松山英樹の3度目の優勝の期待が高まる「ウェストマネジメント・フェニックスオープン」。その会場で取材中のゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎には、「いま一番気になる選手」がいるという。その名はキャメロン・チャンプ。吉田が、PGAツアーに現れた超新星の姿を追った。

超低弾道でキャリー300ヤード超だけど「飛ばそうと思ってないんじゃないかな」

キャメロン・チャンプが話題です。昨年のWEB.comツアーで平均343.1ヤードを飛ばした異次元の飛ばし屋として知られ、PGAツアールーキーとして迎えた今シーズン、早くも勝利を挙げてトップ選手の仲間入りを果たしています。

ゴルフ関係者が二人集まればすぐこの選手の話題になる、といった状態。動画などをみてもいいスウィングをしているし、ぜひチェックしたいと思っていました。

さて、実際にフェニックスオープンの会場でチャンプを目にして驚きました。ダスティン・ジョンソンやバッバ・ワトソンのような“巨人”かと思いきや、スラッとしたPGAツアー選手としてはごく普通の体格なんです。プロフィールを見ると180センチ、79キロ。182センチ、79キロの自分とほぼ同じです(飛距離は大違いですが)。

画像: 180センチ、79キロのスリムな体型ながら、昨年は平均343.1ヤードという異次元の飛距離を記録。今年も現時点でPGAツアーの飛距離ランク1位

180センチ、79キロのスリムな体型ながら、昨年は平均343.1ヤードという異次元の飛距離を記録。今年も現時点でPGAツアーの飛距離ランク1位

練習場でチェックすると、球の低さに2度ビックリです。地を這うような弾道で、明らかにもう少し弾道を高くしたほうが飛距離を伸ばせるはず。そう思って、契約先であるPINGのツアー担当の方に話を聞いてみました。

すると、「弾道が低いままでもキャリーで300ヤード飛ぶからね。彼は飛ばそうと思ってないんじゃないかな。真っすぐ行かせることは考えていると思うけど」との答え。つまり、安全重視のライン出しショット感覚で300ヤードキャリーさせているのです。はっきり言って、破格です。

ちなみに、向こう側からもボールが打てる対面式の練習場なのですが、よく見るとチャンプのボールはただ一人向こう側まで届いてしまうので、届かないように気を使ってボールを打っていました。それも、とくにフォローだったとかそういうわけでもありません。もちろん、そんな選手はチャンプだけ。これに3度目のビックリ。

タイガーの元コーチに15歳から習っている

その後の練習ラウンドでは、453ヤードのパー4で、セカンドは残り100ヤードを切り、サンドウェッジで打っていました。同じホールを松山英樹選手がプレーし、セカンドは残り155ヤードで使用クラブはピッチングウェッジ。松山選手は現在PGAツアーの飛距離ランク10位台で、ツアー平均よりも飛びます。その松山選手を50ヤード置いていくって……。もう驚きを通り越しています。なにかの間違いかもしれないと思い、思わず歩測してしまいました。

画像: パー5のサードショット的な風景だが、453ヤードのパー4のセカンドショット。実に350ヤードを超える飛距離を叩き出している

パー5のサードショット的な風景だが、453ヤードのパー4のセカンドショット。実に350ヤードを超える飛距離を叩き出している

なんでそんなに飛ぶのか、本人に聞いてみると、「ヒップターンを意識している」という答えが返って来ました。ヒップターンによってダウンスウィングをスタートさせ、そこでリズムを作っていくのだそうです。

ツアー屈指の美しいフィニッシュ。だが、まだ課題も

23歳のチャンプは、タイガー・ウッズの元コーチとしても有名なショーン・フォーリーに、かれこれ8年くらい習っているそうです。フォーリーは、スウィングの軸を体のセンターではなく左肩に持ってきて、腕とクラブの関係性をできるだけ変えないように振るのを推奨するコーチで、ヘッドを走らせて飛ばすという教えではありません。

実際、チャンプのスウィングも、左腕とクラブを一体化させ、体の動きでしっかり飛ばしていくというスウィングです。チャンプの場合、腕っぷしとか体力的な面というよりも、アスリート能力で飛ばしているという印象を受けます。タイガー・ウッズ、ロリー・マキロイと同じ、非常に限られた人しか持てない能力です。

ダウンスウィングで左に移動することで生じる横方向の力、肩を縦回転させる縦の地面反力、竹とんぼのように垂直軸を回転させるトルクといった3方向の力を使い切り、その上でフィニッシュではピタリと止まります。超アスリートにしかできない体の使い方、バランス能力を兼ね備えています。「モノが違う」というのが正直な感想です。

画像: 350ヤード飛ばした直後とは思えない静かなフィニッシュ。「フィニッシュの美しさは、マキロイと並んでツアー1、2では」(吉田)

350ヤード飛ばした直後とは思えない静かなフィニッシュ。「フィニッシュの美しさは、マキロイと並んでツアー1、2では」(吉田)

ではチャンプは今シーズン無敵の活躍をするかといえば、そうとも言い切れません。アプローチ、パターは良くもなく、悪くもなくといったところ。経験で補える部分ですが、いってしまえば普通です。球筋もたまに右にフケるような球が散見され、もう少し安定性がほしいところです。

ただ、近い将来メジャーを獲るポテンシャルを余裕で持っているのは間違いありません。みなさんもぜひ、キャメロン・チャンプにご注目を。

This article is a sponsored article by
''.