極限のプレッシャーと短期間での成長
華やかな逆転劇の裏で、ブレナンは極限のプレッシャーと戦っていた。ウィンダム選手権の終盤、後続の猛追を受ける中で、彼は「すごく緊張して手が変な感じになって、クラブを握る感覚すらなくなってしまったんだ」と、相棒であるキャディのオリバー・ブレット(通称:オリー)に打ち明けていた。
プロゴルファーにとって致命的とも言える「手の感覚の麻痺」という恐怖と戦いながら、彼は逃げ切ってみせたのだ。
しかし、その重圧に押しつぶされることなく逃げ切ることができたのは、彼が直近の大会で味わった“挫折”のおかげだった。
「その前の3Mオープンとロケットクラシックでの(優勝争いに敗れた)経験がなければ、先週は勝てなかっただろう。渦中にいる時はフラストレーションが溜まったし、勝利が手から滑り落ちていくのを感じるのは本当に悔しかった。でも、今となってはその経験に感謝しているよ」
手痛い敗戦を引きずるのではなく、短期間で糧にして這い上がる。その驚異的な修正力とメンタルのタフさこそが、ツアー2年目の新鋭をツアー2勝目へと導いたのだ。
未知の領域「7週連続出場」と、灼熱の肉体管理
奇跡のプレーオフ進出を果たしたブレナンは今週、自身にとって初となる「7週連続出場」を果たす。
PGAツアーのタフなフィールドで連戦を重ねることは、肉体的にも精神的にも限界を試される。しかも、今週の舞台であるテネシー州メンフィスのTPCサウスウィンドは、連日35度を超える猛烈な酷暑が選手たちを襲う。
これまで最大でも5連戦が最高で、6週連続でプレーしたことすら一度もなかったブレナンにとって、この酷暑の中での7連戦目はまさに肉体のサバイバルだ。彼は、自身初となるTPCサウスウィンドの攻略に向け、徹底的な「肉体管理」についてこう明かしている。
「練習日はコースに長居せず、効率よく仕事をこなす。あとは、とにかく電解質(エレクトロライト)ドリンクを1日に5本以上がぶ飲みすることだね。そうしないと体がだるくなって、クラブを握る手の筋肉が攣(つ)り始めてしまうから。 練習時間を短縮して、とにかく水をたくさん飲むよ」
「燃料切れ」が心配されるブレナンだが、ひとたび波に乗った時の爆発力はツアー屈指だ。彼は今季の「ロケットクラシック」第1ラウンドにおいて、今シーズンのツアー単独1位記録となる「8連続バーディ」という驚異的な猛チャージを見せている。
「今週は間違いなく『燃料切れ』の状態でプレーすることになるだろうね。でも、僕はそれで完全にハッピーさ。だって、まだ家に帰ってソファに座りたくはない。もっと世界最高の選手たちとゴルフを続けていたいんだから」
母校のサポートと、恐れを知らない若武者の挑戦

先週の「ウィンダム選手権」でツアー2勝目を挙げ、プレーオフシリーズの参戦権を得たマイケル・ブレナン
今大会を迎えるにあたり、母校ウェイク・フォレスト大学(Wake Forest Univ.)で通算8勝を挙げたキャンパスを散歩し、心を整えてからメンフィス入りしたというブレナン。
現地で「Go Deacs!(行け、デコンズ!)」と母校の愛称で熱い声援を送られた際、イギリス人キャディのオリーが「“Go Deacs”って一体何のこと?」と首を傾げていたという微笑ましいエピソードも明かしてくれた。
大会前日の夜、ホテルの部屋で遅くまでスマートフォンを握りしめていたブレナン。「友達からのお祝いのメッセージが多すぎて、全員に返信しようとしたら少し夜更かししてしまったよ」と笑う姿は、どこにでもいる等身大の24歳の青年だ。
しかし、予選ラウンドでは今大会のディフェンディングチャンピオンであり、プレーオフ通算最多進出(19回)を誇る46歳の鉄人、ジャスティン・ローズとの超注目グループ(午前11時30分、10番ティーからスタート)での同組が決定した。ひとたびコースに立てば、極限のプレッシャーを知り、挫折から立ち上がる術を身につけた凄腕ゴルファーへと変貌する。
限界を超える連戦の中で、失うもののない若き勝負師が、強豪ひしめくエリートフィールドにどのような旋風を巻き起こすのか。燃料切れの体に鞭打って挑む、マイケル・ブレナンの新たな挑戦から目が離せない。
写真/Getty Images
