可罰型と戦略型――100年で進化したコース設計の二大理念

オーガスタ13番ホール(※画像はイメージ)
ゴルフコースは18ホールで1ラウンドとされるのが一般的だ。その基本的な構成は、パー3が4ホール、パー5が4ホール、パー4が10ホールとなっている。もっとも、18ホールでなければならないという厳密な規則があるわけではなく、世界を見渡せば12ホールや6ホールのコースも実在する。6ホールのコースなら3周、12ホールのコースなら追加で6ホール回れば18ホール換算になるわけだ。
18ホールの中に難ホールと易ホールが混在していることは、ゴルファーなら誰もが経験的に知っていることだろう。
コース設計の基本理念には、大きく分けて「可罰型(ペナル/Penal)」と「戦略型(ストラテジック/Strategic)」の2つがある。両者の違いをシンプルに言えば「攻略ルートの選択肢の数」にある。
可罰型のホールは1920年代以前に多く見られ、当時はコース設計の理念がまだ発展途上だったと言える。ティーイングエリアから50〜80ヤード付近やグリーン手前30〜50ヤード地点にクロスバンカーを配置し、フェアウェイ左右にもハザードを利かせることで、あらゆるミスショットを力づくで罰する構造だ。そのため、当時はティーイングエリアからグリーンが見通せるストレートなホールが大半を占めていた。

アリスター・マッケンジー
一方、戦略型ホールのルーツは1914年まで遡る。きっかけは、英『Country Life』誌が主催した「理想的なパー4の設計」というコンテストで、アリスター・マッケンジーが優勝を果たしたことだった。マッケンジーの応募図面には、1つのパー4に対して実に5本もの攻略ルートが描かれていた。
このパー4の設計図は多くの設計家に影響を与えた。「アメリカゴルフの父」と称されるチャールズ・ブレア・マクドナルドも、1917年にニューヨークのロングアイランドに造成したリドーCCでこの意匠を取り入れている。
人工リンクス(マンメイドリンクス)の傑作と謳われた同コースの要素は、現代のコース設計界を牽引するギル・ハンスがタイに造った「バリシアーGL」の18番ホールでも忠実に再現されている。ゴルファーは自身の技量と相談しながら、リスクとリワードを見極めて最良のルートを選択する。つまり戦略型ホールとは、飛距離だけでなく技量と頭脳のすべてを駆使させる設計なのだ。コース設計家が仕掛けたテーマに対し、プレーヤーが自らのショットで答えを出す。これこそがゴルフというスポーツの奥深さであり、人々の記憶に残る名ホールの条件となる。

オーガスタ12番ホール
私自身の体験の中で最も戦略的だと感じたのは、やはりオーガスタナショナルGCだ。完璧に整備された美しさゆえ一見優しそうに思えるが、11番の複雑な起伏と池の配置、12番の気まぐれな風と横たわるクリーク、そして横長で奥行きのないグリーンはゴルファーの感覚を狂わせる。さらに13番では、つま先上がりのライからクリーク越しにグリーンを狙わされるなど、技量と頭脳のすべてを注ぎ込んでも太刀打ちできなかった。
ゴルフとは「力だけでなく頭脳も競う」ゲームであり、コース設計者との時空を超えた知恵比べなのだ。
文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中。





