1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在は日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄が、ラウンド中に話題になる「ゴルフの奥深い知識」を綴るコラム。第88回目は、打数の合計ではなく各ホールのスコアに応じた配点で順位を決める競技形式「ステーブルフォード方式」のルール、歴史的背景、そしてプレー上のメリットについて。

最少打数ではなく「獲得ポイント」で競う――ステーブルフォード方式の基本

画像: JGTOでも取り入れられたことのある「ステーブルフォード方式」

JGTOでも取り入れられたことのある「ステーブルフォード方式」

多くのゴルファーは、ホールアウトに要した打数をそのままスコアカードに記入しているはずだ。スコアカードを見れば、どのホールでいくつ叩いたか、あるいは苦手だったホールで1打少ないバーディを奪えたかなど、プレーの状況は一目瞭然。スコアカードの打数から得意・不得意が明確になり、技量の成長や課題を客観的に確認することができる。

しかしゴルフには、打数の合計で順位をつけるのではなく、各ホールのポイントの合計で順位を決める競技方式が存在する。それが「ステーブルフォード方式」だ。

この方式は、ストロークプレーのように18ホールの総打数を競うのではなく、各ホールの打数に応じたポイント(点数)を記録していく。ストロークプレーが「最少打数」を争うのに対し、ステーブルフォード方式は「最多ポイント」で勝負を決めるのが最大の特徴である。

ステーブルフォード方式は、英国のフランク・B・G・ステーブルフォード博士(1870〜1959年)が考案したものだ。1898年にウェールズのグラモーガンシャーGCで初めて試行され、1932年にはイングランドのウォラシーGCで公式競技として採用された。

この方式の大きな利点は、ポイントを獲得できないと判断した時点でホールアウトする必要がなく、ボールを拾い上げて次のホールへ進める点にある。1ホールの極端な大叩きによってゴルファーが競技意欲を失ってしまうのを防ぐと同時に、スロープレーの解消にも寄与する。「ポイント制なら次のホールでまだ挽回できる」という前向きな心理でプレーを続けられるのが、このゲームの妙味だ。

画像: 2022年「For The Players By The Players」では、1998年「アコムインターナショナル」以来24年ぶりのステーブルフォード方式による試合となり、小林伸太郎が優勝した

2022年「For The Players By The Players」では、1998年「アコムインターナショナル」以来24年ぶりのステーブルフォード方式による試合となり、小林伸太郎が優勝した

ステーブルフォード方式の配点と戦略的メリット

基本ルールとして、各ホールの打数に応じて以下のポイントが加算され、18ホール終了時の総合獲得ポイントが最も多いプレーヤーが勝者となる。

● −3(アルバトロス):5点
● −2(イーグル):4点
● −1(バーディ):3点
● 0(パー):2点
● +1(ボギー):1点
● +2以上(ダブルボギー以上):0点

ダブルボギー以上は一律で「0点」となるため、連続OBや池ポチャでいくら大叩きをしても、そのホールの傷口は0点で食い止めることができる。ストロークプレーのように、たった1ホールのミスが全体の総打数を完全に破綻させてしまう恐れがないのだ。

さらに、プロツアーなどで採用される「モディファイド・ステーブルフォード方式(修正ステーブルフォード方式)」では、アグレッシブなプレーをより評価するため、アルバトロス+8点、イーグル+5点、バーディ+2点、パー0点、ボギー−1点、ダブルボギー以上−3点といったように、ボギー以下の減点とバーディ以上の高得点を組み合わせた傾斜配点が用いられる。仲間内のプライベートコンペであれば、参加者のレベルに合わせて獲得点数を自由に設定するのも面白い。

いつものストロークプレーも良いが、時にはこのステーブルフォード方式を取り入れてみると、普段とはまったく異なる攻めと守りの駆け引きが生まれ、新鮮なゴルフの楽しさを再発見できるはずだ。

写真/岡沢裕行

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中。

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