強風の中、自分のテンポを守り抜いた
賞金女王のライバルとなるであろう比嘉真美子選手が優勝と最高のスタートを切るなか、開幕戦ではまさかの予選落ちとなった鈴木愛選手。2戦目でいきなり優勝をもぎ取るあたり、さすが国内ツアーの世界ランク最上位選手です。
その沖縄での開幕戦の2日目、パーオン率77%と高かったこともあるとは思いますが、パット数は「34」というかなり悪い数字でした。パーオン率は高いほどパット数が多くなる傾向があるとはいえ、パットの名手がグリーン上で苦しんだことが数字に表れています。
相性のいいヨコハマタイヤPRGRレディスの開催コース・土佐CCではパットが入ったといえばそこまでですが、昨年まで2度プレーオフで敗れている地でもあるこのコースで、しっかりとリベンジを果たし、賞金女王への一歩目を歩きだしたのは、切り替えの巧さも含め、彼女の高い実力を証明しています。
スウィングは昨年からとくに変わった様子は見受けられません。頭を右に移動しながらバックスウィングをしますが、インパクトでは決して突っ込むことなくビハインド・ザ・ボールの状態を保ち、しっかりとハンドファーストでボールをとらえています。
頭が左右へ大きく動くスウィングは特徴的ですが、これは長年作り上げてきたスウィングで彼女にとっては自然な動きになっています。
155センチの体で飛ばすためのポイントは、テークバックで胸を右ひざの上に乗せるようにしっかりと右足に加重している点、そして切り返しにも注目です。
ターゲットに背中が向くくらいまで深くバックスウィングをとると、背中の向きはそのままに、わずかにターゲット方向にお尻が踏み込んでいきます。ここで上半身と下半身の捻転差がしっかりと作られ、この後の強い回転力に結び付いています。上半身から切り返すクセのある人は参考にしてみるといいと思います。
試合を見て感じた強さのポイントは、強風のなかでも崩れないスウィングのテンポです。トップがしっかりと深く入るまで打ち急がず、自分のタイミングで切り返してしっかりと振り切っていました。
強風や優勝争いのプレッシャーの中では、自分本来のテンポをキープするのは難しいことです。そんななか、淡々とバックスウィングを深く入れ→下半身リードで切り返し→クラブを加速させて振り切ることを繰り返し、結果的に曲がらずにフェアウェイから2打目を打てていました。
これは、開幕戦を制した比嘉真美子選手のドライバーショットでも共通していました。スウィングのカタチも大切ですが、それ以上に自分のテンポで迷いなく振り切ることが大切であることを改めて教えてもらった気がします。
年間5勝と賞金女王を目標に掲げた2019年シーズン。まずは1勝目を挙げ順調なスタートを切りました。まだ25歳ですが、その勝ち方からはベテランの貫禄が漂います。2019年シーズンも、大いに期待できそうです。
撮影/姉崎正