2018年のゴルフ界は、ダスティン・ジョンソンが放った一発のドライバーショットから始まった。そう書いても、印象としては決して大げさではないだろう。
2017年シーズンの勝者のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズの最終日12番ホール。433ヤードのパー4でDJが放った、あわやホールインワンかというショットは、それくらいのインパクトをゴルフ界にもたらした。
そのとき彼が手にしていたのが、テーラーメイドの「M4」ドライバー。ツイストフェースという新しいテクノロジーを搭載したこのクラブの飛距離性能は、このたった1打によって証明され、爆発的なヒットへとつながった。
しかし、その実、DJは今その「M4」ドライバーをバッグに入れていない(2018年6月3日時点)。彼の今の相棒は同じくテーラーメイドの「M3 460」ドライバー。「M3 460」は2つのウェートを縦横に移動することができるYトラックシステムを搭載。ウェートの移動により「M4」よりさらに低スピンに調整することができるヘッド。
このウェートを試合によって変更し、DJはコースを攻める。全米オープンの会場であるシネコックヒルズに合わせ、おそらくは最適にチューニングされたM3を持ち込んでくるに違いない。
2016年の全米オープン王者でもあるDJは、長く居続けた世界ランク1位の座を譲り、現在は世界ランク2位。しかし、スタッツを見ればイーグル数は全体の2位タイ。平均バーディ数は4位。そして平均ストロークは堂々たる1位で、世界最強の一角を占め続けているのは明らかだ。直前のフェデックス・セントジュード・クラシックで今季2勝目を挙げたDJに死角はない。
そして、そんなDJの前に立ちはだかるのが、同じテーラーメイドのドライバーを手にする選手たち。中でも最大の脅威となりそうなのが、23歳のジョン・ラームだ。ゴルフファンならもう知らぬ者はないだろう。2016年、DJが制した全米オープンでローアマチュアに輝いたスペインの若武者は、その翌週にプロ転向を果たすとすぐに頭角を現し、現在までにPGAツアーで3勝を挙げ、世界ランクは4位につけている。
平均バーディ数はツアー1位。DJに匹敵する攻撃力を持つ、世界でも数少ない選手の一人だ。このラームが使うのは、まさにDJが伝説の1打を放ったのと同じ「M4」ドライバーなのだ。
実はDJとラーム、フェアウェイウッドは「Mシリーズ」、アイアンは「Pシリーズ」、ウェッジは「ミルドグラインド」、パターは「スパイダーツアーシリーズ」、ボールは「TP5x」と共通点も多々ある。
しかしなんといっても、7445ヤード、パー70のロングコースを制する上では、二人が手にするドライバーが鍵を握るのは間違いがない。世界最高峰の舞台でのDJとラームの戦いは、「M3 460」と「M4」、ふたつのドライバーのどちらが2018年の「顔」となるかを決める、代理戦争の様相をも呈しているのだ。
勝つのはDJか、ラームか。M3か、M4か。決戦の時は近い。
撮影/姉崎正