2028年から導入されるPGAツアーの新フォーマット。第1回で紹介した「最終戦のマッチプレー」、第2回で解説した「巨額のスポンサーマネーとLIVへのスタンス」に続き、いよいよ連載の最終回となる。2028年の新制度では、2月から8月に開催されるレギュラーシーズン「チャンピオンシップ・シリーズ」は、8月末のストロークプレー最終戦をもって完結し、ここで年間王者が決定する。その直後に行われる新生「ツアー選手権」は、上位32名のみが出場する完全独立のポストシーズン(2週間のマッチプレー)として開催される。では、シーズンが完結した「秋」から「冬」にかけて、トップ選手たちは何をするのか? そして、シーズン中に開催されてきた各国の「ナショナルオープン」は新制度下でどう扱われるのか。アトランタで会見を行った次期コミッショナー、ブライアン・ロラップ氏の言葉から、PGAツアーが描くグローバル戦略の全貌を読み解く。

DPワールドツアーと共闘する「秋の限定イベント」と15試合義務の撤廃案

レギュラーシーズン終了後の空白期間となる秋のスケジュールについて、ロラップ氏はDPワールドツアー(欧州ツアー)との戦略的提携をさらに強化する構想を明かした。

「シーズンを終えた後のオフシーズン(秋)において、より国際的で意義のあるイベントに焦点を当てたいと考えている。これは現在進行中のDPワールドツアーとの話し合いの重要な一部だ」

彼が描くのは、単にアメリカ国内の選手を休ませるだけでなく、トップ選手が出場する限定的な国際イベントを海外で開催することだ。「DPワールドツアーとの話し合いには非常に興奮しているが、数は6〜8大会程度になるだろう」とロラップ氏は展望を語る。

さらに、このグローバル戦略を現実的に後押しする驚愕の改革案も明かされた。ロラップCEOは、デュアルメンバー(両ツアーの会員)に課している「PGAツアー年間最低15試合の出場義務(※)」について、「見直し、あるいは完全に廃止することを検討している」とコメント。この縛りの撤廃案を聞いたマキロイは、笑顔で「No way. Really?(嘘だろ、マジで?)」と大きな驚きと期待を隠せなかった。
※PGAツアーの年間15試合出場義務とは、選手は原則としてツアーの議決権メンバー資格の喪失や、翌シーズンのシード権・メンバーシップ維持に対するペナルティを受けることになる。ただし、怪我や特殊な事情がある場合はコミッショナーの裁量で免除(特例)が認められるケースもある。なお、マキロイは「ツアー選手権」でPGAツアー14試合目となり、フォール大会でどこか1試合出場しなければペナルティの可能性が残っている。

この「1年・12カ月」の美しい協調サイクルを、スター選手たちも大歓迎している。

画像: DPワールドツアーと掛け持ちで試合に出場しているローリー・マキロイ。2028年以降の新スケジュールに賛同している一人だ(写真は26年全米オープン)

DPワールドツアーと掛け持ちで試合に出場しているローリー・マキロイ。2028年以降の新スケジュールに賛同している一人だ(写真は26年全米オープン)

欧州出身のローリー・マキロイは「PGAツアーが8月で完結することで、DPワールドツアーは9月からの5カ月間、最高のイベントに100%スポットライトを当てて国際ゴルフを輝かせるチャンスを得る」と大賛成だ。

さらに彼は「PGAツアーが2月開幕になれば、欧州ツアーの年間最終戦を1月に中東(ドバイなど)で開催するスケジュールが可能になる。1月に中東で欧州の年間王者を争うグランドフィナーレを戦い、その好調さを維持したまま2月の米ツアー開幕へ突入できる。これ以上美しく完璧なカレンダー連結はない」と、欧州ツアーの視点からも絶賛する。

秋の過ごし方:現在の「リアルな個性」が示す、新制度への完璧な伏線

2028年に向けて秋のスケジュールが自由化される意義は、選手たちの「オフの過ごし方」に対する現在のスタンスを見れば一目瞭然だ。実は今年(2026年)の最終戦会見でも、スター選手たちがそれぞれのあまりにリアルで対照的な「オフの哲学」を披露し、会場を沸かせている。

画像: パトリック・カントレーの秋の予定は米国内の試合に参戦するようだ(写真は26年全米オープン)

パトリック・カントレーの秋の予定は米国内の試合に参戦するようだ(写真は26年全米オープン)

愛読家としても知られるパトリック・カントレーは、休養の重要性をこう説く。

「僕たちにとってオフシーズンは本当に大切だ。体と心をしっかり休めたいし、旅をしながら本をゆっくり読みたい(笑)。だから無理をして秋にたくさんの試合に出るつもりはないよ。自分に合わせた休みが取れるカレンダーは最高だ」

画像: 25年ベイカレントクラシックにも出場したウィンダム・クラーク。会見で知れっと今年も出場する意向を明言した(写真は26年全米オープン)

25年ベイカレントクラシックにも出場したウィンダム・クラーク。会見で知れっと今年も出場する意向を明言した(写真は26年全米オープン)

一方で、超アクティブ派のウィンダム・クラークは、エネルギー全開で今オフ(2026年秋)のグローバルな旅の計画を明かしている。

「僕はオフになったらすぐに大好きなメキシコのカボに行く予定だし、日本(ベイカレントクラシック)でもプレーする。その後は南アフリカの大会にも出場する予定なんだ。そして……実は南アフリカで彼女にプロポーズするつもりなんだ。彼女が『イエス』と言ってくれることを今から祈っているよ(笑)」

ただ休むだけでなく、クラークのようにモチベーション次第で海外を巡るなど、選手が自らのライフスタイルや目的に合わせてスケジュールを主体的に選択できる。

2028年の「15試合出場義務の撤廃案」は、まさにこうした選手それぞれの生き方や個性を尊重し、ゴルフ界全体の多様性を活性化させるための、理にかなったルール転換と言えるだろう。

スコットランドOPとカナディアンOPの行方

この壮大な新スケジュール構想の中で、避けて通れない問題がある。それが、これまでレギュラーシーズン中に開催されてきた伝統ある各国の「ナショナルオープン(オープン選手権)」の扱いだ。

「オープン」という名の通り、本来ナショナルオープンは自国予選などを通じて地元の選手にも広く門戸が開かれているべき大会である。しかし、新制度の「チャンピオンシップシリーズ」に組み込まれた場合、自社推薦枠やマンデー予選が全廃されるため、ポイントランキング上位者しか出場できないという矛盾(母国のナショナルオープンに自国選手が出場できない事態)が生じるのだ。

会見では記者から、「現在のツアースケジュールの中盤にある『ジェネシス スコットランドオープン』や『RBCカナディアンオープン』はどうなるのか? チャンピオンシップシリーズなのか、それとも別の扱いになるのか?」という鋭い質問が飛んだ。

これに対しロラップ氏は「現在まさに検討中だ」としつつも、全英オープンの前哨戦として定着しているスコットランドオープンについては明確な方針を示した。

「スコットランドオープン、そして全英オープンの前週という日程は我々にとって非常に重要だ。それはチャンピオンシップ・シリーズのスケジュールにおいて重要な一部となるだろう」

具体的なカナディアンオープンの位置づけについては明言を避けたものの、伝統あるナショナルオープンを最高峰のシリーズに組み込む、あるいは秋の国際イベントとして再構築するなど、世界中のファンが納得する形でのスケジュール調整が現在急ピッチで進められていることが窺える。

全貌発表は2027年2月22日! PGAツアーが描く壮大なグローバル戦略

2028年、PGAツアーはアメリカ国内での生存競争(昇降格とマッチプレー)を極限まで高める一方で、秋には世界へとその舞台を広げる。

全3回にわたって解説したこの大改革は、単なる試合方式の変更ではなく、プロゴルフというスポーツビジネス全体の構造を根底から作り変える壮大な挑戦である。

ロラップCEOによれば、この2028年「チャンピオンシップ・シリーズ」の全日程および新生ツアー選手権の開催コースは、「来年(2027年)2月22日に、フロリダ州ポンテベドラビーチのPGAツアー本部からテレビ特番を通じて公式発表する」という。

2027年2月22日、すべてが公式にベールを脱ぐ。巨額の資金、全く新しいフォーマット、そしてグローバルな展開。新時代の幕開けが、選手たちのキャリアとゴルフ界の勢力図をどう塗り替えていくのか、引き続き注視していきたい。

写真/USGA提供

関連記事はこちら

【第1部:サッカーW杯型マッチプレーの全貌】はこちら

【第2部:異例の強気と改革の裏にある地方大会の悲哀】はこちら


This article is a sponsored article by
''.