2018年のPGA(米男子)ツアーのドライバー飛距離の「ツアー平均」は296.0ヤード。これは、1998年のタイガー・ウッズの平均飛距離とほぼ同じだ。圧倒的だった当時のタイガーの飛距離は、現代では平均点に過ぎない。この強烈な飛距離アップはなぜ起きたのか? そして我々アマチュアがその恩恵をいまいち実感できていないのはなぜか? 飛ばし屋プロゴルファーに聞いてみた。

「一言でいえば、プロたちは飛ばすスウィングをしていて、アマチュアは当てるスウィングをしている。その結果、プロとアマで圧倒的な飛距離差が生まれているんです」

そう語るのは飛距離アップ請負人の異名を持つプロゴルファー・吉田一尊。

「多くのアマチュアゴルファーは、ゴルフを始めた頃、頭を動かすな、軸をブラすな、ひざの高さを変えるな、わきを開けるな……と『してはいけない理論』を教わります。これは、ボールに“当てる”ためには有効で、いまでもたとえばアプローチのレッスンとしては悪くありません。しかし、これでは飛ばせないんです」(吉田)

かつて、ドライバーのヘッド体積が200ccを切るような時代には、ボールに「当てる」ことが最重要で、飛ばない=ミスヒットだった。しかし、現代のクラブはフェースが広く、重心は最適に設計され、多少芯を外しても曲がりが少なく、飛距離も落ちにくくなっている。ましてやプロが使えばOBまで曲がるようなことはまずない。

だから、PGAツアーのプロたちは、自らの肉体を鍛え上げ、アスリート化した身体能力をフルに発揮してボールを打っている。

画像: 現在ドライビングディスタンス1位のロリー・マキロイの平均飛距離は320.0ヤード。20年前、1位のジョン・デイリーは299.4ヤードだった(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

現在ドライビングディスタンス1位のロリー・マキロイの平均飛距離は320.0ヤード。20年前、1位のジョン・デイリーは299.4ヤードだった(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

「体を止めて手を振るのが昔のスウィングならば、腕を使わず体をフルに動かすのが今のスウィングです。当てるスウィングでゴルフを覚えた人は、いざ飛ばそうとすると、思い切り手を振るしかない。そうすると、今のクラブでもさすがに曲がる。だから、振れない=飛ばないということになるんです。つまり、今のクラブの恩恵をほぼまったく受けていないことになる」(吉田)

クラブは曲がらなくなり、打ち出し角が高くなった。そしてボールは低スピン化した。あとは思い切り体を動かしてボール初速を高めれば、まるでロケットランチャーで打ち出したようにボールは飛んでいく。しかし、手で当てにいく動きをしている限り、飛距離は20年前とあまり変わらないのだという。

「昔は、“上手くないと飛ばない”クラブだったのが、今は“身体能力が高くないと飛ばない”クラブに変わってきたともいえます。だからこそ、ブルックス・ケプカのように身体能力に優れた選手が飛ばせるし、強い。ゴルフがさらにスポーツ化して、この流れは今後も続くと思います」(吉田)

吉田によれば、今の時代にもっとも大切なのはフェース面のコントロール。それも、かつてのようにスウィング中にフェースを開閉し、インパクトでスクェアに合わせる職人技ではなく、スウィング中にフェースを一度も開かずキープすることだという。

「スウィング中にフェースを開かずとにかく固定。そう決めたらあとは思いっきり振ってください。トップがすごく窮屈に感じられると思いますが、それは窮屈ではなく体が締まった証拠。多少軌道がズレてボールが曲がっても、フェースを開かずキープして入れば、ラフで止まる程度です。飛距離が伸びるメリットのほうがはるかに大きいですよ」(吉田)

ボールとクラブの進化の恩恵は、アマチュアこそが受けるべきもの。フェース面を開かずに振ることが、そのための第一歩のようだ。

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