元から飛ばし屋の渡邉彩香が10ヤード飛距離を伸ばした

テスト現場には重心位置が微妙に異なる3タイプのヘッドがもちこまれていた
女子プロが使うブリヂストン製の謎のプロトタイプドライバー「P01-7」。開幕戦から渡邊彩香らが使い飛距離を伸ばしていると話題になっているモデルだ。渡邊はオフからテストを繰り返してきて、開幕戦から実戦投入したという。
「私はスピン量が多く3000回転くらいあったんですが、このドライバーにしてから500回転くらいスピン量が減りました。クラブ換えただけで、ここまでスピン量が下がったことは、私にとってすごく大きい。多少芯を外しても真っすぐ飛ぶし、ミート率が上がって飛距離も伸びています」(渡邊)

「コントロールしても飛んでいます。ちょっと薄く当たった時でも飛んでくれるし。打感も好きな感じです」
実は、バンテリンレディスで2年ぶりの優勝を飾った西山ゆかりの手にも「P01-7」が握られていたのだ。「ヘッドが大きく見えて、構えたときの安心感があります。ボールのつかまりもよく、球が強いので飛距離もアップしています」(西山)

「P01-7」を使い優勝。プロトタイプながらすでにツアーで勝ち星をあげている
中京テレビ・ブリヂストンレディスオープンで、帰国した宮里藍を含めた女子プロがこの「P01-7」テストするというので、その現場に潜入してみた。
テストした渡邊彩香のデータを見てみよう。ボール初速が0.2、打ち出し角が0.9アップ。スピン量が470回転減少、キャリーが5.2ヤード、トータル飛距離が10.1ヤード伸びていた。
テストした宮里藍は「安定感があって球も高いし、キャリーが出てストレートな球が打ちやすいですね。自分のいまのドライバーよりもいい打ち出し角で飛んでいますし、球がねじれない。それでストレートで飛んでるって感じがします」とのことだった。

打ち出し角が17度でバックスピン量1700回転という驚異的なデータを叩き出す宮里藍。今後さらにセッティングを煮詰めてからこのドライバーにシフトする予定
飛ばすための構造と性能を搭載している
女子プロはヘッドスピードの割りに驚異的な飛距離を叩き出す。その秘密は何かというと、弾道データを見るとすぐにわかる。初速に対する打ち出し角とスピンの量が計算上の理想値に近いマックスの値になっているからだ。
とくに宮里藍はまるで試打マシンのように打ち、わずか数球で微妙なスペックの違いをデータとして出すことができるという。

「P01-7」を初めてテストした宮里藍。試打能力の高さから、少ない球数で細かなスペックの違いを弾道として打ち出した。シャフトの組み合わせやバランスなど、細かいチューニングが施されることになりそうだ
そんな女子プロたちの弾道データをさらに理想値に近づかせる夢のドライバー「P01-7」はどんな構造、性能をもつのか、開発担当、プロ担当とのやり取りをもとに予想分析をしてみた。
「思っている以上に打ち出し角がいい感じがします」と宮里藍をはじめ、テストしたプロの誰もが口にする打ち出しの高さ。これはどうやら新しいヘッド構造によるものらしい。すでに「JGR」に施されているクラウン上部の溝「パワースリット」。
これに加えてクラウンの構造にも新たな工夫が施されているのは明らかだ。詳細を確認することはできなかったが新構造によりクラウンのフェース側がたわみ、バック側が凹む。クラウンの変形量を最大化することで、初速を上げ、打ち出し角を高くしている。
話を聞いているとクラウンの構造にも秘密があるらしい。クラウン部分がよりたわみやすくなって、初速と打ち出し角をアップさせているようだ
この高い打ち出し角にはもうひとつソールのデザインも影響していると思われる。とくに目につくのは、ソールのフェース寄りにあるバーのようなもの。これに加え、シルバーに輝くソール形状。おそらくクラウンとは逆にソールの剛性を高めている。ソールの剛性を高めれば、フェース面はロフトが増える方向にたわみやすくなり、先ほどのクラウンの構造との相乗効果で打ち出し角はアップするはず。

ボディ全体がたわむより、ソールの剛性を高めてクラウン部分をたわませるとインパクトでロフトが増え、打ち出しが高くなる。それを狙ってソールのフェース寄りを強くしている
「スピン量が減ってくれたおかげで球が強くなりました!」と渡邊彩香が惚れ込んだのがスピン量の変化。どうやらフェース面の細かい溝の効果がアップしているようだ。この溝、ブリヂストン独自の「パワーミーリング」は、フェースにボールを食いつかせることでフェース面上でボールが滑ることを防ぎ、ムダなスピンが発生するのを防いでいるのだが、その効果はより大きくなっていることが伺い知れる。

フェースの細かい溝が進化している感じ。ボールの食いつきがよくなり、無駄なスピンが発生するのをさらに防ぐことになる。この効果はデータを見ても明らかだ
また「つかまりがよく、飛距離が出ている」(西山)。これはヒール寄りだけに装着されているウェートの効果に違いない。さらに机に並べられたときの重心角を見ても、重心アングルは大きく、ヘッド内部の重量配分もひょっとしたら、ヒール寄りにセットされているのかもしれない。さらにシャフト近くにウェートがあるため、振りやすさもアップしていると考えられる。これは女子プロだけではなく、発売となればドローボールに憧れるアマチュアにもきっとメリットになる。

ヒール側に「8」と刻印されたウェートがある。これが選手たちの言うつかまりのよさを生んでいる。それだけではなく、内部のウェート配分もヒール寄りにありそうだ
これらのことから「P01-7」は飛びの3要素「初速」、「打ち出し角」、「スピン量」の向上に加え、球のつかまりと振りやすさをプラスした、飛ばしを徹底的に追求したドライバーといえそうだ。まだ発売時期は明らかにされていないが、女子ツアーでプロトタイプのまま勝利を重ねるのか? 男子プロも使い始めるのか? これからの動きがあったら引き続き、レポートすることになるだろう。
この記事は、発売中の週刊ゴルフダイジェスト6/13号の特集「ツアーを騒がす“プロト”ドライバーP01-7の中身に迫る」を要約したもの。本誌にはさらに詳細な女子プロたちの試打データが掲載されているので、ぜひチェックしよう。