マインドセットが行動や結果に影響する
たとえば、Aさんのベストスコアが101だとします。そして、Aさんの目標は「100を切ること」です。(※折角ですので、あなたの目標スコアを設定して読み進めてみてください)しかし、この100切りの壁がなかなか厚い。これまでも100切りをモチベーションに練習してきて、ラウンドでも何度もチャレンジしているけどこの壁が厚く、練習へのモチベーションも下がってきている……。
そんな場合、メンタル視点ではなにが100切りに影響しているのでしょうか? 私がもっとも大きく影響していると考える要素が、今回のテーマである「マインドセット」です。
マインドセットとは心の持ち方のことで、簡単に言えば「信念や思い込み」のことを指します。100切りをまだ達成したことがないAさんには「自分にはまだ100を切れる実力はない」というマインドセットが存在しています。この“マインドセットは行動に影響する”ことが特徴です。
仮に残り3ホールで3回ダボでも「99」の状況だとしても、「自分にはまだ100を切れる実力はない」と思い込んでいることで「また、ここでOBを打ったらどうしよう」「ショットが曲がったらどうしよう」「パットが入らなかったらどうしよう」などとセルフトークしていまいます。
結果、変にスコアを意識してしまう。かけなくていいプレッシャーがかかることが消極的なプレー(行動)につながり、結局100台でホールアウト、というような結果になりがちです。
ここで考えてほしいのが「もし、Aさんが一度100を切ることができたらその日以降のラウンドで何が起きるか?」です。
そうです、Aさんは一度100を切ると、その後も100を切り90台を出す回数が増えてくることが予想されます。これは結果を一度出すことでマインドセットが「自分にも100を切る実力がある!」と変化したことが大きく関係しています。
冷静に考えると不思議ですよね、マインドセットが変わっただけで技術は変わっていないからです。信念や思い込みが変わるだけで結果が変わってくることは実際にあるのです。
この例に似た出来事として陸上競技100mの「10秒の壁」があります。このケースもマインドセットが結果に多大に影響していたケースだと思われます。1983年にカール・ルイスが平地で初の9秒台を記録すると、その後、多くの選手が9秒台の壁を破りました。
これはカール・ルイスが9秒台を出すことで周りの選手のマインドセットが「彼ができたなら、自分もできる」と変化したことが少なからず結果に影響したはずです。スタンフォード大学心理学教授のキャロル・ドゥエックはマインドセットについてこう言っています。「あなたがもし可能性を発揮できずにいるとしたら、その原因の多くはマインドセットにあると言ってよい」と。
では、どうすれば結果を出す前から「できるはず」というマインドセットを持つことができるのでしょうか? その方法としておすすめするのが「できたとしたら思考」をすることです。
たとえば100切りをしたい方がこの「できたとしたら思考」をするのであれば、次のように自分へ問いかけてください。
状況は、残り3ホールですべてダボでも「99」というケースです。ここで「100を切ったことがある自分ならどうする?」と問いかけましょう。
どう思えばいい?→「前にもできたらから今回も切れるはずだと思う」
どんなスウィングをする?→「前と同じようにルーティンを丁寧に実行しいつものスウィングをする」
緊張するけどどうすればいい?→「前にできたから大丈夫さ」
マネジメントはどうしよう?→「前は基本に忠実にと思ってしっかり刻んでいったよ」
このように「できたとしたら思考」をすることで、あなたのマインドセットは「できるはず」に変わります。「できるはず」に変われば、自然とプレーも消極的にはならずにチャレンジできたり、自分らしいプレーにもつながります。
今の壁を越えるために、そして、良いマインドセットに自分を導くために、「できたとしたら思考」を使い、結果の壁を越えることに活かしてもらえたら幸いです。