今季も他を寄せ付けない圧倒的な強さと安定感を示し、フェデックスカップポイントランキング1位でツアー選手権(アトランタ・イーストレイクGC)に乗り込んだスコッティ・シェフラー。彼の異常なまでの強さを裏付けるのが、ゴルフ史を塗り替えたデータだ。今季の彼の平均ストロークは「67.96」。これは、1983年にツアーが公式記録を取り始めて以降、あのタイガー・ウッズが年間9勝を挙げた全盛期(2000年:68.17)をも上回る史上最高記録である。今季は19試合に出場してトップ10入りが実に12回、トップ25入りは18回。予選落ちはわずか1回のみという異次元の安定感でツアーを支配した。多くの選手が好不調の波に苦しみ、時には成績を大きく落とすのがゴルフというスポーツの常である。しかし、なぜ彼だけが常にリーダーボードの上位に留まり続け、勝ち続けることができるのか。開幕前の公式会見で本人が語った言葉からは、その圧倒的な成績の根底にある、ストイックすぎる「プロ意識」と「勝負への美学」が浮かび上がってくる。

「ウォーミングアップで試合に出ることはない」――100%で挑む美学

画像: 自身を根っからの負けず嫌いで勝負事が好きと話すスコッティ・シェフラー(写真は26年全英オープン)

自身を根っからの負けず嫌いで勝負事が好きと話すスコッティ・シェフラー(写真は26年全英オープン)

シェフラーが自身のキャリアにおいて最も誇りに思っていることは、メジャー優勝の数や巨額の賞金ではないという。「毎週、同じように高い情熱を持って試合に臨む一貫性」であると彼は断言する。

「大会に出場する以上、ウォーミングアップやただの義務感でプレーすることはない。常に自分のベストを尽くし、優勝するチャンスを自分に与えるためにここ(会場)に来ているんだ」

年間を通して戦い続けるプロゴルファーにとって、常に100%のモチベーションを保ち続けることは容易ではない。体調が優れない日もあれば、スウィングの感覚が狂う日もある。それでも彼が情熱を絶やさない理由は、彼自身の奥底にある強い後悔への恐怖と、純粋な闘争心だ。

「プロとして引退し、年をとった時に、『もっとやれたはずだ』と過去を振り返って後悔したくない。自分がここで過ごす時間から、持てるすべてを出し切りたいんだ」

この揺るぎない美学こそが、彼を世界ナンバーワンの座に押し上げ、そこに留まらせている最大の原動力である。

タイガー・ウッズの背中と、20位タイで見せつけられた「10打からの執念」

画像: シェフラーがタイガーと一緒にラウンドした唯一の試合という2020年マスターズ最終日。いつもの赤い服でフェアウェイを歩くタイガーと左後ろに白い帽子を被っているのが若かりし日のシェフラー。ちなみに黒いウェアはシェーン・ローリー(写真/Getty Images)

シェフラーがタイガーと一緒にラウンドした唯一の試合という2020年マスターズ最終日。いつもの赤い服でフェアウェイを歩くタイガーと左後ろに白い帽子を被っているのが若かりし日のシェフラー。ちなみに黒いウェアはシェーン・ローリー(写真/Getty Images)

現在、シェフラーは今季の公式戦だけでツアー史上最高額となる「2093万7525ドル(約31億円)」を稼ぎ出し、単一シーズンの獲得賞金記録を更新した。しかし、タイガーの記録との比較について問われた彼は、「リンゴとオレンジを比べるようなものだ」と謙虚に首を振った。

「僕がこれほど莫大な賞金を得られるのは、僕の力ではない。すべてタイガーがこのゲームを変え、市場を大きくしてくれたおかげだ。だから、これはタイガーの記録を破ったのではないんだよ」

この言葉には、歴史的巨額の賞金を手にした王者だからこそ語れる、先人への深い敬意と感謝が込められていた。

そしてシェフラーは、自身の「情熱」の源流が、他ならぬタイガー・ウッズの背中にあることを明かした。それは、新型コロナの影響で異例の11月開催となった2020年マスターズ最終日で、タイガーと同組でラウンドした際のエピソードだ。

「僕たちは20位タイで、優勝したダスティン(・ジョンソン)がはるか先を独走していた。僕らに優勝のチャンスはまったくなかったし、タイガーはすでにグリーンジャケットを5着も持っている。彼にとってプレーする意味なんて、それほどないはずだった」

しかし、1番グリーンに上がった時、シェフラーは「なんてこった、この人は本気だ」と震え上がった。

その情熱の凄まじさを象徴していたのが、名物12番(パー3)での大トラブルだった。タイガーは池に3回つかまり、1ホールで「10打」を叩く悪夢に見舞われる。だが、彼はそこから腐るどころか、残りの6ホールで実に5つのバーディを奪うという驚異的な執念を見せたのだ。優勝争いとは無縁の順位であっても、1打に極限の集中力を注ぎ込むタイガーの姿。それは、当時24歳だったシェフラーの心に強烈な影響を与えた。

「その圧倒的な情熱を、僕は自分のゲームのモデルにしようと努めてきた。言うは易く行うは難しだけれど、彼がプレーする姿から僕は本当に多くのことを学んだんだ」

終わりのないパズルを解くように、最後の大舞台へ

なぜ、そこまでして勝負にこだわり続けるのか。シェフラーはゴルフというスポーツの魅力を「生涯かけて解き続ける終わりのないパズル」と表現した。

「ゴルフには常に何か解き明かすべきことがある。もし僕が何かを始めたら、それに対して深くのめり込み、本当に上手くなろうとするタイプなんだ。ゴルフは僕にとって、ずっとそういう存在だった」

世界最高峰の舞台で戦える喜びと、勝負への純粋な愛情。そして、偉大なる先人から受け継いだ「いかなる時も100%の情熱を注ぐ」というプロフェッショナルとしての覚悟。

完全無欠の王者は、引退した時に1ミリの後悔も残さないため、そして解き明かせないパズルを楽しむように、今季最後の大舞台で最後の1打まで戦い抜く。

写真/R&A提供


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