
松山英樹、リッキー・ファウラー、キーガン・ブラッドリーの組には多くのギャラリーが付いた
腰の違和感と戦いながら耐えた前半
大会前のプロアマ戦を12ホール終わった段階で途中棄権するなど、腰への強い不安が囁かれていた松山。初日のラウンド中も、ショット直後に顔をしかめ、フィニッシュを崩す痛々しい場面が散見された。
それでも、目の前の1打に向き合う集中力は途切れない。前半アウトコースでは3バーディ・2ボギーの「35(1アンダー)」と、出入りの激しいゴルフになりながらも粘り強くスコアをまとめた。ホールアウト後の囲み取材で自身の腰の状態について問われると、松山は「うーん、まあ昨日よりはマシっていうだけです」と淡々と答えた。その言葉からは、痛みを言い訳にせず、現状の中でベストを尽くそうとする静かな闘志が感じられた。
土壇場で魅せたエースの凄み — 18番の「強気の一打」

18番のバーディパットを沈めてガッツポーズをする松山英樹。一組後ろでラウンドした長﨑煌心は「マスターズくらい盛り上がっていた」と話し、長﨑の弟で今年のジュニアプレジデンツカップに出場し、プレジデンツカップを間近で見た大星は「松山さんの組はプレジデンツカップ並み」とそのすごさを表した
後半に入ると、松山の真骨頂である勝負強さが目を覚ます。12番でバーディを奪うと、15番(パー4)でもスコアを伸ばす。そして、この日のハイライトは難関の18番(パー4)で訪れた。
今年の18番ホールは、フェアウェイとグリーンが手前へ14メートル移動する改修が施され、視覚的なプレッシャーが増した難所。実際、初日の平均ストロークは「4.319」を記録し、バーディはわずか6人のみという全18ホール中トップの最難関ホールだった。
この難ホールで、松山はグリーン上で約10メートルのパットを残す。本来であれば確実にパーで上がりたい場面。だが、松山のパターから放たれたボールは、やや下りのスライスラインを力強くトレースし、そのままカップへと吸い込まれた。大歓声のなか、右の拳を握る力強いガッツポーズ。
「バーディを獲る頭はなかったんですけど、まあ強く打ったら入るかな、みたいな感じに思ってたら入ってくれたんで、はい、良かったです」
土壇場の極限状態で飛び出した強気のパット。難所が続く上がり3ホール(16番・17番・18番)を1ボギーも叩かず耐え抜き、最難関の18番で伸ばしてインコースをノーボギーの「32」でまとめたスコアメイクは、まさにエースの凄みそのものだった。「最後の3ホールはね、すごく大きかったんじゃないかなと思います」と本人も確かな手応えを口にした。
「試合に出ている以上、関係ない」— 2日目以降への覚悟
決して本調子ではない。しかし、プロとしてリーダーボードの上位に名を連ねることに、松山は一切の妥協を許さない。
「試合に出てる以上は関係ないんで。スコアをね、競うゲームなんで。明日もね、いい状態で挑めるようにしたいなと思ってます」
会見で放たれたこの言葉には、自身の状態に対して逃げ道を作らない、圧倒的なプロフェッショナリズムが宿っていた。
初日を終えて単独首位に立つのは、8アンダー「63」を叩き出したジェイコブ・ブリッジマン。首位と4打差の12位タイという絶好の位置から、松山はさらなる高みを見据えている。早朝から会場に駆けつける母国のファンの声援をパワーに変え、満身創痍のエースが週末に向けてどのような巻き返しを見せるのか。劇的な幕開けとなった日本の1週間に、ますます期待が高まる。(文/山口哲平)
写真/岡沢裕行
