1610万ドル(約24億円)という巨費を投じて大規模なコース改修を行ったデトロイトGC。今年の「ロケットクラシック」は、従来のパー72から「パー70」へと変更され、特に2つのパー5がパー4へと変更される過酷な設定となったことで、開幕前は「超難化」が確実視されていた。キャメロン・ヤングが「17番などはモンスターホールになり、スコアは確実に落ちるだろう」と強い警戒を口にしていたように、選手たちの間でもタフなサバイバルレースが予想されていた。しかし、初日のフタを開けてみればどうだろうか。ピーター・マルナティが大会のコースレコードを更新する「61(9アンダー)」を叩き出して単独首位発進を決めると、リーダーボードにはビッグスコアがずらりと並んだ。事前の「超難化」予想を見事に覆すバーディラッシュの裏で、一体何が起きていたのか。

24歳ブレナンの「8連続バーディ」と、そこに潜むコースの牙

初日のコースがどれほどスコアを伸ばしやすい状況だったかを示す、象徴的な出来事がある。24歳のマイケル・ブレナンが見せた猛チャージだ。

彼は5番から12番にかけて、今季のPGAツアー最長記録となる「8連続バーディ」という離れ業をやってのけた。これはPGAツアーの歴代最多連続バーディ記録(9連続)にあと1つまで迫る歴史的な快挙である。

しかし、この異次元のバーディラッシュの裏には、改修後のコースが持つ「恐ろしい牙」も隠されていた。ブレナンは8ホールで8アンダーを稼ぎ出しながらも、初日の最終スコアは「65(5アンダー)」の6位タイにとどまっている。つまり、記録的な猛チャージを見せながらも、他のホールで3つのボギーを叩いてスコアを削られていたのだ。「一歩間違えれば容赦なく叩かれる」という新コースの牙が垣間見えるエピソードと言える。

なぜスコアが伸びたのか? R・ファウラーが語る「矛盾の理由」

画像: 優勝経験のある大会で初日2位発進のリッキー・ファウラー(写真は26年WMフェニックスオープン)

優勝経験のある大会で初日2位発進のリッキー・ファウラー(写真は26年WMフェニックスオープン)

「超難化」予想に反してロースコアが続出した論理的な理由は、初日を「63(7アンダー)」の2位タイで終えたリッキー・ファウラーの言葉に隠されている。

ファウラーは今大会の初代アンバサダーであり、2023年大会の王者でもある。彼が初日に叩き出した「63」は、デトロイトGCでプレーした過去25ラウンドにおける自身の最少ストローク(自己ベスト)だ。コースの隅々まで知り尽くした男だからこそ、改修直後のコンディションの矛盾を突き、見事に攻略してみせた。

「コースは素晴らしい状態だが、コンディションがとてもソフト(柔らかい)だ。グリーンがボールをしっかりと受け入れてくれるため、ロースコアが出やすくなっているんだ」

ファウラーの解説は非常に的確だ。総額1610万ドルをかけた大改修はレイアウトを格段に難しくした一方で、完全に真新しいグリーンを生み出した。しかし、造成されたばかりの新しいグリーンはまだ締まりきっておらず、ファウラーが「成熟して本来の硬さになるにはあと1〜2年かかるだろう」と指摘するように、物理的にボールが止まりやすい状態だったのだ。

さらに、この新グリーンは「時間帯」によっても全く異なる表情を見せる。初日に「61」をマークしたマルナティが午前組だったのに対し、午後組でプレーしたベン・グリフィンはこう証言する。

「新しいコースのグリーンはまだ定着しきっていないため、午後になって踏み固められるとどんどんデコボコになり、難易度が跳ね上がる」

つまり、初日は「柔らかくボールが止まりやすい」という恩恵を最大限に受けられる午前中の選手を中心に、記録的なロースコアが生まれたのである。

「午後組」で耐えた実力者たちの逆襲

この「午前有利・午後不利」という明確なコース状況を踏まえると、リーダーボードの別の顔が見えてくる。難易度が跳ね上がった午後組でプレーしながらも、上位に食い込んだ選手たちだ。

画像: 初日、午後組でスコアを伸ばした久常涼と松山英樹。2日目でジャンプアップが期待できる(写真は26年トゥルーイスト選手権)

初日、午後組でスコアを伸ばした久常涼と松山英樹。2日目でジャンプアップが期待できる(写真は26年トゥルーイスト選手権)

日本勢では、久常涼が4アンダー(13位タイ)、松山英樹が3アンダー(27位タイ)と、荒れたグリーンを耐え抜いて好位置につけている。ツアーの規定により、初日午後組の彼らは、2日目は荒れる前の「綺麗なグリーン」でプレーすることになる。さらに2日目の午後は天候が崩れる予報も出ており、初日に恩恵を受けた選手たちが苦戦する可能性は高い

不利な条件でスコアを作った久常や松山のようなショットメーカーたちが、2日目の午前中にどんな猛チャージを見せるのか。初日のロースコアは、静かなるプロローグに過ぎないのかもしれない。グリーンが硬さを増し、午後にかけて足場が荒れ、容赦ないモンスターコースへと豹変した時、真のショットメーカーの力量が問われるタフなサバイバルが幕を開ける。

写真/岩本芳弘


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