WGCメキシコ選手権を2位のロリー・マキロイに5打差をつけて圧勝したダスティン・ジョンソン。本人はまだ記憶に新しい“まさかの怪我”以前の絶好調状態を取り戻りつつあるという。海外取材経験豊富な元ゴルフ雑誌編集長が、“DJ”の強さを語る。

2年前のマスターズ直前の怪我……その前の絶好調な状態に近づいている

2018〜2019年PGAツアーシーズンも、はや3分の1を過ぎたが、先日のWGCメキシコ選手権では元世界ランク1位のダスティン・ジョンソンがローリー・マキロイに5打差をつけて優勝。WGCの試合で6勝目を挙げたが、この記録はタイガー・ウッズの記録18勝に次ぎ、2位。WGC全4試合で優勝経験があるのは、ダスティン・ジョンソンだけである(タイガーはWGC・HSBCチャンピオンズには出場した経験がない)。

そして今大会で優勝したことにより世界ランクも2位に浮上。今年は欧州ツアーなどに参戦していたため米国でのツアー参戦は5試合目だったが、今回の優勝を含めトップ10入りは3回と好調で、フェデックスランクでは57位から一気に8位までジャンプアップした。

今年の1月下旬に欧州ツアーの新設トーナメント「サウジインターナショナル」で優勝、その後は少し調子を落としていたというダスティンだが、メキシコではかなりスウィングとパッティングに自信を持ちながらプレーできたようである。

画像: ツアー通算20勝目を挙げたダスティン・ジョンソン(写真はGetty Images)

ツアー通算20勝目を挙げたダスティン・ジョンソン(写真はGetty Images)

「月曜日にブッチと今どんな感じなのか、(調子のよかった)2年前と何が違うのかなどをいろいろと話したんだ。それでいろいろと調整したらそれが今週は本当にうまくいったよ」

「今週はとてもよくボールがコントロールできており、本当にいいショットとパットがたくさんあった。今週優勝することでスウィングとパットにかなり自信を持てたのが大きい。全てがうまくいき、スウィングとパットが4日間に渡り、ようやくうまくかみ合ったんだ。自分は今、正しい方向に向かっており、スウィングもいい感じだと手応えをつかんでいる。2年前にケガをしたが(マスターズ開幕前日に階段から転げ落ち、負傷。当日ギリギリまで悩んだ挙句、マスターズを棄権)その前の絶好調な状態に自分でも最も近づいていると思う。球を当時と同じような感覚で操り、あの頃のようなショットが打てるようになってきたんだ。それが大きなカギであり、そのおかげでもっと自信を持てるようになったと言える。とにかく相当自信がついたことは確かだ」

彼とともにプレーしたローリー・マキロイも「(彼とは)戦いにならないよ。彼はドライバーで380ヤードをフェアウェイど真ん中に打ち、ほとんどのパットを入れてくるんだから」と最終日のプレー後に語ったが、実際ダスティンのストロークゲインドパッティングのスタッツは、トリッキーで非常に難しいポアナ芝であるにも関わらず、1位だった。

しかも、開催地のクラブ・デ・ゴルフ・チャプルペテク(メキシコ)は標高2300メートルを超える高所にあるため、気圧が低く飛距離は通常に比べて出やすいのだが、そのぶんヤーデージブックを見ながら「距離の計算」が必要になる。そんな状況でも「高低差や距離を計算しなければいけないから、難しいんだけど、そのぶん1打1打のショットに集中する必要があった。風も吹くしね。とにかくいろんな計算がたくさん必要なコースだが、そのことによってかえって1打に対する集中力が増した」(ダスティン)と、メンタル面でも冷静に落ち着いて対処できていたようだ。

永久シードの権利も獲得。12年連続勝利は現役最長記録

今回の優勝によって、大きなお土産もついてきた。メキシコでツアー20勝目を飾り、38人目の“永久シード権を獲得する権利”を手に入れたのだ。

なお、永久シード選手入りするには、あと3年ツアーメンバーとしてシーズンを戦う必要があるため、すぐに永久シード選手になれるわけではない。「もう少し早く達成したかった」と語っているが、過去の永久シード選手で35歳よりも前に達成しているのはたった9人。

タイガー・ウッズ(24歳)、ジャック・ニクラス(26歳)、トム・ワトソン(30歳)、アーノルド・パーマー(31歳)、フィル・ミケルソン(31歳)、ビリー・キャスパー(31歳)、ジョニー・ミラー(33歳)、ジーン・リトラー(34歳)というビッグネーム揃いなのだから、レジェンドたちの仲間入りを果たしたわけだ。

それでも、「非常に光栄だし誇りに思うが、これからもまだまだ道のりは長いし、できるだけたくさん優勝したいね。ゴルフ殿堂入りのことは考えたこともないが、優勝を重ねていけばそういうこともそのうち考えるようになると思うよ」と、あくまでもツアー20勝は彼のゴルフ人生の通過点であることを強調。08年にプロ転向以来、12年連続で優勝を重ねてきたが、この記録は現在続行している記録としては最長だ。

「この記録はとても誇りに思うし、大きなことを達成していると思う。今のこのツアーで毎年1勝を挙げることは非常にタフなことだが、これも一生懸命練習して、そうなりたいと日々願っていることだ。このままできるだけ長く優勝し続けられるようにしたいね」

以前は100ヤード以内のショートゲームに弱点があるとして、練習を繰り返し、克服した努力家ダスティン。普段ツアーの練習場ではストイックに黙々とボールを打ち続け、ツアーレップたちと道具に対するリクエストなどについて打ち合わせし、トラックマンで計測しながらあれこれ試打している姿をよく目撃するが、一歩コースを離れれば、彼も世界ランク1〜2を争う美形アスリート。すでに婚約しているとはいえ、すらっと長身の美形独身男に群がる女性も多いのだろう。

彼は一見とっつきづらそうなところもあるが、ああ見えてけっこうやさしい性格。私の取材にも、顔色を変えずに淡々と答えてくれ、笑顔を見せることもある。そんな彼だから、女性にはモテるはずで、浮名を流している噂もちらほら耳にする。

2013年にモデルで歌手のポーリナ・グレツキー(カナダの元アイスホッケー選手、ウェイン・グレツキーの娘)と婚約し、入籍しないままテイタム、リバーという2児の父となっているが、それでも昨年秋にはヤッシー・サファイという当時39歳の社交界の名士の娘と交際の噂が立ったことがあった。怒ったポーリナは自身のインスタからダスティンの全て写真を削除するなど、破局騒動も沸き起こったが、彼の周辺にはこうした女性とのスキャンダルの噂が以前は何度もあったことは確かだ。

昨年の破局騒動により、昨年中には……、と期待された入籍は延期されたようだが、その後二人の仲睦まじい写真もSNSで投稿されており、関係は良好。まずは入籍を済ませ身辺を整理することにより、メンタル面の安定と、家族に対する責任感が生まれ、世界ランク1位、フェデックスカップ1位、メジャー優勝などなどに対するモチベーションも上がるに違いないと思うのだが……。

※2019年2月26日18時12分、内容を修正しました

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