飛距離ランクは94位。得意の小技で勝負
SNSを積極的に活用するなど、ファンサービスに定評のある青木瀬令奈選手ですが、非常に芯が強く努力家でもあります。ドライバーの飛距離は226.59ヤードで94位(8月21日現在)と、決して飛ぶとは言えませんが、フェアウェイキープ率11位、サンドセーブ率2位、リカバリー率13位、3パット率4位など、ショットの正確性と巧みなショートゲームでゲームを作っています。
世間では渋野日向子選手ら黄金世代の活躍が話題ですが、その1998年度生まれの彼女たちの先輩としてツアーの中核をなしているのが、92年度生まれの青木選手、成田美寿々選手、葭葉ルミ選手らで構成される、普段から非常に仲が良い「92年組」です。
黄金世代が同世代の活躍に刺激を受け「あの子にできるのなら私も!」と闘志を燃やすのに対し、
92年組は少し内面に変化が生じているようです。
「私たちも、二十歳の頃は(同期の活躍に)悔しさが大きかった。嬉しいというよりは自分も負けたくない、優勝したいと思っていたのですが、今は大人になってきたのか、同級生が勝つと嬉しいし、
みんなで盛り上げようと一つのチームのようになっていて、92年組で1勝でも多くという感じになっています。キャプテン(東浩子)が未勝利なので勝ってほしいなと思っています」
とは本人の弁。今季はすでに成田美寿々選手が勝利を挙げていますが、「飛距離を伸ばすよりも100ヤード以内の精度とセッティングを見直しています。それが(2位の)サンドセーブ率に表れています」と生命線の小技に磨きをかける青木選手にも期待したいところです。
ではスウィングを見てみましょう。オーソドックスなスクェアグリップのアドレスから。ヘッドがインサイドに入らないように外に上げるようにテークバックしています。トップでのフェース向きはスクェアかややオープン。最近多いシャットフェースではなく、フェースの開閉を使っていくタイプのスウィングです(画像A)。
クラブを縦に使い、高いトップが特徴。テークバックの早い段階から背中が回り大きな筋肉を使うことで手打ちにならずに一定のテンポで安定しています。
球筋に関しては「落ち際で右に流れるフェードが理想だけど、クラブが寝てドローになりがち」と話していました。やはりクラブが寝るのを嫌ってか、上半身と下半身の捻転差を無理に作らず、上半身も少し開き気味にしながら体の回転重視で振っています。顔の向きも固定しておらず、そのことからも回転力を上げようという意図が見えます(画像B)。
フェースローテーションを使いながら体の正面に振り抜いていくフォローは、スクェアグリップで握るタイプのゴルファーはお手本にしたいところ。左わきがしっかりと締まりビハインド・ザ・ボールでボールを打った後、ティが飛ばずに残っているところから、ややアッパー軌道でボールを打ち抜いたことがわかります(画像C)。
まだ26歳ではあるものの、ツアーでは中堅クラスの年齢になってきています。そのことについて青木は「最近は年上と回るほうが少なくなってきているので、若い子たちの壁になっていきたい」と中堅の役割を果たしたいと話します。
調子を上げてきていることから表情も明るい青木選手の、そして“92年組”の黄金世代に負けない後半戦での活躍に期待します。