティング委員長をしていた際、コースセッティングの変化の話をしていまし」

宮里藍はメジャー競技になる前の2009年に、ここで米ツアー初優勝を飾った。あのときは、6373ヤード、しかもパー71だった。

「このコースでもパワーゲームになってきている感じはあります。最近の若い選手はみんな飛びますし。でも、飛距離は必要ですけど、実はその後の勝負だと思います。6500ヤードはもちろん長い。でもショットの正確性、そして距離のコントロールがすごく大事になる。たとえば私が難しいなあと思う10番・パー4(欧州ツアーでは385ヤード、今週は417ヤードに)。右ドッグレッグで左側は全部林、右側に大きな木がある。絶対に左のフェアウェイに置いておかないとセカンドは右の木が邪魔で狙えないのですが、地面が右に傾斜していますし、すごく狭く感じるんです。ただ、飛距離が出る選手が、木が関係ないところまで飛ばせたら問題ないかもしれないですけれど……」

画像: 上原のヤーデジブック。「16番は丸の3面のイメージです」

上原のヤーデジブック。「16番は丸の3面のイメージです」

キーとなるホールは16番・パー3(欧州ツアーでは151ヤード、今週は155ヤード)を挙げる。

「上がり3ホールの入口ですし、大事なホールの1つだと思っています。距離は150とか160でそこまで長くはないんですけど、横に細長いグリーンで、一番下に一面、右に一面、左奥に一面といった丸い3面がある感じ。手前は全部池で奥にはバンカーがあります。風もけっこう吹くイメージ。だから、しっかりどの位置に打っていくかを考えないといけません。どこに、どういう球筋で落としていくかの見極めと、キャリーの距離の正確性が必要。池がすごく効いていて、グリーン左サイドは難しいから特に左ピンのときなど、私は結構クラブ選択を迷います。優勝争いに絡んできたりしたらまた別の要素も働くと思いますし」

特にメジャーのセッティングであれば、グリーンのスピードは速くなる。

「傾斜を上手く使ってピンに寄せられるかどうか。それができればチャンスに付く可能性は大いにあります。でもちょっと判断を間違ったらボールが止まらない場所に行ってしまったり、すぐにボギー以上にもなるホールです」

昨年の本大会では、日本の古江彩佳がメジャー初優勝を飾った。

「彼女はやはり、正確性が高いので強いんです。ドライバーでも、距離はあまり出なくてもピンポイントで狙っていける。セカンド以降でも、打ちたい距離をしっかりそこに打っていける距離のコントロールが上手い。そこがめっちゃ強みです。それに、彼女はメンタルもすごく強そうですもんね」

このメンタルの強さ、フェアウェイの傾斜から打つときにも効力を発揮するという。

画像: 左足下がりのつま先下がりという複雑な傾斜からでも正確なショットを見せる古江(写真は22年アムンディ・エビアン選手権、撮影/姉崎正)

左足下がりのつま先下がりという複雑な傾斜からでも正確なショットを見せる古江(写真は22年アムンディ・エビアン選手権、撮影/姉崎正)

「前上がり、前下がり……とにかく傾斜から打つショットが多いんです。そうするとやっぱり集中力もなくなりがちですから」

上原は、何度もラウンドしたエビアンは好きなコースだと言う。

「私のゴルフの生命線はマネジメント。それが生かせるという意味でも好きです。ここに打つと、上手く傾斜で転がっていくという場所をピンポイントで狙う。それをイメージ通りに打てたら、なんだか面白いですし、楽しいですよね。そういうゲーム感覚があるコースです。ゲームの『みんゴル』みたいな感じ。やったことはないですけど(笑)」

メジャーには精神力が必要だと上原。

「もちろん、技術も体力もマネジメントも、そのときの調子も……全部がかみ合わないといけません。ちょっとでも何かが欠けたら、そこからどんどん振り落とされていくんだと思います」

みんなのゴルフダイジェストでは岩井明愛・千怜に注目!

では、今年出場する12人の日本人選手のなかで上原のいう、「ショットの正確性」があり「メンタルが強い」のは誰なのか。ここからは「みんなのゴルフダイジェスト編集部」がバトンタッチして執筆する。

「ショットの正確性」を示すスタッツとして、米LPGAでは「SG Tee to Green(ストロークドゲイン・ティー・トゥ・グリーン)※1」を使用することが多いが、「SG Around the Green (ストロークドゲイン・アラウンド・ザ・グリーン)」は30Y以内のアプローチの貢献度を示す値なので、「ショットではない」という見方もある。
※1「SG Tee to Green」とは、ティーショットの貢献度を示す「SG Driving(ストロークドゲイン・ドライビング)」、50Y以上のグリーンを狙うショットの貢献度を示す「SG Approach(ストロークドゲイン・アプローチ)」、30Y以内のアプローチの貢献度を示す「SG Around the Green」の合算で、コースのグリーン以外のパフォーマンスで、どれだけストロークをゲインしたかを表す。端的に表すと「ショットのスコアに対する貢献度」がわかる指標

そこで、2025年米LPGAツアーが公表している「SG Tee to Green」から「SG Around the Green」を除いた独自スタッツ「50ヤード以上のショットにおけるストロークドゲイン」を算出。この数値はティーショットを含むので、総合的なショットの貢献度を示すことになる。

画像: 左上から時計回りに西郷真央、岩井明愛、岩井千怜、畑岡奈紗。日本が誇る「ショットメーカー」だ

左上から時計回りに西郷真央、岩井明愛、岩井千怜、畑岡奈紗。日本が誇る「ショットメーカー」だ

1位はユ・ヘラン(韓国)の「2.19」で、2位は世界ランク1位のネリー・コルダ(米国)の「1.92」、3位はユン・イナ(韓国)の「1.77」で、4位は日本人トップとなる竹田麗央の「1.74」になる。他の日本人選手で上位に位置するのは、8位の岩井明愛(「1.36」)、14位の畑岡奈紗(「1.11」)、23位の岩井千怜(「0.91」)。「ショットの正確性」で考えると、竹田麗央、岩井明愛、畑岡奈紗、岩井千怜に注目だ。

ちなみに、岩井姉妹は「ドライバーが飛んで、基本曲がらないのでアグレッシブに攻めていけます。ティーショットで飛ばして、セカンドよりグリーンを狙っていけるぶん、チャンスが多くなる実感はあります。特にパー5でバーディを取れる確率は高い」と明愛が言えば、千怜は優勝したリビエラ・マヤオープンで「ドライバーを打った後の残り距離が想像以上に短いというか、パー5でも自分が思っている以上に飛んでいました。2オンをたくさん狙い、実際2オンもできたし、たまに300ヤードくらい飛んだ」と米ツアーでもドライバーが武器になっていることを実感している。

また、上記4人は米ツアー参戦1年目から結果を出しており、異なった環境でもすぐに適応し、自身の力を発揮できることから、「メンタル面が強い」ことに異論はないだろう。なかでも、岩井姉妹は、千怜がツアー初優勝を飾った際、普通の選手であればプレッシャーに潰されかねない状況で、彼女は「ゾクゾクする」と表現し、楽しんでいるかのようだったし、明愛も「プレッシャーを感じた時にこそ、最高のパフォーマンスを出せる」と話したことからも、プレッシャーを成長の糧とし、勝負所でこそ真価を発揮するタイプと言えるだろう。

今年は竹田、岩井姉妹、畑岡をはじめ、日本選手は12人出場する。昨年の古江彩佳のように、きっと、また誰かが活躍してくれるに違いない。

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