PGAツアー「3Mオープン」のムービングデー(3日目)。ミネソタ州のTPCツインシティズで嵐が巻き起こった。その中心にいたのは、21歳のルーキー、ジャクソン・コイブンだ。この日、コイブンは1ラウンド「61(10アンダー)」という驚異的なビッグスコアを叩き出し、通算20アンダーで単独首位に躍り出た。圧巻だったのは後半のバックナインである。12番(パー5)と18番(パー5)で2つの見事なイーグルを奪うなど猛烈なチャージを見せ、大会記録となるハーフ「28(8アンダー)」をマーク。ゴルフファンを驚愕させる歴史的なパフォーマンスで、一気にリーダーボードの頂点へと駆け上がった。彼の3日間通算スコア「193(20アンダー)」は、3Mオープンの54ホール終了時における大会タイ記録である。さらにこの第3ラウンドにおいて、グリーンを狙うショットの貢献度を示す「SG: Approach to Green」で「3.224」を叩き出し、出場選手中ダントツの1位を記録。ビッグスコアが決して偶然ではなく、アマチュア時代から武器としてきた「プロ顔負けのアイアン精度」がPGAツアーの舞台でも完全に通用していることを、数字が如実に証明している。

アマチュア界を制覇した「超エリート」

彗星のごとく現れた無名選手が、運良くビッグスコアを出したわけではない。彼はアマチュア界で圧倒的な実績を積み上げてきた、紛れもない「本物の怪物」なのだ。

コイブンはオーバーン大学のエースとしてチームを全米優勝に導き、大学ゴルフ界の3大最優秀選手賞(ハスキンス賞、ホーガン賞、ニクラス賞)を史上初めて2度(1年生時と3年生時)も独占するという、空前絶後の偉業を成し遂げたアマチュア界の超エリートである。

その輝かしい実績を引っ提げ、「PGAツアーユニバーシティアクセラレーテッド制度」を利用してツアーカードを獲得。プロとしての出場はこれがわずか3戦目というのだから恐ろしい。21歳での54ホール終了時首位は、今シーズンのPGAツアーにおける最年少記録となった。真の怪物が、いよいよプロの世界でもその本性を現し始めたのである。

イーグルを生んだ合言葉「War Eagle」と修羅場の経験

規格外のゴルフスキルに加え、コイブンの最大の武器はその「強心臓」にある。歴史的な大爆発を見せ、プロの大会で初めてリーダーボードのトップに名を連ねる極限状態にあっても、彼は驚くほど冷静だった。

ラウンド後の会見では「14番で少し緊張やプレッシャーを感じたが、うまくメンタルをリセットして、再びフロー状態に戻ることができた」と、21歳とは思えない落ち着き払った言葉を残している。

記者から「オーバーン大学の合言葉である”War Eagle(戦うワシ)”のように2つのイーグルを奪いましたが、大学での成功はどう生きていますか?」と問われた際、彼はこう答えた。

「大学の全国選手権などで、極限のプレッシャーがかかる状況に何度も置かれてきました。明日もその経験を頼りに、ショットを遂行するだけです」

12番での見事な3ウッドのショットや18番のイーグルも、決してまぐれではなく、こうした数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験から生まれたものなのだ。

憧れの対象から「競争相手」へ。世界1位を迎え撃つ覚悟

画像: 次代を担う若手No.1のジャクソン・コイブン

次代を担う若手No.1のジャクソン・コイブン

最終日は、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーらが猛追してくるシビアな優勝争いとなる。トッププロたちと優勝を争う心境について問われた彼は、「子供の頃から憧れていた選手たちですが、今はもう『自分の競争相手(competitors)だ』というメンタルチェンジができています」と堂々と語った。

さらに、「彼(シェフラー)が世界一であるのには理由があり、必ず良いスコアを出して優勝争いに絡んでくるだろう」と王者への敬意を払いながらも、「結局のところ、自分にできるのはコースに出て良いショットを打つことだけだ。それができれば良いプレーになる」と、自らのやるべきことだけに集中する姿勢を崩さない。ベテランたちに決して名前負けせず、重圧すらも楽しむような不敵なオーラを漂わせている。

このまま最終日を逃げ切り優勝を果たせば、今季のPGAツアーで4人目のルーキー優勝となる。

そしてもう一つ、歴史的な意味を持つのが「タイガー超え」だ。あのタイガー・ウッズでさえ、プロ転向後の初勝利を手にするまでに5戦(1996年ラスベガス招待)を要した。もしコイブンがデビュー3戦目の今週優勝を飾れば、タイガーの記録を上回る異例のスピード記録となる。

全米ジュニア・全米アマを連覇したタイガーに対し、大学ゴルフ界のビッグタイトルを総なめにしてきたコイブン。息詰まる重圧の中で、21歳の「本物の怪物」が歴史にその名を刻むのか。世界1位を真っ向から迎え撃つ、若き才能の果敢な最終日の戦いから絶対に目が離せない。

写真/Getty Images

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