「プロに転向して50年。あっという間だったよ」——69歳を迎えたゴルフ界のレジェンド、メジャー通算6勝を誇るサー・ニック・ファルド(英)は、穏やかな笑顔でそう振り返る。しかし、その笑顔の裏には、命を落としかねない衝撃のドラマが隠されていた。長年テレビ解説者として親しまれてきた彼が、自らの命を救った奇跡の復活劇、混迷を極める現代ゴルフ界(LIVゴルフ)への強烈な一撃、そしてPGAツアーのカレンダーに対する鋭い提言までを余すところなく語った。

【LIVゴルフと“マネー至上主義”への一撃】
「入るより出たがる選手が多い」

「いまやLIVに行きたがる選手より、抜け出したがっている選手のほうが多いんじゃないか」

メジャー6勝のレジェンドの口から飛び出したのは、ゴルフ界の現状を射抜く生々しい本音だった。巨額の契約金でスター選手を引き抜き、男子ゴルフ界を分断させたLIVゴルフ。長年メディアの最前線から見つめてきたファルドは、こう切って捨てる。

「外から見ていると、いまやLIVに行こうとする選手よりも、離脱しようとしている選手のほうが多いように見えるよ。ジョン・ラームやティレル・ハットンだって、向こうを出て元のツアー(PGAツアーや欧州ツアー)に戻りたがっていると聞こえてくる。彼らが戻ってくる方法を見つければ、世界のゴルフは再び強くなる。それが何より重要なことだ」

ヘタなプレーで1500万円? 膨らみすぎたマネーと「本物のゴルフ」

半世紀にわたりプロゴルフの現場を見続けてきたファルドにとって、近年の“マネーゲーム”は異様に映っている。

「私がテレビ解説をやっていた18年間、番組内で賞金額を口にすることすら許されなかった。『このパットを沈めれば50万ドルが入る』なんて、絶対に言えなかったんだ。それがここ4、5年で突然、話題に上るのはドル記号($)ばかりになってしまった」

そう嘆くファルドの言葉には、熱がこもる。

「世界中で懸命に働いている人々(一般社会)の年収と比べたら、ひどいプレーをして最下位近くに沈んだ選手が、無条件で10万ドル(約1500万円)ももらえるなんて、どうしても理解できないよ」

ファルドにとって、ゴルフの真価値は賞金額ではない。

「プロになって50年。最高の大会といえば4大メジャーとライダーカップだ。素晴らしいコースで、最高の雰囲気の中、72ホールで決着をつける。だからこそ我々はゴルフを愛しているんじゃないか」

奇をてらったギミックや団体戦ではなく、歴史の試練に耐えてきた“伝統的な72ホールの4日間競技(メジャーや、マッチプレーで戦うライダーカップ)”こそが本物のゴルフであるという、揺るぎないプライドがそこにあった。


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