「プロに転向して50年。あっという間だったよ」——69歳を迎えたゴルフ界のレジェンド、メジャー通算6勝を誇るサー・ニック・ファルド(英)は、穏やかな笑顔でそう振り返る。しかし、その笑顔の裏には、命を落としかねない衝撃のドラマが隠されていた。長年テレビ解説者として親しまれてきた彼が、自らの命を救った奇跡の復活劇、混迷を極める現代ゴルフ界(LIVゴルフ)への強烈な一撃、そしてPGAツアーのカレンダーに対する鋭い提言までを余すところなく語った。

【奇跡の復活劇】
20年抱えた“胸の爆弾”と、運命を変えた出会い

ファルドは実に20年もの間、ある恐ろしい持病と付き合ってきた。「大動脈基部拡大」——心臓から全身へ血を送る根本の血管が、まるで膨らんだホースのように巨大化してしまう病だ。

「肺活量は本来の75%まで落ちていたんだ。それが当たり前になっていたからね。血圧を下げるベータブロッカーという薬を4年間飲み続けて、なんとかしのいでいたんだよ」

2021年に長年務めた米CBSのテレビ解説者を退いたのも、移動の連続による過酷な生活に体が耐えきれなくなったためだった。

そんな彼の命を救ったのは、妻リンジーの強烈な決断力と、あまりにドラマチックな出会いだった。昨年10月、ドナルド・トランプ大統領も出席していた90歳のお祝いゴルフコンペに参加した際、妻リンジーがトランプ氏の主治医として知られるドクター・オズ(メフメト・オズ医師)と出会う。彼は偶然にも、ファルドが抱える大動脈基部疾患のトップスペシャリストだったのだ。

ドクター・オズと名門クリーブランド・クリニックの医師団が素早く動き、12月に精査が組まれた。しかし、ファルドの異変を感じ取っていた妻リンジーは「検査じゃないわ、今すぐ手術よ!」と即断。この一言が、文字通り彼の命を救う決定打となった。

失われたヘッドスピードを取り戻す! ゴルフへの執念

画像: 自身が主催する「ブリティッシュマスターズ」の事前公式会見で話すニック・ファルド(写真/Getty Images)

自身が主催する「ブリティッシュマスターズ」の事前公式会見で話すニック・ファルド(写真/Getty Images)

手術は無事に成功した。木曜日に開胸手術を受け、わずか2日後の土曜日には病院の廊下を30ヤード歩けるまでに回復してみせた。

術後約8カ月が経過したファルドの表情は晴れやかだ。

「薬から解放されて、本当に清々しい。以前は心拍数を上げないように抑え込まれていたから、まともなトレーニングすらできなかった。今は好きなだけハードに体を動かせるんだ」

病気の影響で、クラブのヘッドスピードは時速10マイル(約16km/h)も低下していた。しかし、過酷なリハビリと鍛錬の末、彼はそのうち「8マイル」を取り戻してみせた。

「また思い切りゴルフボールをひっぱたけるようになって、最高に楽しんでいるよ」

かつて世界を席巻した「精密機械」は、69歳にして新たなエンジンを心臓に積み、再びゴルフへの情熱をたぎらせている。


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