図面上で最深「8フィート」を記録した14番ホールの謎

写真は川奈ホテルゴルフコース富士コースのバンカー
前回お届けした「アリソンバンカー深さの謎」では、18番グリーンをガードしているバンカーの深さが、アリソンの遺した原設計図とかなり異なっていたことを中心に書いたが、今回はその続編となる。
アリソンの図面を1番ホールから最終18番ホールまで詳細に調べていくと、やはり実際のバンカーの深さとの違いが気になって仕方がない。前回指摘したのは、18番グリーン右側のバンカーが、図面の指示では6フィート(約1.8メートル)であるのに対し、実際には3メートル強もの深さがあるという不思議だった。そこで今回は、全ホールのバンカーを徹底的に検証してみることにした。
川奈ホテルGC富士C14H
まず、図面上で最も深い数値が記録されているのが14番ホールだ。そこには「8フィート」との指示がある。1フィートを約30センチとして換算すると、8フィートは2.4メートルだから、当時としてもかなり深い設計だ。実際に現在のこのバンカーも深さはあるが、18番ホールほどの威圧感はない。
また図面上では、グリーン右奥にも同じく深さ8フィートのバンカーが描かれているが、現在この位置にバンカーは存在しない。14番のグリーンは他のホールよりも小さく造られているため、もし奥のバンカーが残っていれば、ここからのバンカーショットは相当な難易度になっていたはずだ。
さらに図面を読み進めていくと、右ドッグレッグの6番ホールには、ホールの角付近に「マイナス1(約30センチ)」という浅いバンカーがあったようだが、今は跡形もない。また、グリーン右手前12メートルの位置に描かれている深さ3フィートのバンカーも、現在は見当たらず、後年になって埋められてしまったのだろう。
戦略的に最も優れているとされる7番ホールは、2段フェアウェイが特徴だ。グリーンの左側には大きなバンカーが3個連なっており、図面上の深さは手前から「マイナス4」、真ん中と奥はそれぞれ「マイナス5」となっている。しかし実際には2.5メートル前後の深さがあり、ここでも図面と現実の間にかなりの差が生じている。
パー3の8番ホールは、グリーンを囲むように7個ものバンカーが配されている。ティーイングエリアから見て時計回りに「マイナス5」、「マイナス5」、残りの5個はいずれも「マイナス3」という深さだ。ただ、現在グリーン奥のバンカーは埋め立てられて姿を消している。当時はグリーン全体が完全にバンカーに囲まれていたため、ミスをすれば逃げ場がなかった。皮肉なことに、現在は埋められてしまった「一番奥のエリア」をあえて狙うのが、現代のルート攻略における正解となっている。
同じくパー3の10番ホールは、距離143ヤードの砲台グリーン。この距離自体はアリソンの図面通りで、現在も変わっていない。大きく異なるのは右側にあるバンカーの形状だ。図面ではグリーンの右奥から手前まで巨大なバンカーがワンパターンのように続いており、一度そこへ捕まると、グリーン越しにピンを狙う極限のショットを強いられる設計だった。現在ではグリーン正面に花道が造られ、かつて大きかったバンカーはセパレートされた状態になっている。
現代の深さは「経年変化」によるものか
アリソンのオリジナル図面と現在の各ホールを比較すると、ルーティング(全体の流れ)自体には大きな変化はないものの、バンカーの位置や深さにはかなりの相違があることが分かる。1962年の世界アマチュアゴルフ選手権の開催に合わせ、いくつかのホールでサブグリーンが新設されたのは確認しているが、それ以外のバンカーの改造がいつ、どのような経緯で行われたのかは、今後の調査で明らかにしていきたい。
結論として、川奈ホテルGC富士コースのバンカーは現在でこそ「牙を剥く大隔壁」として恐れられているが、図面上では14番の2.4メートルが最も深く、次に深いのが18番の1.8メートルだった。つまり、完成当時は今ほど深くはなかったということになる。もちろん、当時としてはこれだけでも十分にセンセーショナルな深さだったに違いないが、長い歴史の中で砂が吹き飛ばされたり、掻き出されたりするうちに、自然と現在の深さへと「進化」していったのではないだろうか。
文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中






