イベント会場の「タイガー」コールに笑顔を見せた
ついに今週末開催となるPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」に出場予定のタイガー・ウッズ。実に4年ぶりとなる、生ける伝説の来日。10月20日、ナイキ原宿にて行われたトークショーではさっそくファンの前で笑顔を見せてくれた。
「日本に来ることを本当に待ち望んでいました。とても恋しかったです」(タイガー)
さて、トークショーのメインコーナーはタイガーへの質問。来場者から寄せられた質問をはじめ、数多くの問いかけにタイガーが答えてくれた。そのいくつかを抜粋してご紹介しよう。
――タイガー選手は、大きな目標に向かって長い道のりを歩むタイプ? それとも、小さな目標を積み重ねていくタイプ?
「いつも夢は大きく持っていますが、そこへ向かって進むために小さな目標を一旦立てて、それをこなして自信をつけていこうと考えています」
――日本の若者の中には「やりたいことが見つからない」と悩む方もいる。どうすれば、若い時代から夢や目標を見つけることができる?
「何よりも『自分が何を好きなのか』を探してみることだと思います。(私の場合は)両親のサポートもあって物心ついたときから大好きなゴルフをプレーでき、今となっては世界最高のプレーヤーと一緒に競技を続けることができていて、本当にラッキーだなと感じています」
――つらいときに自分を奮いたたせる言葉は?
「『とにかく一生懸命頑張りなさい。努力しなさい。時間をかけて頑張りなさい。そうすると結果はついてくる。それよりも大事なのは、時間をかけず努力をしないと結果も出ないし、自分の価値を出すこともできない』、という風にいつも父に言われていました。素晴らしい両親に恵まれまして、母はまだ健在で、今でも厳しいです。私を常に励ましてくれる両親に恵まれたことは非常にラッキーだと思います」
日本のトップアスリートたちもタイガーに質問!
さらに、日本を代表する数々のトップアスリートたちからも、ビデオレター形式で質問が寄せられた。まずは、東京五輪での活躍が期待される日本女子スケートボードのエース・西村碧莉選手からこんな質問。
――タイガー・ウッズ選手も小さい頃スケートボードをやっていたと聞きました。そんなスケボーが東京オリンピックで正式種目になったことについてどう思われましたか? もし来年東京に再度いらっしゃることになったら、応援にきてもらえますでしょうか?(スケートボード・西村碧莉)
「そうですね、小さい頃やっていました。トニー・ホークという選手がちょうど人気がある時期で、機会があればプールやハーフパイプに行っていましたね。最後の『応援に来てくれますか?』という質問ですが、まず私自身が予選に勝って、きちんとアメリカ代表として戻ってこれるように頑張りたいと思います」
良いキャプテンの条件は?(競泳・萩野公介)
続いては、競泳日本代表の男女キャプテン・萩野公介選手から、自身とタイガーの共通点に関しての質問。
――2年前(競泳日本代表)チームのキャプテンに任命され、とても名誉なことなのですがプレッシャーを感じることも多いです。タイガー選手も国際大会等でチームキャプテンを経験されたと聞きました。タイガー選手にとって、良いキャプテンの条件は何なのでしょうか? ぜひ参考にさせてください!(競泳・萩野公介)
「良いリーダーでいるためには、きちんと周りの人たちに敬意を持って接してもらえるような振る舞いをすることが大事です。今年の4月にはキャプテンを務めましたし、この2年間のライダーカップでは副キャプテンを務めさせていただきました。もちろん責任は非常に重大なんですけれども、本当に光栄だと感じました」
アスリートとして孤独と戦った経験はある?(バスケットボール・渡邊雄太)
続いては、日本人2人目のNBAプレーヤーとして活躍を続ける渡邊雄太選手。単身で夢の舞台に飛び込んだ渡邊選手だが、それゆえの悩みもあったようだ。
――僕の場合、世界に挑戦するためにアメリカに渡りました。独り身で渡ってきたので寂しいときもありました。今となっては懐かしいですが、孤独と向き合う良いチャンスでもありました。タイガー選手は過去、アスリートとして孤独と戦われたことはありますか? もしありましたら、どのような体験なのか、ご自身で気づいたことなどを教えて下さい。(バスケットボール・渡邊雄太)
「ゴルフはそもそも個人スポーツですので一人でいる時間が本当に長くて、応援してくれるチームメイトが常にいるわけではないです。しかし、やはり内なる力というのが本当に重要です。長い時間練習をすることが大変だった時期もありましたが、それはやはり夢を叶えるために必要なものと思って実践してきました。そしてその夢を叶えることが出来てきたと思っています」
自分が正しく進めているのか疑問に思ったことは?(パラ陸上・重本沙絵)
パラ陸上・重本沙絵選手からは、トレーニングについての質問。
――長年競技生活をしていると、今やっているトレーニング手法が本当に自分に合っているものなのか、正しいことをやっているのかなど、疑問に思うことがあります。私のような悩みを持つ人に、タイガー選手ならどのようなアドバイスをされますか?(パラ陸上・重本沙絵)
「スポーツをやる上ではトレーニングが何よりも重要で、自分の心や体の限界を超えられるように、押し上げられるようにトレーニングしています。若い頃には陸上やクロスカントリーのトレーニングをしたこともありました。もちろんこれまでに大変な思いをしたこともありましたが、その経験があったからこそ今につながっていると感じています。つい、一つひとつに解決や答えを見つけたがることもあるんですけれども、やはり何よりも時間をかけて努力をしないと(答えを)見つけられないこともありますので、そういった努力をすることが重要だと感じています」
スウィング改造など、新たなことに挑戦するときに不安を感じた経験は?(ゴルフ・葭葉ルミ)
女子プロゴルファーとして活躍を続ける葭葉ルミ選手からは、ゴルファーらしい踏み込んだ質問。
――例えばスウィングのように体に馴染みきったものを修正したり、まったく新しいものにしようとした経験はありますか? うまくいくかわからない挑戦の過程で、不安を感じたりはしましたか? その不安とどのように向き合っていたのか、ぜひ教えて下さい。(ゴルフ・葭葉ルミ)
「いつも競技者として、アスリートとして上達をしたい、他のプレーヤーに勝ちたいという思いがあって、これまでに何度かフォームを修正したこともあります。不安はもちろんあったんですけど、やはりそこは努力をすることによってきちんと上達をして、自分のものにすることができました。これまでにひざの手術を5回、腰も4回手術して、かなり体を痛めつけてきました。2年前だったらこうやってまた日本でプレーできるかもわからない状態でしたが、こうやってまた日本に来れて嬉しく思います。
モチベーションを維持し続けるには?(マラソン・大迫傑)
最後に、マラソンで活躍する大迫傑選手から、20年以上戦い続けるタイガーにこんな質問。
――20年以上第一線で活躍されていると思いますが、モチベーションの維持も非常に大変だと思います。どういったことを意識されていますか?(マラソン・大迫傑)
「私のモチベーションは、『とにかく相手に勝ちたい』。その気持ちがあります。そのためにきちんと時間をかけて努力をしてきました。もちろんゴルフは孤独がつきものなスポーツなんですけれども、とにかくたくさんのトーナメントに勝って相手を打ち負かす。それが本当に好きなので、これまでやってこれました」
すべての質問に真摯に答えたタイガー。生ける伝説の頭の中が、わずかではあるが垣間見えたのではないだろうか。