PGAツアーのフェデックスカップ・プレーオフ第1戦「フェデックスセントジュード選手権」第2ラウンド。日本の若き才能、久常涼が演じたある一打が、SNSを通じて世界中のゴルフファンの度肝を抜いた。16番(パー5)、残り227ヤードからのセカンドショット。久常の放ったボールはピンに向かって真っすぐ飛び、あわやアルバトロスかという完璧な軌道を描いて、カップ左わずか3インチ(約7.6cm)にピタリと止まった。タップインでのイーグルを奪ったこの圧巻のスーパープレーは、彼のポテンシャルの高さを証明するには十分すぎるハイライトだった。しかし、この日の彼のスコアカード全体を見渡すと、華やかなスーパーショットだけでは語れない、極めて興味深い、そしてある意味で「異常」なスコアの乱高下が記録されていた。

1日で「7アンダー分」を稼ぐ攻撃力

この日、久常は1つのイーグルに加えて、なんと5つものバーディを奪っている。1日で「7アンダー分」のスコアを稼ぎ出す爆発力は、エリートひしめくプレーオフのフィールドにおいても脅威である。

その攻撃力を支えていたのは、ショットの精度の高さだ。公式データ(ShotLink)を見ると、ティーショットの貢献度を示す「SG: Off The Tee」は0.604(全体18位)、そしてグリーンを狙うショットの貢献度「SG: Approach to Green」も1.078(全体20位)と、ショット面では非常に高いレベルでプレーしていたことがわかる。16番のスーパーショットに象徴されるように、ドライバーでアドバンテージを取り、アイアンでピンをデッドに攻め立てる、まさに「超攻撃的ゴルフ」が噛み合った結果の7アンダー分(1イーグル・5バーディ)だった。

【動画】久常涼、あわやアルバトロスのスーパーショット【PGAツアー公式X】

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データが語る「7ボギー」の落とし穴

しかし、これだけ派手にスコアを伸ばしながら、久常の第2ラウンドの最終スコアは「70(イーブンパー)」に留まった。その原因は、スコアカードに刻まれた「7つのボギー」にある。

この日の久常のスコアカードで最も異質なのは、パー(Par)の数がわずか「5つ」しかなかったという事実だ。18ホール中、13ホールでスコアが動くという、プロの試合では滅多に見られない大波ゴルフを展開していたのだ。

なぜ、これほどのショット精度を誇りながら、ボギーを量産してしまったのか。その答えは、グリーンを外した時のデータに隠されている。

グリーンを外した際のリカバリー率を示す「スクランブリング率」を見ると、久常はこの日、8回のうち1回しかパーセーブできず、わずか12.50%(全体67位)という極めて厳しい数字を残している。アプローチの貢献度(SG: Around The Green)も-0.731(全体57位)、パッティングの貢献度(SG: Putting)も-1.407(全体58位)と、グリーン周りで大きなビハインドを背負っていたのだ。

しかし、ここに極端な「ねじれ」が存在する。 パーオン時の平均パット数(Putts per GIR)を見ると、「1.4」で全体2位タイという最高峰の数字をマークしているのだ。

つまり、この日の久常は、

● グリーンに乗れば、イーグルやバーディをほぼ確実にする決定率「60.00%」(10ホール中6ホール)
● しかしグリーンを一度外せば、ほぼ確実にボギーを叩いてしまうリカバリー率「12.50%」(8ホール中7ボギー)

という、劇薬のような表裏一体のゴルフを展開していたのである。

週末へ向けた爆発の予感

画像: 久常涼の爆発力はツアーでも知られた存在。ムービングサタデーにその力が見せられるか、期待したい(写真は26年トゥルーイスト選手権)

久常涼の爆発力はツアーでも知られた存在。ムービングサタデーにその力が見せられるか、期待したい(写真は26年トゥルーイスト選手権)

通算1アンダーの34位タイで決勝ラウンドへ進む久常。現在の順位は、次戦「BMW選手権」への出場が現実的に見えてくる位置だ。

1日で7つものスコアを伸ばす底力は、すでに証明されている。この超攻撃的なプレースタイルを維持しつつ、グリーンを外した時のショートゲームのミスを減らすことができれば、週末のTPCサウスウィンドでさらなる大爆発、すなわち“大まくり”を見せてくれる可能性は十分にある。若き才能の恐れを知らぬ挑戦から目が離せない。

写真/岩本芳弘


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