ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、盛り上がりを見せたライダーカップについて語ってもらった。
画像: 「ギャラリーも含め熱狂できるのは、ライダーカップの歴史と伝統のなせる業。継続することの難しさと素晴らしさを感じます」(佐藤プロ)

「ギャラリーも含め熱狂できるのは、ライダーカップの歴史と伝統のなせる業。継続することの難しさと素晴らしさを感じます」(佐藤プロ)

第45回を数えるライダーカップは間違いなく歴史に残る大会となりました。これまで最終日のシングルスの大逆転劇は、99年のブルックラインで米国が4ポイント差を、12年のメダイナでは欧州が4ポイント差を。両チーム1度ずつあります。

今回、最終日のシングルスを欧州選抜が7ポイントリードで迎えます。そして逆転こそできませんでしたが、米国選抜があと一歩のところまで追い詰める手に汗握る展開になりました。シングルス11マッチで最終ホールまで進んだのが8マッチ、17ホールで決着したのが2マッチ。これほどの長丁場になった大会もありません。世界の名選手が国や地域の名誉と威信を懸けて戦う大会では、こうしたミラクルも起こり得るのだなと改めて思わされました。 

最終ホールでバーディパットを沈めた第1マッチのキャメロン・ヤング、第2マッチのジャスティン・トーマスの雄たけびがチームに勢いをつけると、続く第3マッチは7番まで5ダウンだったブライソン・デシャンボーがタイで0.5ポイントを獲得。すると絶叫して両手を広げてギャラリーをあおります。こうした場面がたくさんあったのも今大会の特徴でした。 

大会を迎えるまで主役の一人だったのが、米国のキャプテンを務めたキーガン・ブラッドリーでした。ミスターライダーカップとも呼ぶべき存在。前述の〝メダイナの奇跡〞ではシングルスでローリー・マキロイに敗れ、悔しさのあまり今も当時のスーツケースが開けられないでいることは、ここでも何度か紹介したエピソードです。 

そのキーガンに対して、2日目を終えると〝史上最悪のキャプテン〞といった辛辣な意見も、またギャラリーのブーイングややじも聞かれました。しかし最終日になると、いよいよあのスーツケースの中身が見られるのか……といった期待へと変わったのです。 

これから先のことは誰にもわかりません。しかし再びキーガンがライダーカップに戻ってくること、それも選手として戻り、あのスーツケースを開けるときが来るのではないか……と思い描いてしまいます。もしくはライダーカップに戻っても勝てなかった一人として語り継がれる選手となり、それもまたキーガンらしいのか。いずれにせよ今後にも続く伝説の序章であることは間違いありません。

それにしても、世界ランク1位のスコッティ・シェフラーですら少し歯車が狂うと流れが悪くなってしまうのがゴルフなのでしょう。世界ランク1位の選手が初日、2日目とポイントを獲得できない史上初の不名誉を得てしまいました。マキロイに勝ったマッチ直後のインタビューでは、最初はサバサバした感じで話していましたが、最後にキーガンや他のバイスキャプテンも皆素晴らしかったという話をしているうちに感極まって少し言葉に詰まり、あまり活躍できなかった悔しさやシングルスで勝てた安堵感など入り交じった複雑な感じでした。 

一方で前述のヤングやトーマスのように、あの場面で勝ち切る勝負強さも世界一流のすごみです。今回は主に敗れた米国チーム目線の話をしましたが、次回は勝った欧州目線で語りたいと思います。

PHOTO/Getty Images

※週刊ゴルフダイジェスト2025年10月21日号「さとうの目」より

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