ヘッドスピードが落ちても初速と飛距離が伸びている
春の訪れを感じさせる暖かい日、埼玉県秩父市にあるテストセンターを訪れた宮本勝昌。目的は今シーズン使用するクラブのフィッティングだ。まずはウォーミングアップを兼ねて、ボールのテストを行った。低スピンのボールに意見を求められると、
「昔は、とくにアイアンでスピンが減るのがイヤだったけど、今のクラブの進化には、スピンが多いとついていけない。クラブとボールは打ち出しが高く、スピンが低いほうが、楽に飛距離が出る。歳とともにヘッドスピードが落ちてきているけど、初速と飛距離がキープできている不思議な現象は、この低スピンと高打ち出しのおかげ。50歳を過ぎても初速73~74m/sを目指して飛距離を伸ばしたい」と語る。
今年46歳を迎える宮本が今のギアに求めるもの。それは“高打ち出し”と“低スピン”、そして“高初速”。まさに「飛びの3要素」にほかならない。
アイアンのフィッティングを終えたあと、いよいよ新ドライバーを手にする。何も言わずに構えて打つ。2球打ったあとつぶやいた。
「飛び方がいいね。スピン量2000回転の前半かな?」
さらに何球か打つと、
「直進性があって、球がねじれない。いいね、コレ。いつから(公認リストに載って)使えるの? 千葉オープンでは使えないのか......」とやや落胆気味。
「今までのブリヂストンにはない斬新なデザイン。音からして飛びそうで、実際に初速も出ている。もともとフェード系の球筋だけど、スピンが減って、ねじれが少ない球が出る」と結果に満足げな宮本。昨年使用していたツアーB XD3とデータを比較してみると、違いは明らか。
トラックマンの計測値で、ドライバーの初速は約1.5メートル/秒アップし73.7メートル/秒を計測。打ち出し角は0.2度増え14.1度、一方スピン量は約500回転減って、2376rpmを記録した。結果、キャリーで7ヤード増の277ヤード。トータル飛距離は10ヤード伸びて301ヤードとなった。ちなみに、シャフトは昨年のエースドライバーと同じ「ツアーAD MJ7(X)」だ。
取材の模様は動画にもなっているので、そちらもぜひチェックしてもらいたい。
1年半前から進んでいた極秘プロジェクト
このニューモデルのコンセプトは「初速を上げて、低スピン&高打ち出しで飛距離を伸ばす」とクラブ開発に携わったブリヂストンスポーツ・北川知憲さん。「詳細はまだお話しできませんが、これまでのドライバー同様、当社の飛ばしの考え方である、ソールを硬くしてクラウンをたわませることで、飛距離を生み出すテクノロジーを搭載しています」
ライバルとするのはキャロウェイ、テーラーメイド、タイトリストの外国ブランド。複合素材の採用やクラウンに穴を開けるなど、各社工夫を凝らしているが、国産ブランド・ブリヂストンゴルフの出した答えは......発表が待ち遠しい!
新アイアンも実践投入間近
新アイアンもテストした宮本勝昌。これまでのセミキャビティタイプだけでなく、ブレード型や大型ヘッドのアイアンにも興味津々。「組み合わせてコンボで行こうかな」と、新ドライバーはすんなりと決まったが、アイアン選びに頭を悩ませていた。
「打倒! 海外ブランド」という目標を掲げ、新しく登場するブリヂストンのドライバーとアイアン。飛距離が重要な今のゴルフに対して、ブリヂストンが出した答えとは一体どのようなものだろう? 今年もニュードライバーから目が離せなさそうだ。
(週刊ゴルフダイジェスト2018年4/3号より)
写真:三木崇徳