トークは「ボケ」なのにスウィングは「ツッコミ」だった
今季の幡野夏生選手は10試合に出場し、予選通過は4試合で獲得賞金額は約170万円。来週の「アースモンダミンカップ」終了時点での賞金額で、それ以降も出場できるかどうかが決まるため、今週の「ニチレイレディス」と来週の2試合で、少なくとも150万円は上乗せしたいところです。
今週は出場資格がなかったために、火曜日に行われた予選会「チューズデートーナメント」に出場。見事に通過し、勝負強さを見せてくれました。予選通過を決めたばかりの彼女に、その要因を聞くと、こんな答えが返ってきました。
「私、見た目が“華奢”な割に、意外とドライバーが飛ぶんです。でも、ドライバーが飛ぶのはいいんですけど、アイアンも飛びすぎてグリーンの奥ばかり行ってしまうんです。昨日、ギアーズ(3Dモーションキャプチャー)で計測したら、普段(のトーク)は“ボケ”まくりなのにスウィングはめちゃ“ツッコミ”まくってることがわかりました。それを修正したら通過できました(笑)」
Youtubeをご覧いただいたことのある方なら、彼女がどんなキャラクターかご存知だと思いますが、幡野選手の周りは笑いが絶えません。本人のプラス思考もありますが、いいときも、悪いときでも見ているギャラリーが楽しめるようにと心掛けているからなのです。それはプロとして素晴らしいことです。
もちろん、レギュラーツアーに出られているのだから実力もしっかりあります。そのスウィングを見てみると、246.43ヤード(11位)の飛距離を誇るドライバーショットに飛ばしのエッセンスが詰まっているので、じっくり見ていきましょう。
まずは深くねじられたバックスウィングから左サイドへの踏み込みの強さ。これにより下半身リードで切り返すことができ、骨盤と肩のラインの差が生まれ、それによりヘッドスピードを上げるために必須な飛ばしのエネルギーを蓄えることができています。
そしてインパクト前後では沈み込んだ状態から下半身を伸ばすように使うことで地面反力を使い、さらにクラブを加速させる動きを取り入れています。
このとき、ポイントは頭の位置です。下半身を伸ばすように使っても頭の高さは変わっていません。これは、下半身を伸ばしても前傾角がキープされている証拠です。そのためミート率が良くなり、ボールへしっかりと力を伝えることができています。
最近流行りの「地面反力」ですが、これをスウィングに取り入れようとしている人は、インパクトで頭の高さが高くならないように注意してください。頭が高くなると手元が浮いたりリリースが早くなったりとミスの原因になってしまいますから。
現在の課題を聞くと「アプローチ、パット、ショット、あ、全部ですね……(笑)」とのこと。つねに笑いを忘れない彼女ですが、憧れの存在である成田美寿々選手に少しでも近づくために本当によく練習しています。レギュラーツアーの練習日、誰もいなくなった練習場で一人ボールを打ち続ける姿を見たこともあります。
見るものを楽しませる“お笑いキャラ”に目が行きますが、その芯にはハードに練習し、今日より明日は少しでも上手くなりたいというアスリートの血が流れています。その積み重ねが実る日は来ると思いますし、そう遠くないようにも感じました。
まずは今週、来週の幡野夏生にご注目ください。