「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する連載。今回はレッスンプロ70歳の夏、前編。
8月28~29日に岐阜・恵那峡CCで行われた「JAPAN WR4GD TOUR SERIES」の「東海マスターズWR4GDカップウイーデイシリーズ」。ここに古希を迎えた小林茂さんの姿はありました。灼熱の埼玉を朝4時に出発し、車を飛ばして猛暑の岐阜へ。
「前回の大会は土日だったので仕事があって出られませんでした」
小林さんは埼玉の練習場でレッスンプロとして生計を立てています。日曜日はレッスンがびっちり入っているのです。
「でも、世界ランキング対象の試合が増えるのはいいよね。お金かかるけど(笑)」
いつも明るい小林さんは、いつも前向きな発言をくれます。
「世界の大会にも、もちろんまた行きたいよね。海外は勉強になります。今さら勉強ということもないけどさ(笑)……いろいろな選手の打ち方を見て、その芝に対してどういうふうに打ったらいいのかなんて、すごく参考になるよ」
世界大会の経験も豊富な小林さん。70歳を迎え、ますます向上心が旺盛のようです。小林茂さんは、棒高跳びの有望選手でした。
「県大会なんかに出ていたよ。体幹、筋力はもちろん、スピードやタイミングがすごく必要。道具も使うしね。だから僕、普通の人よりは背筋はあるのかな」とプチ自慢。しかし高校1年の夏休みの練習中、ボックスにひざから落ちて「ひざが粉々になった」のです。そのときに体に入れたドイツ製の人工関節は、50年間、小林さんの人生を支えてくれました。

常に人を観察し、その動きを取り入れ、工夫している小林さんの力強いスウィング。「最近体が回らなくなって。でも諦めないよ」
「退院してテレビでゴルフを見て、『これは面白そうだ。これかだはゴルフだ!』と思って始めました。ジャンボより前の時代です」
パーシモンのクラブ、スモールボールの時代、近所の大学のグラウンドで朝、こっそり練習していたそうです。
「400mトラックの芝の上で。今なら怒られちゃうよね。ゴルフ部があったのでネットも張られていたんです」
めきめき上達。初ラウンドはハーフで56、4カ月で30台を出し、今に至るまで60台は打ったことがないそうです。そして、地元の練習場で働くようになります。小林さんは5年前にアメリカの試合に行ったとき、人工関節が痛くて歩けなくなりました。ラウンドは何とか終えましたが、自力で飛行機にも乗れず車椅子で帰国。病院で50年ぶりの手術を受けます。

イギリスのウォーバーンGCで行われた「the G4D open」にも昨年出場(左から2番目)。日本代表として誇らしげです
「最新のものに変えました。先生が僕の中に入っていた人工関節について、『これは日本で2つしかないうちの1つで、とても貴重。僕にください』とニコニコして言うんだよ。そこからは痛みもなくなり、18ホール歩けるようになりました」
痛みとの闘いから解放され、また自分との闘いにまい進するようになった小林さん。猛暑の今夏も、鹿沼プレミアムGCや栃木ヶ丘GCで毎週ラウンドに励んでいます。
「ここらへんの暑さはヤバいですよ。毎日暑い。対策は、よく寝ること、しっかり朝ごはんを食べることかな。たいしたものは食べてないけど、お米を食べることが大事です。足の調子がすごくいいので、暑いけど、なるべく歩いてカートに乗らないように努力しています。水分はきちんと摂っていますよ。今は炭酸水が多い。以前スウェーデンの試合に行ったとき、普通の水がないから炭酸水を飲んだら好きになっちゃって。お水より疲れないような感じがするんですよね。炭酸水にレモンを入れて、500mlで2本くらい飲んでいます。でもやっぱり、年も年なので、運動神経みたいなものも悪くなってくるし、目も悪くなるからパターが下手になる。体の柔軟性がなくなって体が回らなくなるから、小さいスウィングで打っちゃうんだよね。だから、飛距離も落ちる。一生懸命回るようにしているんですけどね」

実は、パッティングやアプローチといった小技が得意な小林さん。“職人”が教えるレッスンは、次回この場でお伝えします!
年齢とともに体は変わる。だからこそ、今までとは違う、今の自分に“必要なこと”をやらないといけないと言う小林さん。
「諦めるんじゃなくて、工夫したらできるようになるんですよ」
イケてる70歳のイケてる工夫は次回に続きます。さて、今回の試合前に「この試合にも優勝したいけど、そういうふうに書かれると恥ずかしいなあ。でも別にいいよね、目標なんだから」と言っていた小林さんの結果は、77・79で3位。優勝した吉田隼人プロとは4打差でした。「最後がボギー、ダボとよくない。パットがダメでした。また、ここからですね』。もうすでに次の目標に向かって気持ちは進んでいるのです。(次回に続く)
写真/増田保雄