
「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」優勝の柏原明日架(撮影/大澤進二)
両親、キャロウェイ、インストラクター……、サポートに感謝

涙する柏原(撮影/大澤進二)
最終18番で80センチのウイニングパットを沈めると、柏原はボールを拾った左手を高々と突き上げて喜びを表した。それから大勢のギャラリーに向かって右手を振り、ぺこりとおじぎをして感謝の気持ちを伝えた。アテストへ向かう途中では、待ち受けた父・武道さんと歓喜の抱擁。肩を抱かれて祝福されると、こらえ切れずに熱い涙を流した。
「(ウイニングパットの瞬間は)長かったなと思います。(最後の優勝から)6年以上経っているように感じましたし、コロナもあり、無観客の大会があった。いつも両親がサポートしてくれていましたが、大会に来ることができなかったりしました。そういう中でよく頑張ってこられたなと思います」
ルーキー寺岡と首位に並んで最終組でスターし、2番で4メートルのバーディパットを沈めていい流れに乗った。8番はグリーン右エッジから13ヤードのアプローチを48度で転がしてチップインバーディ。10番は3メートルのパーパットを決めてピンチをしのぎ、15番は5メートル、16番は4メートルを入れてスコアを伸ばした。
「(今日は)パットが決まってくれたのが大きかった。自分自身パットが得意な選手だと思ってはいたけど、なかなか試合で生かしきれないことが続いていて、ショットが安定すれば順位が上がってくると思っていたのに、今年ショットの調子が上がってもスコアに結びつかなかった。(用具契約をしている)キャロウェイさんやイントラクターさんがサポートしてくれたことが大きかったかなと思います」
森守洋コーチと深刻なスランプ脱出

森コーチとの出会いでスランプを脱した(撮影/大澤進二)
6年ぶり優勝までの道のりは険しかった。2022年、23年はシードを落とし、深刻なスランプを経験した。
「シードを落としたときは、自分自身もうはい上がっていけないんじゃないかと思った時期もありました。優勝するイメージが沸かなかった時期もありました」
そんなどん底状況で光を与えてくれたのは、プロコーチの森守洋氏だった。
「森さんは言葉に表すと楽観的な人なのでアバウト。(父と)私は細かくていろいろと気にしてしまうタイプなのですが、森さんが加わったことで、森さんの真逆の思考が入ってくることによって、悩む時間が減ったと思います」
ゴルフどころ宮崎県出身で2014年に永峰咲希や堀琴音とともにプロテストに合格。来春には30歳の節目を迎える。10代の若手の躍進が目立つ女子ゴルフにあってはベテランの域に入るが、まだまだ簡単に道を譲るつもりはない。
「中堅、ベテランだからこそできるゴルフがきっとあると思っていた。今年はほぼ(去年の)トップ5の選手がアメリカに行っている中で、レベルが高くなった(日本)女子ツアーでどれだけできるのか、どれだけ上に食い込めるのかということを考えることができた。そういう考えはプロ12年目の今だからこそできることなんじゃないかと思います。今年は(所属契約を結んでいる)富士通さんの大会で勝ちたいです。大東建託(いい部屋ネットレディス)で(所属の渡邊)彩香さんが優勝しているのを見てめちゃめちゃカッコいいなと思ったんです」
今年の富士通レディスは10月17日に千葉県・セブンハンドレッドCで開幕する。その舞台で再び柏原が主役を張ることができるか―。