地元ニューヨークのプロが認める難関コース
今週、全米オープンが開催されるニューヨーク州ロングアイランドのシネコックヒルズGCは過去4回の全米オープンが開催されている名門コースです。今まで開催された全米オープンの優勝スコアは1986年が1アンダー、1995年がイーブンパー、2004年が4アンダーといずれもロースコアとなっています。
今回は更にコース全長が7445ヤード(パー70)と450ヤードほど距離が伸び、更にタフな戦いとなりそうです。
「私はシネコックヒルズGCで何回もプレーをした経験がありますが、このコースは世界のトップ5に入る難易度でしょう。とくに全米オープン用に長く設定されたラフと高速グリーンが組み合わさると良いスコアを出すことは困難だと思います。優勝予想スコアは4日間で5アンダーくらいになると思います」
ニューヨーク在住のプロゴルファー、マイケル・ジェイコブスは、ティショットでフェアウェイを外したときのリスクを強調していました。今大会ではフェアウェイの幅が前回より15ヤード程広くなったとはいえ、両サイドにはボールがスッポリ隠れるほど深いラフが待ち構えているので、一発のミスが命取りとなるかもしれません。
タイガーの元パッティングコーチが説くコース攻略のカギ。
タイガー・ウッズが最後にメジャーを制したのが2008年の全米オープン。その時にパッティングコーチとしてタイガーを支えていたのが、マリウス・フィルマルターです。
「全米オープンはタフな戦いになることが多いですが、特にこのコースはゴルファーの忍耐力が試されます。スコアを崩さないために、チッピングとパーパットはカギとなるでしょう。難しいライから、12フィート以上の速さの難易度の高いグリーンにチッピングすることは簡単なことではありません。そしてプレーヤーは優れたグリーンリーディングスキルを必要とするパットに神経をすり減らしていくでしょう」
シネコックヒルズGCはコース改造によってグリーン面積が拡大したため、アンジュレーションが強くなることが予想されます。マリウスは大きなグリーンではより一層、ショートゲームやパッティングでスコアを落とさない「ディフェンシブ」なスキルと忍耐力が重要になると語りました。
「私の優勝予想選手はジェイソン・デイです。彼はレーザービームのように高い精度でボールを遠くまでボール打つことができるだけではなく、ショートゲームも素晴らしい。また、極端なプレッシャーの中でも、一貫したリズムを維持できるプレーヤーです。全米オープンを制する条件は整っていると言っていいでしょう」
昨年は調子を落としていたものの、今シーズンはファーマーズ・インシュランス・オープンとウェルズファーゴ選手権で勝利したジェイソン・デイ。ストロークスゲインド・パッティング(パッティングのスコア貢献度を示す指標)は1位、ストロークスゲインド・アラウンド・ザ・グリーン(同、アプローチ)は3位とパッティングとショートゲームの好調さが際立っています。
「ジェイソン・デイはPGAツアーでは最高のパッティングスキルを持っていると言っていいでしょう。タイガー・ウッズに非常に類似していますね。彼は肩の回転によってエネルギーを生み出す、シンプルで再現性の高いパッティング・ストロークを行う事ができるので今回の高速グリーンでも力を発揮するでしょう」
デイのパッティング・ストロークはほとんど腕を使わず、振り幅は非常に小さいのが特徴です。胸郭を中心とした振り子型のストロークは特にプレッシャーのかかったショートパットの精度を高めているのでしょう。
「世界ランクトップ10に入っている選手にはみんなチャンスがあると思います。タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンが私たちを驚かせることにも期待したいですね。シネコックヒルズGCではバーディチャンスが多くあるとは思えませんが、気象条件によっては8アンダーまで伸びるかもしれません」
今年の全米オープンはトッププロが苦しめられる、「全米オープンらしい」試合になるかもしれません。ショット、ショートゲーム、パッティングのすべてで最高のパフォーマンスを求められる難関コース、シネコックヒルズGCでどのような戦いが見られるのか注目です。